犬型ロボでプリズム移設! 奥村組と西松建設がシールド測量を無人化へ
2026年6月15日

管理人のイエイリです。

シールドトンネル工事で、掘進管理に欠かせない作業の一つが坑内測量です。シールド機が設計通りの位置や高さ、方向に進んでいるかを確認する大事な仕事ですが、自動追尾式のトータルステーションを使えば、測る作業そのものはかなり省力化できます。

一方、意外に手間がかかるのが、座標や高さが分かっている「既知点」へのプリズム据え付け作業です。これまでは、別の既知点へプリズムを移すたびに、作業員が坑内を歩いて持ち運び、正しい位置に据え付ける必要がありました。

特に小口径シールドでは、坑内が狭く、中腰での長距離移動も伴います。掘進作業の後に測量するため、残業の原因にもなりがちです。

こうした、測量DXの中で最後まで人手に頼っていた「プリズムを置きに行く」作業を無人化するシステムを、奥村組(本社:大阪市)と西松建設(本社:東京都港区)が開発しました。その名も、シールド坑内測量システム「わんワン測量」です。

プリズムを既知点に据え付ける作業を、

ナ、ナ、ナ、ナント、

犬型ロボットに任せる

ことに成功したのです。(奥村組のプレスリリースはこちら

レールの間に敷設した足場板の上を自律歩行するロボット

レールの間に敷設した足場板の上を自律歩行するロボット

「わんワン測量」の全体イメージ図(以下の資料、写真:奥村組、西松建設)

「わんワン測量」の全体イメージ図(以下の資料、写真:奥村組、西松建設)●「わんワン測量」の全体イメージ図(以下の資料、写真:奥村組、西松建設)

測量時は「犬小屋」と呼ばれる充電ステーションから出動する

測量時は「犬小屋」と呼ばれる充電ステーションから出動する

このネーミングは、どう見ても犬型ロボットにかけていますね。

4足歩行の犬型ロボットは普段、シールド機の後方に設置した「犬小屋」と呼ばれる自動充電ステーションで待機しています。そして測量を行う時に出動し、坑内を歩いて測量作業を手伝います。

4足歩行ロボットの上部には、3D-LiDARセンサーを搭載しています。坑内の点群データを取得しながら歩行し、あらかじめ設定した座標点情報を参照して、指定された既知点まで自動で移動します。トンネルの線形や軌条設備に依存せず、足場上を柔軟に歩けるのが特徴です。

3D-LiDARとロボットアームを搭載した4足歩行ロボット

3D-LiDARとロボットアームを搭載した4足歩行ロボット

坑内を歩行しながらリアルタイムで自己位置を計測する

坑内を歩行しながらリアルタイムで自己位置を計測する

既知点に到着すると、ロボットは転倒防止のため、重心を低くした安定姿勢を取ります。続いてロボットアームを展開し、アーム先端のカメラで既知点周辺を撮影。その画像をもとにAIがアームの位置を調整し、既知点の上にプリズムを据え付けます。

つまり、これまで作業員が行っていた「坑内を歩く」「既知点を探す」「プリズムを据え付ける」という一連の段取りを、4足歩行ロボットとロボットアームに任せる仕組みです。測量が終わると、ロボットは接触型充電方式の自動充電ステーションに自動帰還し、充電します。

既知点に着くとプリズムを据え付けるために安定姿勢を取り、プリズム付きのロボットアームを既知点上に伸ばす

既知点に着くとプリズムを据え付けるために安定姿勢を取り、プリズム付きのロボットアームを既知点上に伸ばす

既知点認識システムの画面

既知点認識システムの画面

ロボットがプリズムを置くとなると、「本当に測量に使える精度が出るのか」と心配になりますね。

奥村組技術研究所内の模擬トンネルや、奥村組が施工中のシールドトンネル現場で行った実証試験では、2点間の距離計測時に、

較差が2mm程度

であることを確認しました。

また、シールド機の後続台車が走行するレールの間に敷設した幅約480mmの足場板上を自律移動できることや、曲線半径35mの急曲線区間でも安定して歩行できることも確認しました。

シールド後続台車に連結された「犬小屋」(左)。充電中のロボット(右)

シールド後続台車に連結された「犬小屋」(左)。充電中のロボット(右)

今後は、さらなる精度向上と現場実証を重ね、実用化に向けた開発を進めます。さらに、西松建設が開発した自動測量対応トータルステーションを活用した「遠隔測量システム」と連携することで、プリズム設置から既知点測量、トータルステーションによる自動視準まで、一連の掘進管理測量を無人化する構想です。

「わんワン測量」は、派手なロボット技術に見えて、実は現場の小さくて大きな困りごとに真正面から向き合った建設DXです。測量作業員の頼れる相棒として、犬型ロボが坑内を歩き回る日は、意外に近いかもしれませんね。

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