管理人のイエイリです。
鉄骨造の建物では、火災時に鉄骨の強度が落ちないよう、梁などに耐火被覆材を吹き付ける作業が欠かせません。
しかし、この作業はなかなかの重労働です。粉じんが舞う中で、梁の下面や側面に向けてノズルを構え、一定の厚さになるように材料を吹き付けていきます。
しかも従来は、材料供給を担うプラントマン、仕上がりを確認する押さえ工、実際にノズルを操作する吹付工の3人1組で進めるのが一般的でした。
人手不足が続く建設現場では、「この作業をどう効率化するか」は、かなり切実なテーマです。
そこで清水建設(本社:東京都中央区)は、吹付工の作業を、
ナ、ナ、ナ、ナント、
耐火被覆ロボ
に置き換え、“2人1ロボ体制”で施工することに成功したのです。(清水建設のプレスリリースはこちら)
その名は、耐火被覆吹付ロボット「Robo-SprayⅡ」です。
清水建設は、神奈川県内で施工中の公共施設工事にRobo-SprayⅡを投入。2026年1月から4月にかけて、過去最大となる約900m2の耐火被覆を施工しました。
従来の3人1組による人力作業では、1日当たり約100m2を施工していました。これに対し、Robo-SprayⅡではロボットが吹付工の役割を担うことで、プラントマンと押さえ工兼オペレーターの2人体制で、同等の施工効率を確保できたのです。
その結果、従来の人力作業と同等以上の施工効率を確認。作業員1人当たりの生産性は、約1.5倍に向上したとのことです。
Robo-SprayⅡは、吹付ノズルを動かすアーム部、その高さを調整するリフター、これらを載せる台車で構成されています。
アーム部には6軸ロボットアームを採用。人間の腕のように向きや角度を変えながら、梁に耐火被覆材を万遍なく吹き付けます。
使い方も現場向きです。
まず、ロボットを作業位置に移動させます。次に、オペレーターがタッチパネルで施工する梁データを選択します。
するとロボットがセンシングと位置合わせを行い、アウトリガーを張り出して機体を固定。その後、吹付作業に入ります。作業が終わるとアウトリガーを折り畳み、次の場所へ移るという流れです。
オペレーターは、画面に表示される作業ボタンをその都度タッチしていけば、一連の作業を進められます。複雑なロボットプログラムを書くのではなく、梁の形状を選び、ボタン操作で施工を進めるところが、いかにも現場実装を意識した仕組みです。
そして、このロボットの面白いところは、完全自動化や完全自律化をやみくもに追いかけていない点です。
清水建設は、これまで搭載していた電動による自律移動機能を、電動移動のみにするなど、施工効率を維持しながら必要な機能だけに絞った、
シンプルでローコスト
な改良機も開発中です。
つまり、建設ロボット活用は全部ロボット任せではなく、“適ロボ適所”という考え方で、人とロボットの分担を見極める段階に進んできたように感じます。
建設ロボットというと、つい「全自動」「完全自律」という言葉に目が行きます。しかし、現場で本当に使えるロボットにするには、何でもできる万能選手より、得意な作業を確実にこなす実用選手の方が強い場合もあります。
そこで清水建設は、ロボットの移動や盛り替えが少なくて済む大梁など、施工面積が大きい箇所にRobo-SprayⅡを適用する一方、小梁や柱と梁の取り合い部など、細やかな吹付作業が必要な箇所は、従来通り人力作業で対応します。
大梁はロボットが黙々と吹き付け、細部や難しいところは人が仕上げる。そんな人間とロボットのベストな「人ロボ分担比率」を追求していると言えるでしょう。
改良機は2026年6月末の完成を予定しており、都内の大規模プロジェクトに試験導入する計画です。
清水建設のRobo-SprayⅡは、建設ロボットが現場にこなれてきたことを感じさせる、なかなか頼もしい助っ人になりそうです。



















