事務用機器販売の富士ゼロックス東京、神奈川、多摩の3社(以下、富士ゼロックス首都圏販売会社3社)が首都圏地域で展開している「BIMソリューションパック」は、エーアンドエーのBIMソフト「Vectorworksシリーズ」、EIZOの高性能モニター「FlexScanシリーズ」、そしてレノボ・ジャパンのワークステーション「ThinkStation E31シリーズ」の3つを組み合わせた建築・店舗内装設計向けのソリューション製品だ。各製品は相互の動作確認や調整が行われ、デザイナーの業務の品質や生産性の向上に寄与する。さらに富士ゼロックスのカラー複合機や大判プリンターとの連携でBIMの活用範囲は拡大しそうだ。
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富士ゼロックス東京のショウルームに展示された「BIMソリューションパック」を前に。富士ゼロックス首都圏広域マーケティング部プロダクトマーケティンググループの若林勝彦グループ長(左)と同・中島雄司氏(右) |
小さな設計事務所にBIM導入のチャンスが
「BIMソリューションパック」は、建築設計や店舗内装設計向けに、作業効率やデザイン力の向上を目指す設計事務所が、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を導入しやすくするためにパッケージ化された製品だ。
意匠設計用BIMソフトには使い易いインターフェイスを持ち、そして高品質なデザインが行えるエーアンドエーの「Vectorworksシリーズ」、モニターには色を忠実に再現できるEIZOの高性能モニター「FlexScanシリーズ」、そしてワークステーションには、BIMによる設計やデザインをストレスなく行えるレノボ・ジャパンの「ThinkStation E31シリーズ」という、各分野を代表する製品がパッケージされている。
ユーザーの業務内容やBIMの導入目的に応じて「プロフェッショナルパック」、「レギュラーパック」、「ベーシックパック」と3種類のパックが用意されている。ユーザーのニーズに応じてカスタマイズも可能になっている。
●各パッケージ内容
プロフェッショナルパック | |
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建築意匠設計からインテリア設計、そして造園計画、舞台照明設計、プロダクトデザインに至まで幅広い用途に対応する最上位パッケージ。27.0型モニターとQuadro®2000グラフィックスで3D高品質レンダリングに対応 |
レギュラーパック | |
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快適なBIM設計環境を実現するスタンダードパッケージ。SSD搭載による高速起動ワークステーション、23.0型モニターでワンランク上の性能 |
ベーシックパック | |
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3D作図に最適なエントリーパッケージ。安定稼働の省スペース型ワークステーションと21.5型モニターで使いやすさを追求 ※IFCフォーマットへの対応は、Vectorworks Architectシリーズ以上から |
パッケージ化のメリットは各製品を組み合わせた時にトラブルが起こらないように動作確認が行われていることが大きい。また別々に製品を購入する場合に比べてお得感がある。さらに、富士ゼロックスのカラー複合機や大判プリンターといった事務用機器との連携も考慮されている。
つまり、BIMを導入するだけでなく、設計事務所のビジネスワークフローの中に組み入れて、効率的に作業が行える環境を構築し、業務の生産性向上や今後のBIMの新しい活用を切り開く起爆剤ともなる製品なのだ。
BIMを支える快適なプラットフォーム
「BIMソリューションパック」には、レノボのタワー型ワークステーション「ThinkStation E31」または省スペース型ワークステーション「ThinkStation E31 SFF」が含まれる。「E31 SFF」は筐体の容積が11リットルとコンパクトだが、タワー型の「E31」と同じマザーボードを使用。CPUには最新のインテル® Xeon® プロセッサーE3-1200 v2ファミリーを搭載している。
グラフィックスにはQuadro 600またはQuadro 2000を搭載。BIMソフトでの設計作業に向いた仕様となっている。最上位のプロフェッショナルパックに搭載されたQuadro2000は、高画質の3Dレンダリングにも対応できる。
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レノボのタワー型ワークステーション「ThinkStation E31」(右)と省スペース型ワークステーション「ThinkStation E31 SFF」(左) |
モニターにはデザイナーに定評のあるEIZOの「FlexScan」シリーズが採用されている。サイズは27.0型、23.0、21.5型と大きめだ。EIZOのモニターには広視野角パネルが使われているほか、利用シチュエーションに応じたモニター角度の調整機構や目に優しいノイズレス機構を備えている。そして省エネ性能が高い。長時間パソコンと向き合うデザイナーに最適な設計環境を提供する。
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デザインに忠実な色を再現するEIZOの高性能モニター「FlexScanシリーズ」 | ||
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富士ゼロックスのカラー複合機「DocuColor 1450GA」(左)。印刷したパースの色味は、モニターの表示と同じになるように調整されているので生産性が高い(右) |
また、「BIMソリューションパック」は、図面の作成にもフルに活用できる。図面を富士ゼロックスの広幅複合機「DocuWide 3035」で出力することにより、繊細な線や文字、ハッチングなどもくっきりと印刷できるほか、大量の図面出力にも短時間で対応できる。
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広幅複合機「DocuWide 3035」による大判図面の出力(右)。細かい線や文字、ハッチングもくっきりと印刷されている(右) |
フェース・ツー・フェースでのBIM対応
富士ゼロックス首都圏販売会社3社は2012年11月から首都圏限定でこのBIMソリューションパックを展開してきた。その結果、テーマパークやアミューズメントパーク、展示会、商業施設などから、3次元仮想空間まで、さまざまな商空間をフィールドとする企画プロデュース企業、ジィーアンドアールなどに早速、導入され、性能や信頼性、安心感などに対してユーザーからの高い評価を得た。
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ジィーアンドアールへのBIMソリューションパック導入に中心的役割を果たした空間デザイナーの石井潔氏(左)。同社が作成した展示会のパースイメージ(右) |
これまでのBIMは、大手ベンダーがセミナーやウェブサイトなどで大規模なプロモーションを展開し、ユーザーへの導入を図るという方法が多かった。一方、富士ゼロックスの場合は、コピー機や複合機をはじめとした事務機器の営業網を通じて、中小設計事務所に対してBIMの導入を提案していく点がこれまでと違うところだ。
BIMソリューションパックは、BIMソフト、高性能モニター、ワークステーションという専門性の高い製品を含むため、営業担当者にはユーザーの要望に応じてカスタマイズを行ったり、各ベンダーに対する質問を取り次いだりといった専門性の高さが要求される。
富士ゼロックスでは営業マンと共に最適なシステム構築を支援する「ソリューションコーディネーター」がお客様のご要望や課題に合わせて最適な製品・サービスを提案する体制を整えている。
もはやBIMは特別なツールではなく、日常業務で使う複合機やプリンターのメンテナンスなどの機会に富士ゼロックスの担当者が導入の相談に乗り、運用時も業務を効率するためのアドバイスを「フェース・ツー・フェース」で行ってくれる時代になりつつある。これまでBIM導入のきっかけがなかった事務所にとっては、力強い味方だ。
デジタルファブリケーションへの展開も
富士ゼロックス東京のショウルームには、複合機や大判プリンターはもちろんのこと、BIMソリューションパックで「デジタルファブリケーション」を実践するための機器がずらりと並んでいる。
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富士ゼロックス東京のショウルーム。「BIMソリューションパック」と連携し、BIMによる「デジタルファブリケーション」を実践できる機器が並んでいる |
例えば、カラー複合機「DocuColor 1450GA」は建築模型に使われるような厚紙のカラー印刷にも対応している。そこで、建物のテクスチャー付きの展開図をカラー印刷した後、「カッティングプロッター」というマシンを使って輪郭や窓枠、ルーバーなどを細かく切り抜く。これを組み立てると、短時間で精巧な建築模型が作れるだろう。
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カッティングプロッターと作成したお菓子のパッケージ(左)。パッケージを展開したところ(右)。建築模型の作成にも活用できそうだ |
また、立体転写プリンターという機器を使うと、建物のCGパースをマグカップやワインボトルなど曲面のある物体にプリントできるほか、缶バッジ作成キットを使ってBIMモデルの画像入りバッジを作ることができる。これらは施主へのオリジナルギフトや見学会やイベントなどでの手作りノベルティーとして活用でき、BIMの活用範囲をこれまでになかった範囲まで広げるだろう。
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曲面にカラー画像を印刷できる立体転写プリンター(左)。缶バッジ作成キット(右)。施主へのオリジナルギフトやイベント用のノベルティー作成にもBIMデータを有効活用できそうだ |
「BIMソリューションパック」は、BIMソフト、モニター、ワークステーションが三位一体となって中小の設計事務所やデザイナーが気軽にBIMを導入できるだけでなく、富士ゼロックスの事務用機器やソリューション・コーディネーターの専門性とコラボレーションすることで業務効率の改善や新しいBIM活用の道を開くものになりそうだ。
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