戸田建設が爆薬装填をAI化! 切羽で“現物合わせ”する新手法とは
2026年9月7日

管理人のイエイリです。

山岳トンネルを発破で掘るとき、切羽に多数の装薬孔を削孔し、その中に爆薬を詰めます。

この装薬作業は、作業員が岩塊の落下などの危険がある切羽近くまで行い、孔を確認しながら行う必要がありました。

そこで戸田建設(本社:東京都中央区)は、爆薬装填ロボット「To-RIGGER(トリガー)」を開発しました。

切羽に開けられた装薬孔に、

ナ、ナ、ナ、ナント、

AIがホースを自動挿入

し、爆薬を流し込むことに成功したのです。(戸田建設のプレスリリースはこちら)

爆薬装填ロボット「To-RIGGER」の仕組み(以下の写真、資料:戸田建設)

爆薬装填ロボット「To-RIGGER」の仕組み(以下の写真、資料:戸田建設)

To-RIGGERは、コンピューター制御のジャンボドリルと爆薬装填ホース自動挿入装置を連携させたシステムです。

開発には、UP設計コンサルタント(本社:大阪市港区)、HCI(本社:大阪府泉大津市)、虎乃門建設機械(本社:東京都渋谷区)が協力しました。

まず、削孔時に記録した「孔口」と「孔尻」の3次元座標を使って、コンピュータージャンボのブームを孔口付近まで自動移動し、装薬孔の軸方向に合わせます。

その先では、ラインスキャナーで岩盤面までの距離を連続計測し、装薬孔を可視化します。普通のカメラのように色で見るのではなく距離情報を使うため、トンネル内の照度や岩盤の色調の影響を受けにくいのが特徴です。

AI画像処理技術で装薬孔の中心位置を検出すると、AIロボットアームが爆薬装填ホースを孔口へ運びます。さらにアーム先端の力覚センサーが孔壁との接触を検知し、位置を微調整します。挿入後は、送り装置のローラーでホースを孔の奥まで送り込みます。

爆薬装填ホース自動挿入装置の概要。ラインスキャナーで装薬孔を可視化し、AIロボットアームでホースを挿入する

爆薬装填ホース自動挿入装置の概要。ラインスキャナーで装薬孔を可視化し、AIロボットアームでホースを挿入する

To-RIGGERはこのほど、東海北陸自動車道(4車線化)袴腰トンネル工事で現場実証が行われました。

建設DX的に興味深いのは、CNC(コンピューター数値制御)の工作機械にはない、

“現物合わせ”をAIで

行っていることです。

CNC加工機なら剛性が高いため、座標データがあれば、固定した材料に対して座標通りに工具を動かせます。

一方、トンネル用のドリルジャンボには長いブームや多関節機構があり、自然の岩盤などを相手にするため、座標と実際の先端位置との間に誤差が生じる要因は多くなります。

そこでTo-RIGGERは削孔座標だけで最終位置を決めず、ラインスキャナーと力覚センサーで実物を確認しながら、ホースを合わせ込む仕組みになっています。

戸田建設は2025年に模擬岩盤で、通常孔や斜め方向の孔などにホースを自動挿入できることを確認していました。今回は実際の切羽でも、装薬孔の検知からホース挿入までを実証しました。

模擬岩盤を使った検証実験。異なる角度の装薬孔にホースを自動挿入した

模擬岩盤を使った検証実験。異なる角度の装薬孔にホースを自動挿入した

山岳トンネルの爆薬装填では、前田建設や大林組、鹿島なども遠隔化・自動化を進めています。今回の戸田建設の特徴は、ラインスキャナーとAIロボットアームを使い、実切羽で装薬孔を認識してホースを自動挿入した点にあります。

今後はTo-RIGGERの高速化や操作性向上を進めるとともに、「現場製造バルクエマルジョン爆薬」や「無線発破システム」と連携し、発破作業全体の完全自動化を目指します。その先には、山岳トンネル施工を遠隔化・自動化するシステム「ToP-NATM」の実現があります。

【イエイリの建設DX先読み】

今回のTo-RIGGERで注目したいのは、3D座標だけですべてを動かそうとせず、最後はセンサーで現物を見て補正することです。

BIM/CIMや3D設計データを使う自動施工でも、現場には地盤や岩盤の形、機械姿勢、たわみなどの不確定要素があり、製造業で使われるCNC加工機とは違った難しさがあります。

3D座標で大きく位置決めし、LiDARやカメラ、力覚センサーなどで現物との差を測って補正する“デジタル現物合わせ”は、建設業ならではの独自技術として発展していきそうですね。

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