管理人のイエイリです。
建物や橋、道路などを造る前に欠かせないのが、地面に細い孔を掘って地下の地層や硬さを調べるボーリング調査です。
ところが、この仕事には夏場ならではの大きなお困りごとがあります。オペレーターはボーリング機械の近くで、機械の運転や施工状況の確認を続けなければならないため、炎天下では身体的な負担が大きく、熱中症対策も欠かせません。
さらに地中は直接見えません。掘進の速度やロッドにかかる荷重、送水の状態などを見ながら、その時々の地盤に合わせて操作するため、熟練技術者の経験や判断に頼る場面も多いのです。
この二つの課題に挑んだのが、応用計測サービスと応用地質です。両社は、既存のボーリング機械に後付けできる遠隔・自動制御システムを使った自動ボーリング技術を開発しました。
ナ、ナ、ナ、ナント、
涼しい部屋から遠隔操作
できるのです。(応用地質のプレスリリースはこちら)
このシステムを使うと、ボーリング地点から離れた室内やクルマの中など、涼しい場所から施工状況の監視や操作が行えます。
仕組みは、まずボーリングマシンに各種センサーを取り付け、掘削中の状態をリアルタイムで数値化します。
ポンプ部では送水圧と送水流量を計測し、スピンドル部では上下の油圧、掘進速度、ロッド回転などを取得します。さらに変位センサーや光検出器などを組み合わせ、取得したデータをデータロガーに集めます。
操作画面上では、先端深度や先端荷重、掘削速度、回転数などを数値やグラフで確認できるので、オペレーターは地下で起きていることをデータで見ながら操作できます。
これらのデータはリアルタイムで解析され、地盤が柔らかい部分では、効率的に掘進できる「速度制御」を行い、地盤が固くなってくると「荷重制御」に自動的に切り替えて、安定的に掘進できるように自動制御を行います。
この自動化が、ボーリングマシンの遠隔操作を実現した大きなポイントと言えそうです。
つまり、センサーで状態を測る→データを表示・解析する→油圧を制御して掘る→再びセンサーで状態を測る、というフィードバック制御を繰り返しながら掘り進むわけです。
実証実験では、掘進速度の安定を優先する制御と、先端荷重の安定を優先する制御の結果も比較されています。地盤の状態が変われば必要な操作も変わりますが、掘進状態を数字として記録できること自体が、熟練者の経験をデータ化していく土台になりそうです。
今回の技術でもう一つ注目したいのが、
既存機を後付け改造
できることです。
専用の最新鋭ボーリングマシンに丸ごと買い替えることなく、現在使っている機械にセンサー類や自動油圧制御器などを外付けして、遠隔・自動制御に対応したDXマシンに生まれ変わらせます。
応用計測サービスと応用地質は、多様なメーカーや機種への対応が可能としています。ただし、一部メーカーの機種では、油圧制御のために付属装置の加工が必要とのことです。
応用計測サービスと応用地質は今後、実際の調査現場で検証と改良を重ねながら導入拡大を進めるとともに、施工データの蓄積・活用によって、ボーリング施工の標準化、省人化、技術継承を進める方針です。
今年の猛暑には間に合わなかったとしても、来年以降の夏には、炎天下のボーリング機械の横に人がずっと張り付く光景が少しずつ変わっていくことを期待したいですね。
【イエイリの建設DX先読み】
この技術が実用化されると、若手技術者が現場を担当し、ベテランが遠隔地から複数現場を支援したり、過去の施工データをもとに機械側が適切な掘進条件を提案したりする、人機一体型のボーリング施工へ発展しているかもしれません。
さらにボーリング作業を繰り返していくうちに、地盤条件に適した掘進制御のデータが次々に蓄積されます。そこに採取したコアや地質判定の結果をひも付けていけば、これまで熟練技術者の頭や手の感覚の中にあった「この地盤ならこう掘る」というノウハウを、技術伝承のデータとして残せる可能性があります。
酷暑対策を目的とした遠隔化が、ボーリングマシンにまで広がりを見せ、さらに熟練技能のデータ化や地質調査の省人化へとつながる。そんな発展が楽しみな技術です。























