管理人のイエイリです。
大阪市大正区にある橋梁・鉄骨メーカー、片山ストラテックは、1972年から「KAPシステム」という鉄骨の3次元設計システムをコツコツと、自社で独自開発してきました。
階段や吊りピース、配管が貫通する部分のスリーブなども含めた鉄骨の3Dモデルを作って情報を一元管理し、モデルから注文書や検査表、工場製作時の作業指示書など、様々な図面や帳票を作成するというシステムの設計思想は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)そのものです。
KAPシステムで作成した鉄骨の3Dモデル。階段やスリーブ、補剛材、仕口など詳細部分も作り込まれている(資料:片山ストラテック) |
ものづくりを本業とする同社が開発しただけ合って、3Dモデルからは、
工作機械用の加工データ
も作れるようになっているのです。詳細はケンプラッツの記事をご参照ください。
片山ストラテックの工場(左)と製作中の鉄骨(右)(写真左:家入龍太、写真右:片山ストラテック) |
設計は3Dモデルで行いますが、工場での製作には従来通り、紙にプリントアウトした2次元の図面を使っています。しかし工事現場と同様に、工場でも紙の図面はかさばって持ち運びに不便で、直感的に分かりにくいことが課題となっています。
そこで、KAPシステムを開発する片山ストラテック鉄構システム部では、ひそかに新しいシステムの開発を検討しています。先日、同社のオフィスを訪ねたところ、技術陣の皆さんがiPadを片手になんやら議論していました。
片山ストラテックの技術陣がiPadを片手になんやら検討中(写真:家入龍太) |
きっと、紙の図面を電子化してiPadに入れ、現場で見られるようにすることを考えているんだろうな、と思っていたところ、技術陣の発想はさらにその一歩前を進んでいました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
図面を3D化
して、現場でいろいろな方向からくるくると角度を変えたり、拡大・縮小したりして見られるようにすることを考えているのでした。
従来の2次元図面 |
3D化した図面。寸法線なども立体で付いている(以上の資料:片山ストラテック) |
iPad上で見た3D図面。指先でくるくると回したり、拡大したりできる(写真:家入龍太) |
この検討では、KAPシステムから鉄骨の3次元モデルに寸法線や通り芯、断面記号、注釈などを立体的につけたままDXF形式で書き出し、AutoCAD WSで開く、という方法を採っています。
これがあるだけでも相当、現場は便利になりそうですが技術陣はまだまだ満足していません。部材の3D図面間でリンクを張り、必要な3D図面をスピーディーに探し出して自由自在に見られるシステムの開発を考えています。
最近、防じん・防滴・耐衝撃性を備え、現場でも工具感覚で使える「タフパッド」や「Paper Writer」などのタブレット端末も登場してきましたので、3D図面による現場革命は今後、急速に進展するかもしれませんね。