管理人のイエイリです。
トンネル工事のDX化で、重機の自動運転やロボット施工などを行うには、現場のデータを正確に集め、安定して伝送する情報・通信システムが欠かせません。
しかし、坑内ではGNSSが使いにくく、粉じんや湿気、振動もあります。Wi-Fiなどの電波も、地上のようには思うように届きません。
理屈通りにはいかないトンネル現場で、計測データを安定して集め、伝送し、施工管理に生かすには、結局のところ、人の経験や勘に頼る部分が残るのも“DXあるある”ではないでしょうか。
そんな中、トンネル工事の自動化・遠隔化システム「A4CSEL(クワッドアクセル)for Tunnel」などの開発を進める鹿島(本社:東京都港区)が、大きな一手を打ちました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
あの演算工房を完全子会社化
してしまったのです。(鹿島のプレスリリースはこちら)
演算工房(本社:京都市)と言えば、全国各地のトンネル工事にかかわってきた、トンネル工事の計測・施工管理システム分野では“知る人ぞ知る”実力派企業です。株式取得は2026年8月末をめどに行われる予定です。
演算工房は、山岳トンネルの計測・施工管理システムの開発だけでなく、現場実装や運用管理、メンテナンスまで手がけてきました。国内外で約3900現場への導入実績があり、山岳トンネル測量システムでは国内トップシェアを確立しているとのことです。
建設ITブログでも以前、同社のトンネル施工管理システム「CyberNATM」と、材料の受発注業務をクラウドで連携する「enCommerce」を紹介しました。
「CyberNATM」の工程管理データを活用し、支保工やロックボルト、吹き付けコンクリートなどの材料について、いつ、何が、どれだけ必要になるかを見える化する仕組みです。(2023年7月12日の当ブログ参照)
つまり演算工房は、坑内を測るだけの会社ではありません。施工データをクラウドに上げ、現場と材料メーカー、物流業務をつなぐ発想を持つ会社なのです。
鹿島の自動化施工技術が、重機や施工プロセスを動かす“頭脳と手足”だとすれば、演算工房の計測・施工管理システムは、現場を測り、通信でつなぎ、施工状況を記録する“目と神経系”と言えるでしょう。
鹿島が今回の子会社化で狙うのは、建設ICTの
現場実装力を内製化
することにあります。
自動化施工は、重機を自動で動かせば完成というわけではありません。切羽の位置、出来形、支保工、施工履歴、材料の手配などがデータでつながってこそ、現場全体がスムーズに動きます。
今回の子会社化によって、鹿島はトンネル施工DXに必要な「測る」「つなぐ」「記録する」力を、グループ内に取り込むことになります。
鹿島は今後、演算工房が持つ技術力を、主力の山岳トンネル・シールドトンネルだけでなく、土工をはじめとする幅広い工種へも広げていく計画です。トンネルで鍛えられたICT実装力が、土工、造成、インフラ工事へと広がれば、建設DXはまた一段、現場寄りに進化しそうです。
【イエイリの建設DX先読み】
これからの建設DXでは、アプリやクラウドを導入するだけでなく、現場でセンサーを動かし、通信をつなぎ、施工データを毎日ため続ける“泥臭いICTインフラ”構築力がますます重要になります。
国内では、ゼネコンが現場実装力を持つICT企業を完全子会社化する例はかなり珍しいと言えます。一方、海外では米国のモーテンソン社(Mortenson)が、インフラ分野の制御技術に強いノーカル・コントロールズ社(Nor-Cal Controls)を買収するなど、建設DXの本格化をにらんだ動きも出ています。
鹿島と演算工房のように、現場の「部分最適のDX」から「プロセス全体のDX」へ進めていく中で、ゼネコンによるICT企業の買収劇は、日本でも広がっていくかもしれません。




















