飛島建設が成功!コンクリート表面から内部欠陥を「見える化」
2012年4月27日

管理人のイエイリです。

コンクリート構造物の内部のひび割れや空隙(くうげき)の位置や程度を見える化する非破壊診断技術に「弾性波トモグラフィ」という方法があります。

いわば、“コンクリートのレントゲン”のようなもので、コンクリート版などの片面に多数の発振器、他方の面に多数の受信器を配置してコンクリートを通過する弾性波を分析し、欠陥の位置や規模の分布図を作る方法です。

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「弾性波トモグラフィ」の検査方法(左)と欠陥の分布図(右)(資料:飛島建設。以下同じ)

この方法は、コンクリートを発振器と受信器で「はさむ」ことが必要です。そのため、橋の床版やトンネルの覆工コンクリートなど、裏からコンクリートをはさめない構造物には使えませんでした。

そこで、飛島建設は京都大学大学院工学研究科の塩谷智基准教授、日本大学理工学部の小林義和准教授との共同研究により、「一面配置型 弾性波トモグラフィ」という新技術を開発しました。

ナ、ナ、ナ、ナント、コンクリート構造物の

 

片側表面からのアプローチ

 

だけで、コンクリート内部や背面側までを広域的に診断できるのです。

その結果、これまで弾性波トモグラフィが使えなかった床版や覆工などのコンクリートの診断にも使えるようになりました。

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「一面配置型 弾性波トモグラフィ」のイメージ図

片側表面からだけで診断できるようになったのは、「レイリー波」を使ったからです。レイリー波は楕円形に振動しながら弾性体の表面を伝わる性質を持っています。

コンクリートの表面を鋼球でたたくと、レイリー波が発生し、伝わっていきますが、楕円波形に空洞などが引っかかると急に振幅が変わります。鋼球の打撃力を大きくすると、コンクリートの深いところまで振動が伝わり、空洞などを発見できるという仕組みです。

検証実験では、コンクリート版の中に深さを変えて発泡スチロールを埋め込み、鋼球の径を3~15mmと変えながら欠陥の分布図を作成しました。3mmの鋼球では深い部分の欠陥は分かりませんでしたが、15mmの鋼球では発見できました。

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レイリー波の伝わり方。打撃力を調節することで、空洞などの深さを判断できる

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「一面配置型 弾性波トモグラフィ」の検証実験方法と結果

維持管理の現場では、この検査方法を使ってまずざっくりとコンクリート内部の欠陥分布を調べておき、

 

疑わしい部分だけコア採取

 

を行うことで、効率的な維持管理作業が行えます。

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弾性波トモグラフィでまずざっくり調べて、最も心配な部分だけ付着強度試験を行う例

このほか、飛島建設では独自に分析手法を開発し、システム化を行うことで解析処理の高速化を行いました。例えば床版下面の6m四方の解析には、以前5日間かかっていたのを0.5日間と、約10分の1に短縮したそうです。

さらにコンクリートの画像処理による検査手法と組み合わせることで、より効率的で見落としのない維持管理が行えそうですね。厳しくなる財政事情の中、急激に老朽化が進むインフラ施設を管理していくためには、ITの活用が欠かせないようです。

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