管理人のイエイリです。
2009年、久米設計はベトナムに現地法人「Kume Design Asia」を立ち上げ、北部のハノイ市と南部のホーチミン市に事務所を開設しています。昨日(10/18)、ハノイ事務所を突撃取材しました。
「Kume Design Asia」が入居するベトナム・ハノイ市のCDCビル(写真:家入龍太。以下同じ) |
同時にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)も導入し、現地スタッフはBIMソフト「Revit Architecture」を使える人材を優先的に採用し、現在では
ナ、ナ、ナ、ナント、
6人のRevitユーザー
がいるのです。
所長の竹田精次郎さん(左写真右側)と源明玲さん(左写真左側)。会議室にはLANも整備されている。出張者がBIMでコラボすることも可能だ(右) |
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BIMモデルを用いた流体解析による通風性検討 | |
事務所内部(左)とRevit指導者資格をもった若手現地スタッフ(右) |
事務所開設当初は、特にBIMを導入する計画はなかったそうです。ところが当時、入社した現地スタッフにRevitに詳しい設計者がいて、「これからはBIMだ」と力説したとのこと。そこでBIMを導入することになったのです。
事実、ベトナムでは建築教育に積極的にITを取り入れており、学生の就職戦線でもBIMができることが一つのPRポイントになっているそうです。
ちょうど“日本のBIM元年”と言われる2009年にBIMを導入したハノイ事務所ですが、それから3年、BIMならではの成果が表れ始めています。
それは、
コンペで続々と1等
を獲得しだしたことです。
例えば、ハノイの複合施設「ホー・タイ・ホテル(HO TAY HOTEL COMPLEX)」では、地元の「昇り龍」の伝説にちなんで、建物全体をひねった形状でデザインし、コンペで見事1、等を獲得しました。
30~40分にわたるプレゼンテーションでは、BIMモデルからCGムービーを作成し、最後に花火で建物が囲まれるシーンを挿入。ベトナム人プレゼンターを起用して盛り上げた結果、最後は拍手喝采(かっさい)で締めくくったそうです。
この建物には上部と下部に風通しのための開口部やスリットを設けてありますが、これもBIMによる通風解析を反映させたものだそうです。
コンペで見事、1等を獲得した「HO TAY HOTEL COMPLEX」のCG(資料:Kume Design Asia) |
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BIMモデルを用いた日照解析 |
また、ホーチミン市に建設する複合施設「コン・クイン・プラザ(CONG QUYNH PLAZA COMPLEX)」は、今から1年半ほど前のコンペですが、Revitなどで作ったBIMモデルデータを現地のCG作成会社に提供してムービーを作りました。
「途中で3~4回、修正を行っても10日ほどでできました。しかも費用は日本より一けた安い金額です」と竹田所長は説明します。
コンペで1等を獲得した「CONG QUYNH PLAZA COMPLEX」のCG(資料:Kume Design Asia) |
日本のコンペは審査項目が多く設定され、どちらかというと「減点法」で評価されるのに対し、海外のコンペは良い点を「加点法」で審査することが多いようです。
もちろん、プレゼンテーションのうまさが決め手になりますが、BIMは設計内容を様々な角度から分かりやすく表現し、ドラマチックな演出も加えることができます。シンガポールやオーストラリアなどの設計事務所は、CGなどの作り方がうまいそうです。
こうした環境にもまれながら、Kume Design AsiaのBIM活用力は年々進化し、これから佳境を迎えようとしているようです。ぜひ、これからもますます、日本の設計力をBIMでアジアに広めてほしいですね。