15現場で自主導入!大林組が行き着いたCIM活用の極意とは
2013年9月20日

管理人のイエイリです。

土木インフラを3次元モデルで設計・施工するCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の世界で、今、“最も忙しい人”と思われるのが、大林組土木本部本部長室情報企画課課長の杉浦伸哉さんです。

今日は九州、明日は東北、その次は近畿といった具合に全国各地のCIM導入現場へ出張がひっきりなしにあるからです。1日の移動距離が数千kmに及ぶことも珍しくありません。

それもそのはず、大林組では、

ナ、ナ、ナ、ナント、

 

全国15カ所の現場でCIM

 

を導入し、「施工現場でCIMはどんなことに使えるのか」、「どんなところにメリットがあるのか」といったことを、徹底的に検証中だからです。

大林組の本社でCIMを担当しているのはわずか2人だそうです。そのため、杉浦さんは全国の現場を行ったり来たりして、本社のいすも温まる暇がありません。

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大林組の施工管理担当者全員に配布されたiPadを手にする大林組の杉浦伸哉さん(写真:家入龍太。以下、同じ)

驚くべきことに、これらの現場では特に発注者からCIMの活用を指示されたわけではなく、施工者が仕様を自由に決められる任意仮設と同じ考え方で自主的にCIMを導入しているのです。

その使い方の特徴は、「選択と集中」にあります。例えば、CIMで「計測をする」、「施工シミュレーションをする」、「体積を出す」「3Dスキャナーを使う」など、いくつかのメニューを用意しておき、CIMで合意形成の促進や施工管理の効率化など、メリットがあるところに絞ってCIMを活用します。

建築分野のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)でも、むやみに意匠、構造、設備の設計をすべてBIMで行う「フルBIM」はやめて、効果のあるところに絞った活用をしようという気運が高まっていますが、工種の多い土木分野ではなおさらその必要性が高いというわけですね。

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和歌山県内で施工中の近畿自動車道紀勢線の見草トンネルの施工管理システム。iPad上で支保工のパターンやコンクリートの仕様のほか、土質や切り羽の写真などを見ることができる

杉浦さんらがCIMに取り組み始めたのは、2012年の3月でした。当時は右も左もわからず、現場の人にもなかなか受け入れてもらえずに苦労したそうです。

しかし、「CIMで何ができるか」といったCIM中心の考え方から、「CIMで何を解決するか」といった現場業務中心の考え方に変えてから、現場の人にもCIMの便利さが理解してもらえるようになりました。今ではこの現場は

 

CIM銀座にするぞ

 

と、積極的に取り組む現場所長や職員も増えてきているそうです。

こうした過程を経て、杉浦さんには施工段階でCIMのメリットを生かす3つの極意が見えてきました。それは「施工の手戻りを削減する」「判断を迅速化する」「施工コストを縮減する」というもので、この3つから外れることはやらないとまで言い切っています。

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9月19日、東京・霞が関で行われた「CIM最新事例セミナー」(主催:伊藤忠テクノソリューションズ)で講演する杉浦さんの話には、自信と説得力がみなぎっていた

CIMやBIMはソフトやハードの購入や、職員の教育訓練などへの投資が必要なので、「いかにその費用を払ってもらうか」という話題になりがちですが、大林組では発注者の指示とは関係なく、CIMによる自社のメリットを独自で追求しています。これこそ、生きたCIMの活用につながるのではないかと感じました。

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