管理人のイエイリです。
有事対応や災害復旧の現場では、短期間で構造物を造りたい一方で、人手不足や資材不足、施工場所の制約といった悩みがつきものです。
その手段として、建設用3Dプリンターの活用が注目されています。しかし、ただ早く造ればよいわけではありません。敵の攻撃から設備を守るドローン基地や、人を守る防災拠点のような施設なら、衝撃に耐える強さも必要です。
このジレンマに挑戦しているのが、3Dプリンター住宅を展開するセレンディクス(本社:兵庫県西宮市)です。
同社はこのほど、3Dプリンターで造形した壁に、
ナ、ナ、ナ、ナント、
金属の“弾”を高速衝突
させる実験を行ったのです。(セレンディクスのプレスリリースはこちら)
実験の目的は、3Dプリンターで造形した壁が、構造形状や処理方法の違いによって、耐衝撃性能にどんな差を生むのかを比較検証することです。
一見すると、コンクリートの壁は中までぎっしり詰まっていた方が強そうに思えます。しかし、強い衝撃を受ける場合には、必ずしもそうとは限りません。
内部に空洞や薄い壁を何層も設けておくと、外側の壁がまず壊れ、次の壁、さらに次の壁が順番に衝撃を受け止める可能性があります。
水中で発射された弾丸が短い距離で止まったり、何十枚もの板を貫通するうちに勢いを失ったりするのと、ちょっと似たイメージですね。
例えば、上の写真の壁は、内部がモルタルで詰まった1枚の厚い壁のように見えますが、飛翔体の衝突によって壁全体が大きく破壊されたようです。
一方、下の写真は内部が空洞になったように見える壁です。表面には大きな穴が開いたものの、壁全体の崩壊は免れているように見えます。
防爆シェルターや防護施設では、人や設備を守るため、一部は壊れても、
全体崩壊を防ぐ
ことが重要です。
3Dプリンターなら、壁の外形だけでなく、中身の構造までデータで作り分けられます。つまり、「どこを壊して、どこを残すか」まで設計できる建築に近づいているのです。
セレンディクスは、二重・三重構造の壁、リブを活用した多層構造、素材処理の工夫などを組み合わせて、耐衝撃性や防護性能を高めた構造物の開発を進めています。用途に応じて躯体の壁数や構造を最適化する製造方法については、特許も出願しています。
同社はこの実験を生かした「3Dコンクリートプリンティング製防爆シェルター」や「ドローン基地」を、イギリスで開催される「Farnborough International Airshow 2026」の防衛装備庁ブース内で展示する予定です。
3Dプリンター建築というと、これまでは住宅を早く、安く造る技術という印象が強かったかもしれません。しかし今後は、“防弾”的な粘り強さを備えた防災拠点や公共インフラ、防護施設へと、活躍の場が広がっていきそうです。




















