日本の技術を改良!ドイツのシールドトンネル用パラメトリックモデル
2013年6月28日

管理人のイエイリです。

シールドトンネルが山岳トンネルと違うのは、トンネル内壁を覆う「セグメント」があることです。そのため、シールドトンネルの設計には、起点と終点を結ぶ縦横断線計などマクロな設計と、ミリ単位の精度で工場製作されたセグメントをピッタリ合わせるミクロな設計など、様々なスケールが混在します。

しかし、現在のソフトでは、このマクロとミクロを両立させて扱える製品はあまりありません。

そこでドイツのミュンヘン工科大学のアンドレ・ボルマン(André Borrmann)さんと、ジャビエール・ジュビエール(Javier Jubierre)さんは、シールドトンネルのマクロからミクロまでの設計を一貫して行うために、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

パラメトリックデザイン

 

手法を開発したのです。

この成果は、米国ロサンゼルスの南カリフォルニア大学で6月23日~25日(現地時間)で開催されたIWCCE(International Workshop on Computing in Civil Engineering) 2013で発表されました。

20130628-image1.jpg

発表する研究者(写真:家入龍太。以下同じ)

一般的な設計手法だと、まずシールドトンネルの両立て坑をつなぐ縦横断線形を決め、その線形をセグメントの幅で分割して、「リング」の位置を決め、セグメントを配置していく、という方法を取ります。

この設計方法だと、もし設計途中で縦断線形やセグメントの幅、床版の厚さなどが変わったりすると、リングの位置決めからやり直さなければいけません。

その点、パラメトリックデザインは、縦断線形に対応するセグメントの取り付け位置や幅、セグメント間の間隔、床版の厚さ、裏ごめの厚さなどの寸法を変数で表して設計します。そのため、縦横断線形を変えると、セグメントや床版などがすべて連動し、自動的に配置されます。セグメントの幅を変えるとリングの位置も自動配置されます。

設計が変更された履歴もきちんと記録されるので、トレーサビリティーもバッチリです。

20130628-image3.jpg

縦断線形を決める(資料:ミュンヘン工科大学。以下、同じ)

20130628-image4.jpg
縦断線形にシールドトンネルの内壁や床版の位置が自動的に配置される
20130628-image2.jpg
シールドトンネルのパラメトリックモデル

さらに、このパラメトリックモデルは、設計の詳細度「LOD(Level of Detail)」という考え方も持っており、「LOD2」ではトンネルの縦横断と外形、「LOD3」ではセグメントの厚さと裏ごめ厚さ、「LOD4」では建築限界や軌道断面、そして「LOD5」ではセグメントの分割やスラブ軌道、照明までというように、設計の進行とともにモデルを詳細化していけるようになっています。

このパラメトリックモデルは、ミュンヘン中心部の地下に建設される鉄道トンネルの設計で使われました。

20130628-image5.jpg

LODの概念を導入

20130628-image6.jpg
ミュンヘンの地下鉄トンネルでも使用された

そして、このパラメトリックモデルは、BIMのデータ交換標準「IFC」形式にも対応しているのです。

「シールドトンネルのIFC」とIWCCEの会場で聞いて、ふと脳裏に浮かんだのは大阪大学の矢吹信喜教授のことです。矢吹教授は以前、シールドトンネルのIFCを開発しました。

20130628-image7.jpg

IWCCE会場でふと浮かんだ矢吹教授の顔

そこで講演終了後、思い切って発表者に「ドクター・ヤブキは以前、シールドトンネルのIFCを開発したが、彼とは話をしたのか」と質問しました。

すかさず返ってきた答えは、

 

「イエス!オブコース」

 

でした。

矢吹教授が開発したシールドトンネル用のIFCをベースにして、さらに進化、改良を加えたのが今回のパラメトリックモデルというわけです。

日本で開発された技術が、海外で改良されたことを聞いて、うれしくなりました。

(Visited 1 times, 1 visits today)

Translate »