管理人のイエイリです。
災害復旧現場や崩落の恐れがある場所、重機が動き回る施工エリアでは、オペレーターが建機に乗り込むこと自体がリスクになることがあります。とはいえ、バックホウや油圧ショベルを動かすには、やはり人による操作が必要です。
これまでは、宅配便で現場に送って組み立てられる簡易遠隔操縦装置「ロボQS」のように、既存のバックホウを遠隔操作できる装置が活躍してきました。人間は安全な場所にいて、建機だけを危険な現場に入れる。まさに「人間の手を遠くに伸ばす」技術です。
しかし、建設現場の大きなお困りごとである熟練オペレーター不足は、人間が遠隔地から操縦する仕組みだけでは、なかなか解決できません。
この問題に、新しいアプローチで取り組んでいるのが、安藤ハザマ(本社:東京都港区)と神戸市立工業高等専門学校(神戸高専、所在地:兵庫県神戸市)です。
ナ、ナ、ナ、ナント、
フィジカルAI付き人型ロボ
による建機操作の共同研究に乗り出したのです。(安藤ハザマのプレスリリースはこちら)
両者は、建設工事へのフィジカルAI活用を目指し、2026年4月から本格的な実証を開始しました。第一歩として取り組むのが、ヒューマノイドロボットによる大型油圧ショベルの自動操作です。
AIが運転する自動運転車は、車の中にAIや制御装置を組み込んで走ります。一方、今回の研究は、人型ロボットが運転席に座り、建機を操作するイメージです。既存の建機を「丸ごとAI建機」にするのではなく、人間の代わりにロボットを乗せる発想なのです。
フィジカルAIとは、センサーなどで把握した現実世界の状況をもとに、物理的なロボットを制御する技術です。
神戸高専 システム情報工学科 田原研究室では、これまでも土工作業シミュレーションを活用した建機自動化AIの開発や、ヒューマノイドロボットを活用した小型電動ショベルの自動化に取り組んできました。
今回の共同研究では、安藤ハザマの建設機械自動化の知見と、神戸高専のAIロボティクス研究を組み合わせます。
建機を無人化するロボQSは、既存のバックホウに装置を取り付け、操作用無線機で人間が遠隔操作する仕組みです。
これに対し、フィジカルAIを活用したヒューマノイドロボットは、人間が一つ一つ操作するのではなく、ロボット自身が現場の状況を把握しながら建機を操作する方向を目指します。
ロボQSが「人間の手を遠くに伸ばす技術」だとすれば、こちらは
AIが人間の目と判断
の役割を担う技術と言えるでしょう。
建設現場は、地盤の硬さ、周囲の作業員、資材の置き場、ダンプの到着、天候など、状況が刻々と変わります。従来の自動化技術では難しかった、現場状況に応じた臨機応変な判断を伴う作業にも、フィジカルAIなら対応が期待されますね。
将来、ヒューマノイドロボットが大型油圧ショベルを自動操作できるようになれば、人が危険な場所に入らずに済むだけでなく、熟練オペレーター不足を補う手段にもなりそうです。
さらに安藤ハザマと神戸高専は、今後、大型油圧ショベル以外の建設機械の自動化や、一般的な有人作業のヒューマノイドロボットへの置き換えも進めるとしています。
【イエイリの建設DX先読み】
今回のフィジカルAIは、AIが図面や写真を読む技術を、さらに「現場で建機を動かす技術」へと発展させるものです。将来は、ICT建機の3Dマシンコントロールのデータ設定や、建機周辺の危険予知、施工後の出来形管理なども、自動的に行えるようになるかもしれません。
また、朝礼で一日の作業内容を説明しておけば、積み込みが終わったら別の場所へ移動して掘削を手伝う、ダンプ待ちの間に近くの整地を行う、といった具合に、現場の“空気を読める建機”、“気が利く多能工”として働いてくれそうです。



















