手作業BIMを追い越せ! AI×BIMが実現する「逆襲DX」(U’s Factory)
2026年8月17日

U’s Factory(本社:横浜市保土ケ谷区)は、PDF図面をAIで読み取り3Dモデル化する「AI Structure」と、Archicad上で構造・仕上げモデルを自動生成する「BI For ArchiCAD」を進化させた。目指すのは単なる3D化ではない。鉄筋、型枠、土工事から数量集計、見積書までを一気通貫でつなぎ、BIM後発企業にも生産性で先行企業を追い越す「逆襲DX」の道を開くことである。

AIとBIMの連携で後発企業も「逆襲DX」のチャンスがやってきたと語るU's Factoryの上嶋泰史社長

AIとBIMの連携で後発企業も「逆襲DX」のチャンスがやってきたと語るU’s Factoryの上嶋泰史社長

 AIがPDF図面を3Dモデルと見積書につなぐ

構造図に並ぶ柱、梁、スラブの符号。別のページには部材リスト、特記仕様、配筋情報がある。従来なら、積算担当者がこれらを見比べ、数千もの文字や数値をソフトへ転記していた。

ところが「AI Structure」で図面を読み取ると、部材リストがデータ化され、伏図上の符号と結び付けられることで、3Dモデルが自動生成される。続いて「BI For ArchiCAD」が基礎、柱、大梁、小梁、スラブを順番に発生させ、鉄筋、型枠、土工事の数量へと展開する。最後は見積書へ変換される。

図面を見ながら延々とキーボードをたたいていた仕事が、確認と修正を中心とする仕事へ変わる瞬間だ。

PDFの2D図面から構造BIMモデルを自動作成する「AI Structure」

PDFの2D図面から構造BIMモデルを自動作成する「AI Structure」

U’s FactoryがAI Structureを発表した当初は、AIが2D図面を読み取り、3Dモデルを作ること自体が大きな驚きをもって迎えられた。

しかし、実際の建設プロジェクトで使われ始めると、顧客の見る目も厳しくなった。単に読めるだけでは足りない。修正の手間を減らし、積算業務へそのまま流せる精度が求められるようになったのである。

この2年間、同社は顧客から寄せられる声を一つずつ取り込み、図面の読み取り方やデータの振り分け方、チェック方法を地道に改良してきた。その結果、読み取り精度は約99%に迫る水準まで向上した。

上嶋泰史社長は「進化したのは、AIそのものというより、AIの使い方です。人間が図面をどう見て、どの情報をどこへ入れるのか。その仕事の順序をシステムに組み込みました」と語る。

読み取り精度が99%に迫った秘密は、人間の作業方法をAIに教え込んだことだった

読み取り精度が99%に迫った秘密は、人間の作業方法をAIに教え込んだことだった

図面全体を生成AIへ丸投げし、完全自動処理を行うのはかえって非効率を招く。人間が部材リストなどの対象範囲を示し、AIが文字や数値を読み、プログラムが確認用の図を作る。最後に人間が元図と見比べる。

このように、AIとBIMシステム、人間が役割を分担する「人機一体型」のワークフローこそ、最強ということがわかってきたのだ。

 形だけの3Dモデルでは、見積書は作れない

最近は、AIで2D図面を3D化するシステムが次々と登場している。しかし、上嶋社長は、見た目が建物らしいだけの3Dモデルと、積算・施工に使えるBIMモデルは別物だと強調する。

例えば、一貫構造計算プログラムの結果データは、構造安全性を確認するためのものであり、実際の建物を忠実に表したモデルとは限らない。見積書に必要な小梁やスラブが省略されていたり、柱や梁の寄り、コンクリートのふかし、非構造部材などが含まれていなかったりする。

また、PDF図面からコンクリートの外形だけを作れても、そこから鉄筋や型枠の数量は出せない。パラペットや鳩小屋、機械基礎、設備開口、複雑な基礎などを無視すれば、実際に提出できる見積書にはならないのである。

見積書の作成には、一貫構造計算プログラムのデータには含まれない補強筋やふかし筋なども必要となる

見積書の作成には、一貫構造計算プログラムのデータには含まれない補強筋やふかし筋なども必要となる

「AI会社に建設の専門家がいなければ、AIの答えが正しいかどうかを評価できません。技術者が欲しいのは、参考になる答えではなく、実務に使える正しい答えです」と上嶋社長は語る。

この厳しい姿勢を支えるのが、上嶋社長自身の約34年に及ぶ建設実務経験と、スーパーゼネコン、中堅・地域ゼネコン、設計会社、専門工事会社など約100社から集まる知見である。

システムには、数えているだけでも1万件を超える追加・修正が反映されてきた。単純な四角い建物だけでなく、現場で本当に困る複雑な納まりを扱ってきた蓄積こそが、U’s
Factoryならではの強みになっている。

ユーザーからの修正要望の反映は1万件を超えた

ユーザーからの修正要望の反映は1万件を超えた

U’s Factoryのユーザー企業の一例。スーパーゼネコンから専門工事会社まで、ユーザーは約100社に及ぶ

U’s Factoryのユーザー企業の一例。スーパーゼネコンから専門工事会社まで、ユーザーは約100社に及ぶ

 部材符号をキーに、熟練者の仕事を自動化

AI StructureとBI For ArchiCADの中核にあるのが、構造図の「部材符号」である。

熟練技術者は、伏図に記された符号を見れば、それが部材リストのどの柱や梁を指すのかを頭の中で結び付けられる。しかし従来の積算作業では、担当者が数千件のリストから該当部材を選び、一つずつ配置しなければならなかった。

配筋の仕様は符号で表し、設計者のチェックを効率化している

配筋の仕様は符号で表し、設計者のチェックを効率化している

U’s Factoryの仕組みは、まず伏図上の符号と位置を取得する。次に、符号を部材リストのデータベースと照合し、該当する柱や梁を自動発生させる。

しかも、基礎と柱、大梁、小梁、スラブという構造的に正しい順番でモデルを作る。見た目だけを整える生成AIとは異なり、部材同士の関係をプログラムで厳密に制御しているのだ。

「熟練者が頭の中でやっていることを、誰でも使える仕組みにしているのです。配筋図のチェックも人間が素早く行えるように、符号をそのまま使い、スラブ配筋の符号が足りなければ、元図を見て追加できるようにしました。全部をAI任せにしないから、確認も修正も簡単です」と上嶋社長は説明する。

 ゴールは3D化でなく、提出できる見積書

BI For ArchiCADは、Archicadのデータを利用し、数量確認表を自動出力して、3D表示と集計結果を連動させる積算用アドオンである。見積書作成ソフトへのデータ変換にも対応する。

AI StructureでPDF図面から部材情報を取得し、BI Structureで内容を確認・調整する。BI For ArchiCADでは、そのデータを基に構造モデルを作り、鉄筋、型枠、コンクリート、土工事へ展開する。

躯体モデルから基礎土工モデルを自動作成した例

躯体モデルから基礎土工モデルを自動作成した例

鉄筋工事会社などの専門工事会社も利用しているため、単に鉄筋らしい線を描くのではない。構造図に即した配筋を作り、加工長まで算出できる。数量を集計すれば、提出に使える見積書につながる。

設計変更が発生したときも、変更前後のモデルを比較することで増減数量を把握できる。契約数量と実施数量の照合や、協力会社との出来高査定にも応用可能だ。

「PDFからモデルができるだけでは、業務は終わりません。皆さんが本当に欲しいのは、鉄筋や型枠、土工事まで入り、最後に見積書が出ることです」と上嶋社長は力を込める。

 構造だけでなく、仕上げと建具にも進出

この2年間の進化は構造分野にとどまらない。

AI Structureは、平面図から部屋形状と部屋名を取得し、内部仕上表から床、壁、天井、天井高などの情報を読み取る。さらに、建具キープランと建具姿図から、建具符号、幅、高さ、開き方などをデータ化する。

BI For ArchiCADに渡すと、部屋のゾーン、外壁、間仕切り、建具、LGS下地、ボード、仕上げ材などを自動生成し、部屋別・工種別の数量を集計できる。

ただし、ここでも完全自動にはこだわらない。寸法線やハッチングまで部屋境界として誤認すると、不要な部屋が大量に生まれ、削除に時間がかかるからだ。

人間が大まかな部屋範囲を指定し、システムが図面の線に合わせて形を整える。最初から100点をAIに求めるのではなく、人間が方向を示し、機械に大量処理を任せる。この割り切りが、かえって実務を速くする。

BI For ArchiCADで内装ボードを自動配置した例

BI For ArchiCADで内装ボードを自動配置した例

 Revitなどの既存BIMも、そのまま生かす

既にRevitなど他のBIM・構造ソフトを導入している会社は、Archicadへ乗り換える必要はない。

既存のBIMソフトを使い続けながら、積算や見積書作成に必要な工程だけにArchicad、AI Structure、BI For ArchiCADを追加すればよい。

既存ソフトのモデルをIFC形式でArchicadへ受け渡し、AI StructureがPDF図面から取得した部材情報と照合する。位置や属性、ふかしなどを補正したうえで、鉄筋、型枠、土工事、見積書へつないでいくワークフローである。

RevitからのIFCデータをBI For ArchiCADに引き継いで活用した例

RevitからのIFCデータをBI For ArchiCADに引き継いで活用した例

「乗り換えではなく、サポートです。Revitでできるところは、これまで通りRevitでやればいい。その先の積算や施工につながらない部分を、Archicadと当社のシステムで補えばいいのです」と上嶋社長は語る。

つまりArchicadは、既存BIMを置き換える存在ではなく、さまざまなBIMデータを施工・積算へつなぐエンジンとして並行利用できるのである。

 BIM後発企業が逆転する「逆襲DX」

これまでBIMを導入してこなかった企業にとっても、チャンスは大きい。

従来のBIM導入では、オペレーターがソフト全体を学び、一つずつ部材を配置する技術を身につける必要があった。しかしBI For ArchiCADでは、熟練者の作業手順がボタンの中に組み込まれている。

例えば、定型的なモデル生成や積算であれば、操作担当者は「最初は柱の作成」「次は大梁」「その次は小梁」といった具合に、ボタンを押す順序を覚えることで作業に参加できる。上嶋社長によると、BI For ArchiCADを使った定型的なモデル生成や積算の基本操作は、1日程度の講習でも習得可能だという。

これは「1日でBIM技術者になれる」という意味ではない。ベテランが判断すべき部分は残る。しかし、これまでベテランが時間を費やしていた転記、モデル作成、数量拾いを、若手やBIM未経験者へ分担できるということだ。

「今は、入社1年目の社員がボタンを押して鉄筋や土工事、見積書まで作り、喜んでいます。手作業BIMを続けている会社に対し、後からBIMを始めた会社がAIと自動化で追い越す。そんな逆転が起こり得ます」と上嶋社長は語る。

入社1年目の社員でも、納まりの難しい部分をボタン一つで正しく作成できる。教育ツールとしても有効だ

入社1年目の社員でも、納まりの難しい部分をボタン一つで正しく作成できる。教育ツールとしても有効だ

BIMは、早く導入した会社が必ず勝つとは限らない。手作業によるモデリングにとどまる先行企業を、最初からAIと自動化を使う後発企業が追い越す。こうした「逆襲DX」を可能にするのがU’s
Factoryが描くAI時代のBIM活用だ。

同社のシステムは、今回紹介した構造・仕上げ積算だけでなく、施工図、加工帳、発注数量、設計変更の増減、工程シミュレーションなどへも展開できる。

モデルを作ること自体を目的とせず、図面から施工、積算、見積もりへ情報を流す。人手不足が深刻になる建設業で、BI For ArchiCADはBIMの敷居を下げると同時に、ベテランの知識を次世代へ引き継ぐ「逆襲の武器」になりそうだ。

【問い合わせ】

株式会社 U’sFactory
〒240-0005 神奈川県横浜市保土ケ谷区神戸町134
横浜ビジネスパーク イーストタワー 5F
TEL:045-348-1560 FAX:045-348-1561
ウェブサイト https://us-factory.jp/

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