管理人のイエイリです。
広い範囲に散らばった放射性物質の分布を調べるのは、線量計を持ってあちこちを動き回り、こまめに測定するという手間ひまのかかる作業が必要でした。
そこで三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、放射性物質の分布状況を可視化する特殊カメラのプロトタイプ機「ASTROCAM 7000」を共同開発しました。
その名もズバリ、
放射性物質見える化カメラ
というものです。
現在、さらに名古屋大学が開発チームに加わり、プロトタイプ機をさらに高感度化し、早期実用化に向けて開発しており、本年度内にも三菱重工から商用機「ASTROCAM 7000HS」を発売する予定です。
商用機「ASTROCAM 7000HS」のイメージとプロトタイプ機「ASTROCAM 7000」(円内)(写真・資料:三菱重工業、JAXA、名古屋大学、科学技術振興機構) |
放射性物質見える化カメラは、放射線の飛来方向とその波長をリアルタイムに同時に測定可能で、放射性セシウム134、同137、放射性ヨウ素など、ガンマ線を発生する物質を識別することができます。
その原理には、ガンマ線が物質中の電子とぶつかり、ガンマ線のエネルギーと飛来方向が変化する「コンプトン散乱」という現象を利用しています。電子に渡したエネルギーと散乱されたガンマ線に残ったエネルギー、そして反応場所の情報からガンマ線の方向を知ることができます。
コンプトン散乱を利用したガンマ線の散乱角測定(資料:三菱重工業、JAXA、名古屋大学、科学技術振興機構) |
JAXAと日本原子力研究開発機構(JAEA)は、今年2月にこのカメラの原型となる「超広角コンプトンカメラ」の実証実験を行い、
放射性セシウムの分布状況
の高精度画像化などに成功し、3月にその成果を発表しました。
超広角コンプトンカメラ |
|
超広角コンプトンカメラでの撮像結果。赤い部分ほど放射線量が高い(写真・資料:JAXA、JAEA、東京電力) |
放射性物質の種類や分布状況が、現場の写真上に写し出させると、除染作業などはぐっと効率的に行えそうですね。商用機の早期発売に期待したいです。