管理人のイエイリです。
河川やダム、海岸を3D測量するとき、陸上部分はドローンなどによってかなり効率よく測れるようになりました。ところが、水際から先へ進むと事情が変わります。
浅くて透明度の高い水ならグリーンレーザーで水底まで計測できますが、水が濁っていたり、水深が深かったりすると、レーザーが届きにくくなり、3次元点群に“穴”が開いてしまうことがあります。
堤防や河原はきれいに3D化できたのに、川底だけデータがない――。BIM/CIMや維持管理、防災で地形を一体的に扱いたい技術者にとって、これはなかなか悩ましいところです。
こうした水中測量のお困りごとに対し、Terra Drone(テラドローン)(本社:東京都渋谷区)が導入したのが、自動航行ボート「T-Boat 500」とマルチビームソナー「SeaBat T20」です。
ナ、ナ、ナ、ナント、
水底を音波で3D測量
するのです。(Terra Drone株式会社のプレスリリースはこちら)
マルチビームソナーは、レーザー光ではなく音を使って水中を測る装置です。ボートに搭載したソナーから水底へ向けて扇状に音波を照射し、その反射をとらえることで、広い範囲の水底地形を一度に計測します。
イメージとしては、ドローンが上空からレーザーで地面をなぞる代わりに、ボートが水面を進みながら、その下の川底や海底を音波でなぞっていく感じです。
この方法なら、従来のUAVグリーンレーザーでは計測が難しかった濁りの強い水域や、水深の深い場所でも、詳細な3次元点群データを取得できます。
「T-Boat 500」は、人が入りにくい場所や通常の船舶を持ち込めない水域でも使えます。岸などからリモコン操作でボートを走らせ、「SeaBat T20」で水底を計測することで、安全かつ安定したデータ取得を狙います。Terra Droneは2026年9月から本格運用を始める予定です。
しかし、今回の導入で本当に面白いのは、「ドローン会社がボートを導入した」ということだけではありません。
Terra Droneはこれまで、陸部ではUAV赤外線レーザー、浅い水域ではUAVグリーンレーザーによる3次元計測サービスを提供してきました。そこへ、水深部や濁水を得意とするマルチビームソナーが加わったのです。
つまり、現場の水深や濁度、構造物の有無などに応じて最適なセンサーを使い分けながら、
陸から水底までワンストップ
で3次元点群を取得できる体制になったわけです。
例えば河川なら、堤防や河原はUAV赤外線レーザー、浅瀬はUAVグリーンレーザー、そして深い場所や濁った水域は「T-Boat 500」と「SeaBat T20」で計測する。こうすれば、堤防から川底までを連続した3D空間として扱いやすくなります。
これは「一つのセンサーですべて測る」という考え方とは逆です。それぞれのセンサーの得意分野を組み合わせ、3Dデータの空白をなくしていく発想なのです。
ここでTerra Droneの歩みを見ると、ちょっと面白いものがあります。創業者の徳重徹氏は2010年にEV事業を展開するTerra Motorsを創業し、2016年には低空圏のプラットフォーマーを目指してTerra Droneを創業しました。
EVで「陸」、ドローンで「空」、そして今回の自動航行ボートで「水上」。創業者の事業遍歴という視点で見ると、ついに陸・空・水上の“三軍”がそろったようにも見えます。
ただ、建設DXの視点でより重要なのは、乗り物の種類ではありません。「ドローン会社だから空から測る」のではなく、必要な3Dデータを取るためなら水面からも測る、という発想です。
今回のボートは、ドローンだけでは埋められなかった“水底の3D空白地帯”を埋める最後のピースと言えそうです。
Terra Droneは今後、計測精度のさらなる向上と解析技術の高度化を進め、幅広い分野でソリューション提供を進めていく方針です。
【イエイリの建設DX先読み】
今後の3D測量では、「何の機械で測ったか」という技術側の発想よりも、「必要な範囲の3Dデータが途切れずにそろっているか」という、利用者側の成果が重要になってきそうです。
地上から水底まで対象がまたがる河川やダム、港湾などでは、ドローン、無人ボート、地上型レーザースキャナーなど、複数の移動体とセンサーで取得した点群をクラウド上で統合する使い方が広がるかもしれません。さらにBIM/CIMやデジタルツインとして時間軸でも比較できるようになれば、洗掘や堆積、護岸の変状などを継続的に追跡する用途にも発展しそうです。
Terra Droneは「ドローンを飛ばす会社」から、陸上から水底まで“地球表面を測る会社”へと領域を広げつつあるように見えます。3~5年後には、現場側が測量機器を意識することなく、「この範囲を丸ごと3D化してほしい」と頼めば、現場条件に応じた無人機とセンサーの組み合わせでデータが出来上がる。そんな測量サービスが当たり前になるかもしれません。





















