管理人のイエイリです。
建設業は、よく「経験工学」と言われます。図面やマニュアルに書かれていることだけでは、現場の仕事はなかなか回りません。
例えば、仕上がりを見て「これはOKか、手直しが必要か」を判断したり、設備やインフラの点検で「この変状は危ないのか、経過観察でよいのか」を見極めたりする場面では、ベテランの長年の経験がものを言います。
ところが、建設技能者の高齢化が進む中、こうした熟練者の「どこを見るか」「なぜそう判断するか」といった暗黙知を、若手にどう引き継ぐかが大きな課題になっています。
建設業のノウハウや知識は、実は仕事中の会話の中に多く含まれています。しかし、これまではそれをマニュアル化するのが難しく、技能継承の大きな課題となっていました。
そんな中、クアンド(本社:福岡県北九州市)は、AIを活用した次世代の技能継承術を提案しています。
仕事のノウハウが詰まった会話を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
AIで自動的にマニュアル化
していこうというのです。(クアンドのプレスリリースはこちら)
いったい、どうやって会話からマニュアルを作るのか。不思議に思う方もおられるでしょう。
そのヒントは、同社が開発・提供する現場向け遠隔支援ツール「SynQ Remote(シンクリモート)」にあります。
このツールは、現場にいる若手技術者と遠隔地にいるベテラン技術者が、スマホやパソコンで同じ画面を見ながら、細かな指示や相談を行えるものです。
さらに、通話中の音声や映像をもとに、AIが議事録を自動作成する機能もあります。現場でのやり取りを記録に残し、報告書づくりなどの手間をぐっと減らしてくれるわけです。(2025年10月6日の当ブログ参照)
今回の提案は、その記録をさらに「技能継承」に生かそうというものです。
例えば、SynQ Remoteを通じて若手が現場から映像を送り、ベテランが「そこをもう少し近くで見せて」「この状態なら次にここを確認して」「この判断は安全側で見た方がよい」とアドバイスしたとします。
従来なら、こうしたやり取りは通話が終われば消えてしまいました。
しかし、SynQ Remoteなら、その映像や音声、会話が記録として残ります。さらにAIによる会話解析や要約を活用し、議事録の中から仕事に役立つノウハウや知識を含んだ部分を抜き出して、マニュアルも自動的に作ってしまおうというわけです。
これまでのように、手間ひまかけてマニュアルを書くのではなく、日々の仕事の中で交わされる会話から、貴重なマニュアルが少しずつ蓄積されていく。
現場で育つDX
という発想が、AI時代らしくていいですね。
建設業では、これまで「10年たって一人前」と言われることも少なくありませんでした。もちろん、実際の現場経験はこれからも欠かせません。
しかし、ベテランの判断や若手への指導が、映像と会話ログとして残るようになれば、自分が直接経験していない現場のトラブル対応や品質判断、安全上の着眼点も、疑似体験として学べるようになります。
つまり、経験そのものの重要性は変わりませんが、経験から学ぶスピードは上げられるのです。
これまで現場で消えていた会話が、会社の知的資産になる。SynQ Remoteは、建設業の「経験工学」を、AIで少し近道できるようにする次世代OJTの仕組みと言えそうです。
クアンドは、2026年5月22日(金)11時から、インテックス大阪で開催される「産業DX総合展 Bizcrew EXPO 2026」で、SynQ
Remoteのデモンストレーションを行う予定です。
現場の会話や判断をどのように蓄積し、人材育成や技能継承にどう生かすのかも紹介されるとのこと。ご興味のある方は、出掛けてみてはいかがでしょうか。























