鴻池組がトンネル切羽にロボ犬投入! 発破直後の状況を無人リポート
2026年5月28日

管理人のイエイリです。

山岳トンネル工事で、最も緊張感が高まる場所の一つが、掘削最前線の「切羽」です。地山の割れ目や風化、湧水、肌落ちの兆候などを見極める重要な場所ですが、同時に落石や崩落、可燃性ガスの発生といった危険も潜んでいます。

つまり現場では、「安全確認のために近づきたい。でも、近づくこと自体が危ない」という、なんとも悩ましい状況があるわけです。特に発破後や地山が不安定なときほど、まず誰かが様子を見に行かなければなりません。ここに、トンネル工事ならではの大きなお困りごとがあります。

そこで、鴻池組(本社:大阪市)とポケット・クエリーズ(本社:東京都新宿区)は、発破直後の危険な切羽に、

ナ、ナ、ナ、ナント、

四足歩行ロボット

を送り込み、無人で観察や計測を行ったのです。(鴻池組のプレスリリースはこちら

切羽に向かって進む四足歩行ロボット(特記以外の写真:鴻池組)

切羽に向かって進む四足歩行ロボット(特記以外の写真:鴻池組)

使用した四足歩行ロボット。脚の先にタイヤが付いているので、平坦な場所はスピーディーに移動できる

使用した四足歩行ロボット。脚の先にタイヤが付いているので、平坦な場所はスピーディーに移動できる

両社は山岳トンネル工事現場で、Unitree社製の四足歩行ロボット「B2-W」をベースにしたロボットを使い、危険エリアでの無人探査、ガス検知、3D点群データの取得を実証しました。

このロボットは、ただトコトコ歩くだけではありません。トンネル最深部から手前約60mに設置した発進基地から出発し、3DLiDARで周囲をスキャンしながら、自分の位置や障害物を三次元空間データとして記録します。そして障害物を避けながらトンネル先端方向へ自律歩行し、設定した地点で停止します。

また、脚の先にタイヤが付いているので、平坦な場所はタイヤ走行によってスピーディーに移動できます。

トンネル内に設けられた発進基地

トンネル内に設けられた発進基地

実験では、トンネル最深部の手前15m地点で停止するよう設定し、そこで掘削面を遠隔観察しました。ジンバルカメラで高精度な撮影を行い、POVカメラで遠隔操作用の映像も送ります。

さらに、ガスセンサーと専用端末でCH4、O2、H2S、CO、CO2を検知・濃度測定し、切羽近傍の環境を数値で確認できるようにしました。目で見るだけでなく、ガスの有無や酸素濃度まで遠隔で確認できるわけです。

LiDARで計測した点群データ(資料:ポケット・クエリーズ)

LiDARで計測した点群データ(資料:ポケット・クエリーズ)

酸素濃度や有毒ガスなどの計測値をリアルタイムに確認できる遠隔監視装置(写真:ポケット・クエリーズ)

酸素濃度や有毒ガスなどの計測値をリアルタイムに確認できる遠隔監視装置(写真:ポケット・クエリーズ)

データ収集が終わると、ロボットは往路で記録した空間データをもとに、同じ経路をたどって発進基地へ帰還します。発進基地には充電機能もあり、観察作業の合間に充電しながら継続運用する構想です。

不整地を越えるだけなら、ドローンという選択肢もあります。しかし、Unitree社の仕様によると、ベース機の「B2-W」には

40kgの荷物を背負って

最大25kmも移動できるパワーがあります。

つまり、ドローンが“空飛ぶ目”だとすれば、この四足歩行ロボットは“センサーを背負った無人調査員”です。3DLiDARやガスセンサー、カメラ、制御PCなどを積んで、危険な切羽近くまで行き、地面にしっかり立って、じっくり観察・計測できるところが強みです。

そのため今後は、現場のニーズに応じて、熱画像カメラや粉じん計、風速計、さらにはマイクロドローンなどを追加搭載できる拡張性もあります。トンネル坑内を歩く“無人調査基地”へと進化する可能性を秘めているのです。

人間の五感である視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚に相当するセンサーを追加していけば、四足歩行ロボットが、まるでベテランのトンネル技術者が現場に立ったかのように、リスク判断を支援してくれるようになるかもしれませんね。

今後は、より複雑な不整地での歩行安定性、長時間運用、通信安定性、さらに点群データから施工進捗を自動解析する仕組みなどが課題になりそうです。

切羽に人が近づく前に、まずロボットが行って、見て、測って、戻ってくる。そんな未来のトンネル工事が、少しずつ現実味を帯びてきました。

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