2人で始めたRevitが、設計全員と施工現場へ! 100億円規模の地域建設会社に学ぶ「定着の5条件」(オートデスク)
2026年8月19日

「BIMは大手にしかできない」――そんな常識は変わり始めている。売上高100億円台の地域建設会社であるタカヤは、2人による手探りの導入から、設計グループ全員、社内レビュー、施工計画へとBIM活用を広げた。美保テクノスも、BIMを設計の遅れの挽回や施工準備の省力化、手戻り防止につなげている。地域建設会社は限られた人材と予算の中で、BIMをどう導入し、社内で回していけばよいのか。その成功の秘訣を探る。

BIMで施工手順や工具の干渉まで事前検証した、美保テクノスの木造モックアップモデル

BIMで施工手順や工具の干渉まで事前検証した、美保テクノスの木造モックアップモデル

 2人の手探りから始まったタカヤのBIM

岩手県を拠点とするタカヤは、売上高150億~200億円、従業員約215人の地域の総合建設会社だ。BIM活用は、2017年に始まった。通常業務と兼務しながらAutodesk Revitを操作したものの、思うように進まず、何度も従来の2D CADへ戻った。

「通常業務を抱えた設計者が兼務で取り組んだため、目の前の仕事が忙しくなると、使い慣れたJw_cadへ戻ってしまいました。BIMの成功事例を探しても、大手企業の話が中心で、自社と同規模の会社がどう定着させたのかは分かりませんでした」とタカヤ盛岡本社 建築事業部 建築設計グループ主任の安東由吏江氏は振り返る。

転機は2019年に訪れた。設計との兼務でなく、1人のBIM専任担当者を置いた2人体制でのBIM推進チームが立ち上がったのだ。BIMコンサルタントのSEEZから支援を受けたことで、BIM導入は急速に進み始めた。

基本設計、実施設計に使うテンプレートやファミリを整備し、実案件で不具合を見つけては修正した。地味な作業であるが、「何のためのパラメータか」「次工程へどの情報を渡すか」を考える過程が、設計業務の標準化につながっていった。

タカヤのBIM推進メンバー

タカヤのBIM推進メンバー

 客先、社内、施工現場へと広がったBIM活用

その後、RevitモデルをリアルなCGパースが作れる「Twinmotion」へ連携し、家具や人を配置した動画を顧客提案へ活用し、BIM活用は顧客へのプレゼンテーションを変えた。

その一方、社内ではFormaを使ってモデルレビューや指摘事項の管理を行い、会議前に問題を共有するなど、チームとしてのBIM活用が進み、打ち合わせや議事録作成の時間も減らした。

今はRevitモデルを社内で共有しながら設計を進めていく

今はRevitモデルを社内で共有しながら設計を進めていく

その裏には、地道なネットワーク作りもあった。「BIMを使っている地方の建設会社があると聞けば、導入や活用の方法について教えを請いに行きました。相手も同規模の会社なので、大手ゼネコンとは違う工夫や努力が感じられて参考になりました」(安東氏)。

アドオンソフト「K-D2 PLANNER」による施工シミュレーション

アドオンソフト「K-D2 PLANNER」による施工シミュレーション

さらに2025年、施工経験者がBIM推進チームへ加わると、鉄骨と設備の干渉チェックや、クレーン作業をシミュレーションするコベルコ建機のアドオンソフト「K-D2 PLANNER」を使ったクレーン配置や吊り荷重量、作業半径の検討へと、現場での施工までBIMの用途が広がった。

「現場所長からは『鉄骨を作る前に問題を可能な限りつぶせた』『次の現場でもフル活用したい』とのありがたい声をもらいました。施工検討会も、その場で施工方法を考える会議から、K-D2 PLANNERなどで事前検討した内容を確認する場となり、施工計画が前倒しできました」とタカヤ盛岡本社 建築事業部 工務本部 建築設計グループマネージャーの伊藤慎吾氏は語る。

タカヤのBIM導入年表

タカヤのBIM導入年表

 美保テクノスは「プロジェクト加速エンジン」として活用

鳥取県米子市に本社を置く美保テクノスは、売上高119億円、従業員225人の地域ゼネコンだ。 約20年前にRevitを導入した地方BIMの老舗企業だ。

同社は今、海外にもBIM活用の拠点を広げるまでになった。国内のオフィスで12人、ベトナムのオフィスで12人の計24人でBIM活用を支援し、設計施工案件ではRevitを標準的に使っている。

鳥取県米子市にある美保テクノス本社

鳥取県米子市にある美保テクノス本社

ベトナム・ホーチミンオフィスのBIMスタッフ

ベトナム・ホーチミンオフィスのBIMスタッフ

その代表例が、地元の建材商社であるミヨシ産業株式会社の本社の移転新築工事だ。延べ床面積約3000平方メートル、4階建ての木造オフィスで、テーマは「木造」「ZEB」「BIM」だった。美保テクノスは、このプロジェクトを設計途中から支援した。

美保テクノスが参加したとき、4階建ての純木造建築という国内での事例も少なく難易度の高い建築物ということもあり、設計進捗が思うように進んでいない状況であった。

「我々がとった方法は、設計事務所が作成する図面を次々とパース・アニメーションにして、設計の進捗を可視化することでした。その結果、設計に不足している情報を洗い出し、発注者と設計者の合意形成を早めることができました。BIMを『プロジェクト加速エンジン』として活用したのです」と、同社BIM戦略部の石川祥稀氏は語る。

ミヨシ産業本社オフィスのCGパース

ミヨシ産業本社オフィスのCGパース

施主のミヨシ産業は、3DCADで木造軸組構造の設計を行い、コンピューター制御によるプレカットも行う企業だ。そのため、新本社オフィスも木造のプレハブ構造を全面的に採用している。

そこで施工段階では、木材一本、パネル一枚、ボルト一本までRevitで詳細にモデル化し、プレカット加工や積算、干渉確認へと展開した。

 BIMでビス打ち施工を大幅に簡略化

CLTパネルを柱や梁に固定する際、パネル1枚に400~500本のビスを打つ。この作業にはビス位置を示す「型板」と呼ばれる実物大テンプレートを使う。施工の生産性を上げるために、この型板の数が問題になった。

というのもRevit上に全ビスを配置して集計すると、当初は施工用の型板が116種類も必要になることが分かったからだ。こんなに多数の型板を製作したり、現場の作業でこれほど多くの種類の型板から選び出したりして使うのは困難に等しい。

そこで設計者や施工JVと型板の問題を共有し、施工方法を再検討したところ、最大サイズを基準とする3種類の型板へ集約できた。これだけで施工の生産性は大幅に高まった。

さらに、斜め打ちビスを施工できるか確認するため、インパクトドライバーまでRevitファミリとして作成し、工具が周辺部材へ干渉しないかを検証した。

柱や梁にCLTパネルをビス止めする「型板」は116種類から3種類にまで減らすことができ、生産性が大幅に向上した

柱や梁にCLTパネルをビス止めする「型板」は116種類から3種類にまで減らすことができ、生産性が大幅に向上した

ドライバー作業の干渉チェック

ドライバー作業の干渉チェック

組み立て順序をアニメーション化するとともに、実物大のモックアップも製作して約30~40人の職人と共有した。複雑な施工を紙図面だけで説明するのではなく、BIM図面に基づく動画を共通言語に変えたのである。

職人を交えてのアニメーションによる施工手順の確認

職人を交えてのアニメーションによる施工手順の確認

実物大モックアップも作成し、現場作業を事前に確認した

実物大モックアップも作成し、現場作業を事前に確認した

美保テクノスはBIMの効果を「目立つBIM」「稼ぐBIM」「役に立つBIM」と表現する。その効果は人材確保にも表れ、ここ5年ほど毎年1~2人の新卒社員をBIM戦略部に迎えているほか、外国人材も毎年2~8人、獲得している。

 成功の鍵は、専任者と「相談できる相手」

地方建設業であるタカヤと美保テクノスの歩みは、BIMが「大手企業だけの先端技術」ではなく、人手不足の中でも地域で建物をつくり続けるための経営基盤になり得ることを示している。

両社の経験に共通する成功条件は五つある。

第一は、何のためにBIMを使うかを先に決めること。干渉チェック、顧客提案、施工計画など、成果の見えやすい用途から始めるべきである。

第二は、一人でも専任者を置くこと。兼務だけでは日常業務が優先される。

第三は、経営者が成果を急ぎすぎないこと。テンプレート、教育、社内ルールの整備には時間がかかる。

第四は、全員を万能なBIM人材にしないこと。設計、施工、モデリングの役割を分ければよい。

そして第五は、自社だけで抱え込まないことである。同業他社、コンサルタント、ソフトウェア企業、協力会社など、困ったときに相談できる相手を持つことが、継続の力になる。

 生成AIの普及でBIMのハードルも下がる

「建設会社におけるBIMの代表的な用途は、長年にわたり『干渉チェック』『施工シミュレーション』『発注者へのプレゼンテーション』の三つでした」と早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科准教授の石田航星氏は言う。

クラウドでのBIM活用が普及した今、BIMの導入方法も多様になった。モデルを作成する設計者やBIM担当者だけがRevitを使い、発注者や協力会社はブラウザーで閲覧する方法もある。

「まずは効果を確認しやすい用途から始めればよく、設計、施工、維持管理を最初から一気にBIM化する必要はありません」(石田氏)。

また生成AIの普及によって、APIやアドインを利用してBIMモデルから必要な情報を簡単に取り出せるようにもなり、自社向けツールの開発やBIMモデルの施工段階での活用も、以前より取り組みやすくなった。

クラウドやWebブラウザーでBIMモデルを幅広く共有、活用する仕組み

クラウドやWebブラウザーでBIMモデルを幅広く共有、活用する仕組み

「設計者や施工管理者全員を、高度なBIMモデラーに育てる必要はありません。設計者は設計判断、施工管理者は工程や安全の判断を担い、モデルの作成・修正はBIMオペレーターが支援する分業を行う方が実践的です」(石田氏)。

人手不足への対応とは、一人にあらゆる能力を求めることではなく、専門性に応じて仕事を組み替えることなのだ。

 オートデスクは地域建設業のBIMを支援

BIMを導入しないことが、直ちに会社の衰退を意味するわけではない。しかし、人手不足が年々厳しくなる今、複数図面の修正、干渉の目視確認、施工手順の説明、議事録の作成を人手だけで続ければ、現場と技術者の負担は重くなる一方だ。

BIMを業務に定着させれば、設計情報を提案や施工へ再利用し、問題を着工前に発見し、熟練者の知識を若手や協力会社へ視覚的に伝えられるなど、様々な省人化や時短の方法が見えてくる。

そこでオートデスクは、RevitやFormaをはじめとする技術基盤に加え、今後、先行企業や専門家、導入支援パートナーと地域建設会社が交流し、知見を共有できるコミュニティーづくりを支援していく方針だ。

オートデスクの地域建設業に対するBIM導入支援の例。BIMセミナーなどを開催し、相談や情報交換の場を設けていく

オートデスクの地域建設業に対するBIM導入支援の例。BIMセミナーなどを開催し、相談や情報交換の場を設けていく

BIM導入の第一歩は、大規模なシステム投資ではない。自社の課題を一つ選び、相談できる相手を見つけ、小さな成果を積み重ねることである。自社に合った一歩を、今こそ踏み出す時期に来ているのではないだろうか。

※上記の「地域建設業のBIM活用戦略フォーラム」のアーカイブ動画や資料は、次のリンクからダウンロードいただけます。→ https://www.autodesk.com/jp/campaigns/bim-local-ondemand

【BIM導入について相談する】

オートデスク 建築・土木業界担当アドバイザー
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