管理人のイエイリです。
高層ビルなどを設計するときは、建物の中だけでなく、周辺にビル風が起きないかなども確かめる必要があります。そこで使われるのが、CFD(数値流体力学)による風環境シミュレーションです。
しかし従来は、周辺市街地の3Dモデル作成や解析条件の設定などに専門知識が必要で、設計者が案を変えるたびに気軽に解析するのは困難でした。
このお困りごとに挑んだのが大林組です。同社は、設計者自身が建物による風や景観などの影響を予測・評価できる環境設計プラットフォーム「ArchiPALETTE(アーキパレット)」を開発。第1フェーズとして風環境CFDを搭載しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
PLATEAUを入力データに
使うのです。(大林組のプレスリリースはこちら)
これまで大変だった街並みの3Dモデル作成は、設計者がWebブラウザー上で解析エリアを指定するだけです。
すると、システムが国土交通省が主導する3D都市モデル「PLATEAU(プラトー)」を自動取得します。そして大林組独自の形状処理技術により、シミュレーション用3Dモデルへ自動で最適化します。
いわばPLATEAUという「街の3D地図」を、風環境CFDが計算しやすい形に自動調理するわけです。PLATEAUを単に見るのではなく、建築設計の計算材料として使うところがポイントです。
その後は気象データと組み合わせた条件設定から解析、可視化までを全自動で処理します。結果はフォトリアルな3D地図上に表示され、周辺市街地を含めて風の流れを視覚的に確認できます。
さらに注目したいのが、解析スピードです。
約500倍に高速化
しました。
大林組は独自のビッグデータ処理技術とクラウド上で高性能コンピューターを使う「クラウドHPC」技術を使い、複数の風向を同時並列で解析。一般的なパソコン1台なら約1~2カ月かかる計算を、約2~3時間に短縮したのです。風洞実験との比較でも十分な精度を確認しています。
この差は、単なる高速化以上の意味を持ちます。数時間で結果が出れば、「建物を少し動かす」「低層部の形を変える」といった案を設計途中で繰り返し試せます。
つまり風環境CFDが、設計案が固まってから性能を確認する「チェックの道具」から、建物の形そのものを考える「設計の道具」へ近づくのです。
大林組は今後、ArchiPALETTEを自社の設計施工プロジェクトへ標準導入するとともに、風環境や景観に加えて、日照や屋外快適性などにも対象を広げます。さらに過去データをAIに学習させ、環境予測を高速化する計画です。
【イエイリの建設DX先読み】
ArchiPALETTEの登場で、建築設計者の守備範囲も広がりそうです。構造設計の分野では、構造解析結果から建物の形をデザインする手法が既にかなり使われています。
それと同じように、環境解析を設計者自身が回せるようになれば、「風が形を決める建築」「日射が形を決める建築」「人の快適性が形を決める建築」 がもっと増えてきそうですね。





















