管理人のイエイリです。
シールド工事で意外にやっかいなのが、マシン先端に付いたカッタービットの摩耗です。特に、砂礫層や硬い地盤、長距離の掘進では、地山をかき回す役目を担う「先行ビット」がどんどんすり減っていきます。
ビットが摩耗すれば、当然、交換が必要になります。しかし、シールド機のカッターヘッド前面は地下の地山と密着しており、泥水や泥土、土砂に囲まれた世界です。
そのため従来は、ビット交換のために地上から立坑を掘ったり、地盤改良を行ったうえでカッターヘッド前面の地盤を人力で掘り広げたりして、作業場所を確保する必要がありました。
大成建設(本社:東京都新宿区)の技術陣は、この泥まみれの環境で行われるビット交換作業のDX化に挑戦しました。
その結果、実際の工事で、
ナ、ナ、ナ、ナント、
遠隔操作でビット交換
することに成功したのです。(大成建設のプレスリリースはこちら)
同社は2021年、シールド機の内部からビット交換を行う「THESEUS工法」を日立造船と共同開発しました。(大成建設、日立造船のプレスリリースはこちら)
今回、この「THESEUS工法」を京都市上下水道局発注の「鳥羽第3導水きょ公共下水道工事」のシールド機に実装し、実工事に初適用しました。
この工法のポイントは、ドロドロのカッターフェース前面にロボットを突っ込むのではないことです。
ビットが付いているカッターヘッドは、泥水や泥土をかき回して掘削するため、シールド機の内部とは隔壁で仕切られています。
そこで、ビットが取り付けられた「カッタースポーク」とシールド機内部の隔壁との間を、「可動式マンホール」でつなぎます。
カッタースポーク内は空洞になっているため、可動式マンホールでシールド機内部と接続すれば、土圧や泥水から守られた作業空間を確保できます。これにより、シールド機の内部からロボットがカッタースポーク内に進入できるようになるのです。
カッタースポークに入ったロボットは、あらかじめ設けられたレール上を横移動し、交換対象となるビットの後ろで停止します。そして、旧ビットをスポーク内側へ引き抜き、新ビットを押し込んで交換します。
ロボットには2台のカメラが搭載されており、作業者はその映像を見ながら、有線で遠隔操作します。
このロボットにより、ビット1個を20分で交換可能であることを確認しました。また、一連のビット交換作業に要する時間は、可動式マンホール接続に30分、可動式マンホールとカッター背面受口のハッチ取り外しに20分、カッタースポーク内へのビット交換ロボット搬入は10分で可能であることを確認しました。
こう書くと簡単そうに聞こえますが、相手は地中で高い土圧や水圧を受け、泥水や土砂に直接接しているビットです。一歩間違えれば、ビットを引き抜いたり押し出したりする際に、すき間から土砂が入り込み、
土砂が入って立ち往生
しかねません。
そこで、ビットの取付穴にはシャッターを設け、ビットを引き込む間に土砂が入り込まないようにしています。また、ビットの後方にはロボットと密着・合体するような機構を設け、ビットの引き抜きや押し出しの際、泥水などがカッタースポーク内に吹き出さないように工夫されています。
つまり、このロボット化は、きれいな工場内で部品を交換するような自動化ではありません。泥や砂が付くことを前提に、ビットを保持し、引き込み、取り外し、回収し、再び新しいビットを装着する仕組みを成立させたわけです。
こんな過酷な環境で、精密さとパワーの両方が求められる作業をロボット化しようとは、なかなか想像しにくいものです。そこにあえてチャレンジした大成建設の技術は、建設分野ならではの泥臭い、いや、実に頼もしいメカトロニクスと言えるでしょう。
この技術が広がれば、ビット交換のための立坑や大がかりな地盤改良を減らし、長距離シールド工事の計画そのものを変える可能性があります。
また、人がカッターヘッド前面や狭いカッタースポーク内に入る機会も減り、安全性向上にもつながります。
大成建設の「THESEUS工法」は、長距離・大深度・都市部のシールド工事に向けた、現場発の建設機械DXと言えそうです。























