竹中工務店が三河安城駅近くで施工中のアリーナ施設の作業所において、図面ナレッジプラットフォーム「BuddyBoard(バディーボード)」を活用している。これまで紙図面に赤ペンを入れていた施工図チェックを、そのままのスタイルでiPadやパソコンに置き換え、関係者で情報共有。さらにAI図面比較機能を利用することにより、修正指示の整理や新旧図面の確認も大幅に楽になった。図面チェック関連業務の時間は約2割短縮されたという。現場の図面DXは、いよいよ次の段階に進もうとしている。
AI図面比較で修正部分を素早く確認
「これまでは旧図面と新図面を見比べて、どこが変わったのかを探す作業が大変でした。BuddyBoardなら、横並びや重ね合わせで変更箇所が分かるので、修正指示を出して図面が戻ってくる2回目からのチェックがかなり速いですね」と、竹中工務店名古屋支店の作業所BIM・ICT担当リーダー、太江慎吾氏はBuddyBoardの図面比較機能を使った感想を語る。
紙ベースの図面修正後の確認では、前回のチェック内容がきちんと直っているか、余計な変更が入っていないかを、人間が目で追う必要があった。そのため図面が何十枚、何百枚にもなると、まさに集中力頼みの“間違い探し”になってしまう。
それがBuddyBoardの図面比較機能によって、変更箇所を素早く確認できるようになった。
修正指示を出して戻ってきた図面を素早く確認するのに役立っているのは、株式会社BuddyBoard(本社:愛知県名古屋市瑞穂区)が開発・販売する図面ナレッジプラットフォーム『BuddyBoard』の『AI図面比較』機能だ。新旧の図面をAIが自動で照合し、変更箇所をハイライト表示する。
この機能が、竹中工務店の作業所で語られていた「2回目からのチェックを速くしたい」というニーズにぴたりとはまる。図面を初めてチェックするときは、ベテランが納まりや考え方まで見て判断するのに対し、修正版図面では、前回の指摘が直っているか、意図しない修正がないかを確認する作業が中心になる。ここでAI図面比較が効く。
「分業ができるようになったのは大きいですね。変わっているところを精度よくハイライトしてくれるので、指摘が修正されているかのチェックは、図面チェックの経験が浅い方でもできる。問題があればBuddyBoard上に雲マークを書いて知らせてもらえる。これができるのは、ちょっと革新的かなと思います」と太江氏は続ける。
こちらの作業所のような大規模プロジェクトともなると、図面の枚数も数十枚~数百枚に及ぶことがある。その時、新旧の対応する図面を探し出すだけでも一苦労することになる。
その点、AI図面比較機能では、数百枚規模の図面一式をまとめて読み込むと、比較すべき新旧図面のページをAIが自動でペアリングし、すぐに並べてチェックに取り掛かれるのもメリットだ。
「意味のある変更」だけをスピーディーに確認
単純に図面同士を比較したときに困るのは、図面全体の位置が少し動いたり、寸法線の位置を見やすく整理したりしただけでも、大量の差分が出てしまうことだ。実務者が確認したいのは、見た目のズレではなく、施工や設計に影響する、「意味のある変更」がきちんと直っているかである。
AI図面比較機能では、図面全体の位置の移動やスケールのズレについて自動で補正を行うことで解消することができる。
また将来的には、寸法線や注釈の移動というような「意味のない変更」差分も無視して比較できるようになる予定だ。
これらが実現すれば、AI図面比較機能がレイアウトやスケールのズレ補正を行い、寸法線や注釈の移動は無視して比較した後、「意味のある変更」だけを表示できる。施工管理者や設計者は、重要部分が直っているかをスピーディーに確認でき、人の目では気づきにくい修正も検出することができる。
AIの導入によって従来の“ノイズだらけの図面比較アプリ”から、実務上確認すべき変更を浮かび上がらせる生産性向上ツールへと進化しつつある。
紙の赤ペンチェックを、そのままデジタルへ
一方、建設現場で図面の変更指示を出す作業も、BuddyBoardによってスピーディーになった。これまで、施工図、総合図、設備図、製作図などの紙図面に、丸や寸法を書き込み、納まりを指摘するなどの赤ペンを入れて、CADオペレーターや協力会社などに図面の修正指示を出す方法が主流だった。
こちらの作業所でも、以前は紙に赤ペンを入れたり、PDF編集ソフトで書き込んだりしていた。しかしPDF編集ソフトでは、テキスト枠の位置がずれることがある。図面では数ミリの位置ズレでも、「どこを指しているのか」が変わってしまう。これは地味だが、かなり困る。
BuddyBoardでは、iPadやパソコンで図面を開き、紙に赤ペンを入れる感覚で手書きの修正指示を書き込める。誰が書いたのかも色などで分かりやすくできる。担当者にとっては、まったく新しい仕事のやり方を覚えるというより、これまでの紙図面チェックをそのままデジタルに載せ替える感覚に近い。
「紙に赤ペンチェックを入れていたイメージのまま、iPad上で書き込めるので、これまでの仕事のやり方と近いと現場では受け止められています」と、作業所長を務める中村壽(たもつ)氏は語る。新しいITツールでありがちな“操作を覚える負担”が少ないことは、導入する上では大きな利点である。
社外とのオンライン会議も軽快に
この作業所では、東京の設計事務所とのオンライン会議にもBuddyBoardを使っている。
作業所側がパソコンでオンライン会議システム「Teams」とBuddyBoardを開き、発表者モードを使うと、今見えている図面の同じ個所が相手側にも連動して表示されるので、「この部分です」と言えばすぐに話が通じる。お互いに図面上へ書き込むことができ、リアルタイムに反映されるため、Teamsの画面共有だけで説明するより、ずっと話が早い。
従来の会議では、「どの図面の、どの部分の話をしているのか」がわからなくなってムダな時間が過ぎてしまう事も多かったが、オンライン会議システムとBuddyBoardを併用することで、図面上の“場所合わせ”が格段にしやすくなった。これは図面を中心にした新しいオンライン会議スタイルと言えそうだ。
BIMと紙図面文化の間をつなぐ
竹中工務店では、BIMを中心とした業務スタイルに転換している。BIMモデル上で整合性や干渉を確認し、複合図や総合図などを作っていく。そのうえで、監理者・発注者への施工図承認や確認には従来の2D図面を使っている。
BuddyBoardはBIMで検討した結果の図面を、効率的にチェックし、施工図承認につなぐ役割を担っており、BIMと図面が共存する作業所のDXに大きく貢献している。
プロダクト部建築グループ主任の杉山拓真氏は「BIMは立体的な検討に強いですが、現場では今も2D図面を見ながら納まりを確認し、赤ペンでチェックを入れ、関係者と合意していく場面が多くあります。BuddyBoardは、この紙図面文化の分かりやすさを残しながら、AIやクラウドのパワーを活用する事で図面業務を効率化してくれます」と語る。
少子高齢化の影響で、ベテランの施工管理者の退職が増える今日、BuddyBoardにはもう一つ見逃せない効果がある。それは技術伝承だ。
図面の修正過程をリアルタイムに共有できるBuddyBoardを導入すると、他の人がどんなチェックをしているかが見えるので、それが若手の図面を見る目を養うことにつながるからだ。
工事長の朝倉崇博氏は「以前は紙ベースで順番に回覧していましたが、BuddyBoardを使うことで同時編集が可能で、かつ、誰がどんなチェックをしているかが把握できます。若手がベテランの仕事を覗きに行けるのが良いですね」と語る。
「また指摘の数や項目を見れば、若手が注力しているかどうかも分かります。指摘の内容から『分かっているな』とか『まだまだかな…』というのも見えるので、若手の図面力向上のための教育・指導にも繋げられます」(朝倉氏)。
紙図面では回覧されて終わっていた赤ペンチェックが、デジタル上のナレッジになる。これは単なるペーパーレス化ではない。図面チェックの技術伝承にもつながるDXである。
図面チェックはAI時代へ
BuddyBoardのAI図面比較は、2026年7月にベータ版として発表された新機能だが、竹中工務店のこちらの作業所では先行ユーザーとして、発表前から実際の図面チェック業務で活用してきた。
紙図面への赤ペンチェック文化を無理に壊さず、作業所が慣れたやり方を生かしながら、クラウドとAIで少しずつ楽にするBuddyBoardは、設計者、施工者、協力会社が日々向き合う“図面チェック地獄”を、現場目線で軽くしていくツールと言えそうだ。
竹中工務店のアリーナ施設の建設現場で行われているこれらの使い方は、同じように施工図や総合図の照査に追われる多くの建設プロジェクト関係者にとっても、大いに参考になりそうだ。
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株式会社BuddyBoard本社 〒467-0855 愛知県名古屋市瑞穂区桃園町3番8号 |
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