管理人のイエイリです。
建設現場やインフラ施設の点検・監視では、ドローンやロボットの活用が進んできました。しかし、現場には「飛ばせば解決」「車輪で走れば解決」とは限らない場所が、まだまだたくさんあります。
例えば、重い計測機器を人が運ぶには危険な悪路、ドローンを飛ばしにくい屋内やプラント、GPSが届かない暗渠や地下水路、車輪では進みにくい瓦礫や段差などです。
こうしたニッチな現場のお困りごとに応えるため、アトラックラボ(本社:埼玉県三芳町)は最近、5種類のロボット軍団を続々と発表しています。
これらのロボットの特徴は、現場ごとのアクセスのしにくさに合わせて、移動方式そのものを変えていることです。
例えば、長時間の“滞空”作業を実現するため、
ナ、ナ、ナ、ナント、
飛ばないドローン
もあるのです。
その名も、レール走行型AI監視ロボット「レールドローン」です。名前にドローンとありますが、空は飛びません。市販のミスミ製30mm角アルミフレームをレールとして使い、その上を走行しながら、ジンバルカメラで映像や音声をモニタリングします。
LTEやWi-Fi経由で接続し、Webブラウザから遠隔操作できます。AI画像認識による不審者や動物の侵入検知、スピーカーによる双方向音声通信にも対応します。
空を飛ぶ自由度をあえて捨て、レール上の安定走行に割り切ることで、長時間・低消費電力・安全な巡回監視を狙うわけです。
短い直線レールを多角形につなげば、工事現場やプラントの巡回ルートを、プラレール感覚で組み替える応用も期待できそうですね。
産業用クローラーロボット「AT-Crawler」は、小型ながら最大100kgの積載能力を持つロボットです。用途に応じて車幅を変更できるモジュール設計で、AIコンピューター、LiDAR、3Dスキャナー、カメラ、サーマルカメラ、地中探索装置(GPR)、RI装置、ガス検知器、ロボットアームなどを搭載できます。
いわば、現場にセンサーや作業機を持ち込むための“走る土台”です。
3D LiDAR搭載の「ATカタマラン120」は、GNSS、つまりGPSが使えない暗渠や地下水路などの閉鎖水域で自律航行する小型艇です。3D LiDARとSLAM技術で自己位置を推定しながら進みます。
船体はふくらまし式で、全長約1.2mのカタマラン構造です。まさに“泳ぐLiDAR”ですね。
「六脚スパイダーロボット」は、6本の脚を独立制御し、瓦礫や段差、不整地を歩くロボットです。通常は4本の脚で体を支え、残る2本の脚で対象物に触れることで、硬さや柔らかさなどの物理的な情報を取得します。
カメラで見るだけでなく、“触って判断する”ところが新しいですね。
フィールドロボット「AT-FOX」は、車輪と脚を融合したロボットです。平坦路では車輪で効率よく走り、不整地では四節リンク機構による伸縮脚で姿勢を制御します。
さらに、ロボットを動かすための仕組みも本格的です。
まず、ロボットの各部を連携させるための基盤として、ロボット開発で広く使われる「ROS 2」を採用しています。建設業の感覚で言えば、車輪、脚、センサー、カメラ、制御用コンピューターなどをバラバラに動かすのではなく、全体をつなぐ“神経系”のようなものです。
そこに、自社開発のAI自律制御システム「AT-SYNAPSE」を組み合わせます。これは、ロボットが周囲の状況を見ながら、自分で判断して動くための“頭脳”に当たります。
さらに、NVIDIA Isaac Simというシミュレーション環境も活用します。これは、実際のロボットをいきなり現場で転ばせながら試すのではなく、仮想空間の中に悪路や段差を再現し、そこで何度も走行練習をさせる“ロボットの訓練場”のようなものです。
こうした仕組みにより、フィールドロボット「AT-FOX」は、強化学習による姿勢制御やアクティブサスペンション制御の高度化を進めています。
これらの個性派ロボットは、
現場で動くフィジカルAI
という点も見逃せません。
生成AIやBIMのAI支援は、パソコン画面の中で知的作業を助けてくれます。一方、アトラックラボのロボット群は、AIを泥、瓦礫、水路、段差、暗所といった現場空間に持ち出し、リアルな現場のお困りごとを解決しようとしています。
重いものを運ぶならクローラー、固定ルートを見張るならレール、水路を調べるなら小型艇、瓦礫を進むなら六脚、平地も悪路も走るなら車輪+脚。
こうした“用途特化型ロボット”は、建設DXの幅をぐっと広げてくれそうですね。
【イエイリの建設DX先読み】
今後、こうした現場ロボットが発展すると、点検や巡回は「人が現場へ行って見る」から、「ロボットが先に行って、映像や点群、音、熱、接触情報を持ち帰る」スタイルに変わっていきそうです。
さらにBIM/CIMやデジタルツインとつながれば、現場で取得したデータを、そのまま維持管理モデルに反映することも見えてきます。
人間は危険な場所へ入る回数を減らし、判断や計画に集中する。そんな建設現場の未来を、これらの変わり種ロボットは先取りしているのかもしれません。
























