管理人のイエイリです。
新宿駅のような巨大ターミナルでは、地上の道路、駅構内、地下街、地下通路、周辺ビルが複雑につながっています。
都市計画や駅改良工事の担当者にとって悩ましいのは、出入口を一部閉鎖したり、地下街で通行止めが起きたりしたとき、どの階段や改札に人が集中するのかを予測しにくいことです。
さらに災害時に鉄道が止まれば、駅周辺には大量の帰宅困難者が発生します。数万人規模の人々が、どの出口から地上に出て、どの方向へ流れていくのかを把握するのは、なかなか容易ではありません。
そんなお困りごとに応えるシステムを、スペースデータ(本社:東京都港区)が公開しました。その名も「People Flow Simulator」です。
都市内の様々な場所を移動する数万人の人の流れを、
ナ、ナ、ナ、ナント、
人流デジタルツイン
としてシミュレーションできるのです。(スペースデータのプレスリリースはこちら)
例えば、東京の新宿駅とその周辺エリアを対象に、駅構内や地下街、周辺ビルの各フロアまでを一体の3D都市空間として再現。その中を、数万体規模の歩行者エージェントが移動するという、大規模な人流シミュレーションも行えるほどです。
画面上では、屋上から地下4階までフロアを切り替えながら、人流を確認できます。地上1階では約6.4万人相当、屋上階では約4500人相当というように、階ごとの人流密度も変えています。
地下を表示する際には地表を半透明化し、地下構造を立体的に確認できます。新宿駅周辺を対象にしたシミュレーション例では、実在する街路やコンコースを結ぶ17本の回廊を設定し、歩行者エージェントが約2m/sの物理歩行速度で移動します。
3D表示、ワイヤーフレーム表示、地下の人流を横から見る断面ビューなども切り替えられるので、平面図では分かりにくい地上・地下・屋内のつながりを、かなり直感的に把握できそうです。
人流シミュレーションというと、フォーラムエイトの「buildingEXODUS」のように、建物内で避難者一人ひとりが出口へ向かうまでの挙動を詳細に解析するソフトを思い浮かべる方も多いでしょう。
一方、今回の「People Flow Simulator」は、少し性格が違います。狭いドアの前で人がどう詰まるかを細かく見るというより、駅、地下街、周辺ビル、道路をまたいで、数万人規模の人の波が都市空間の中でどう流れるかを3Dで可視化するものです。
言い換えれば、「建物を出た後の都市人流」を見る技術と言えます。
興味深いのは、国土交通省の3D都市モデル
PLATEAUとの連携
も可能なことです。
上記のデモでは、「PLATEAU」の建築物モデルや地下街3Dモデルのほか、国土地理院の標高データ、屋内地図・建物データ、衛星画像、SNS由来の実測人流サンプルなどを統合しています。
さらに、東側出入口の閉鎖、西側出入口の閉鎖、バリアフリー動線の制約、テロなどによる地下空間の局所的な被害地点の設定といった遮断シナリオも切り替えられます。
今回、シミュレーションに使った人流データは、公開統計の傾向をもとに生成した推計データであり、リアルタイムの実測人流そのものではありません。
今後、通信キャリアの人口動態データや交通系ICカードの乗降データなどと連携すれば、より現実に近い人流デジタルツインへと発展する可能性があります。
駅改良工事中の仮設動線、地下街の浸水時の通行止め、大規模イベント後の群集誘導、駅前再開発での回遊性検討など、建設・都市開発・防災の現場で使える場面は多そうですね。
【イエイリの建設DX先読み】
これまでBIMやPLATEAUは、「都市や建物を3Dで見える化する」こと自体が注目されてきました。しかし、そこに人流という“動き”のデータが加わると、都市デジタルツインは一気に実務で使える道具へと進化します。
将来は、駅改良工事のステップごとに人流を確認したり、災害時の帰宅困難者を広域で誘導したりする「人流との4Dシミュレーション」まで含めて、都市や駅を計画する時代に入っていきそうです。




















