管理人のイエイリです。
建設用3Dプリンターを使うと、丸い住宅や曲面の壁など、従来の型枠では手間のかかる形を、デジタルデータから直接つくることができます。
ところが、いざ建築物として建てようとすると、設計者を悩ませる問題がありました。
3Dプリンターで造形したモルタル製の型枠は、単なる仕上げ材なのか。コンクリートを打ち込むための型枠なのか。それとも、鉄筋コンクリート造の一部として構造耐力に見込めるのか。
ここがあいまいだと、建築確認申請で説明しにくく、確認検査機関も判断しにくいのです。
こうした悩みを持つ設計者に朗報です。国土交通省 住宅局 建築指導課長は2026年6月15日、建設用3Dプリンターを使った新しい構造方法に関する基準を制定し、各都道府県の建築行政主務部長などに通知しました。
その内容とは、3Dプリンターでつくったモルタル製の型枠を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
RC構造として扱える
という画期的なものなのです。(国土交通省の通知はこちら)
新しい建物構造の正式名称は、「積層造形型枠一体型壁式鉄筋コンクリート造」です。
建設用3Dプリンターでモルタルを積層し、中空の型枠をつくります。その中に縦横の鉄筋を配置し、コンクリートを充填して一体化することで、壁式鉄筋コンクリート造として使う仕組みです。
つまり、建物を3Dプリンターだけで丸ごと“印刷”するのではありません。3Dプリンターでつくった型枠と、内部の鉄筋、コンクリートを一体化し、RC構造として働かせるところがポイントです。
対象となるのは、階数が1、延べ面積200m2以内、階高3.5m以下の小規模建築物です。使える部位は、耐力壁、基礎ばり、床版、屋根版、壁ばりなど。一方、柱などには用いることができません。
型枠に使う材料はモルタルで、内部に充填するコンクリートの設計基準強度以上の強度が求められます。さらに、建物が終局強度に達する前に、型枠が内部コンクリートから剥離したり、脱落したりしないことも確認します。
要するに、外側の3Dプリント型枠も、最後まで内部コンクリートと一体になって頑張ることが条件なのです。
接合部の考え方も示されています。例えば、耐力壁相互の鉛直方向の接合部はウェットジョイントとし、径9mm以上のコッター筋で構造耐力上有効に接合する、といった内容です。
3Dプリンター建築というと、どうしても未来的な外観に目が行きます。今回の基準の中身は、型枠、鉄筋、コンクリート、接合部をどう一体化し、どう構造として評価するのかという実務的な内容が整理されています。
新基準では、耐力壁や屋根版、床版、壁ばり、基礎ばりなど、建物の周囲をぐるりと構成する部材が対象になっています。そのため、曲面住宅やシェル状の小規模施設など、建設用3Dプリンターの得意技を生かした建物にも適用しやすそうですね。
今回の新基準によって、
建築確認申請も大きく前進
しそうです。
3Dプリンター型枠を構造耐力に見込む場合、どの規模の建物で、どの部位に、どんな条件で使えるのかが、設計者と確認検査機関の双方にとってかなりクリアになりました。
これまでの3Dプリンター建築は、一品生産の実証施設のように見られがちでした。しかし今後は、一般の設計者が告示や技術的助言を参照しながら、建築確認申請に乗せやすくなります。
これは、3Dプリンター建築の量産化に向けた重要な一歩と言えそうです。
ちなみに土木分野でも、国土交通省の「建設用3Dプリンタによる造形物の出来形及び品質の確認に関する参考資料(案)」や、土木学会(本部:東京都新宿区)の「コンクリートライブラリー168建設用3Dプリント埋設型枠を用いたコンクリート構造物の技術指針(案)」が整備されています。
ただし、土木構造物は荷重条件や用途が多様なため、3Dプリント埋設型枠をどう構造に見込むかは、個別協議を重視する内容になっています。
建築では小規模な平屋建築物から、土木では埋設型枠の品質確認から。分野ごとにアプローチは違いますが、モルタル製型枠の力学的な扱いが、少しずつクリアになってきたことで、3Dプリンター建築は、いよいよ量的拡大の時代を迎えそうです。





















