コラム「大林組がBIMモデルを施工用図面として活用するプロセスを確立」を公開
2020年11月17日

BIMで建築が夢をみる

#97 大林組がBIMモデルを施工用図面として活用するプロセスを確立

株式会社大林組では、BIMモデルの情報を生産設計図(施工用図面)として直接視覚化させた「次世代型生産設計図」を実用化し、現場での利用を開始しました。これによってBIMと施工図との新しい相関性が明らかとなりました。

BIMによる設計情報と施工情報のデジタルによる統合は、大林組のようなスーパーゼネコンだけでなく、性能を向上させたBIMソフトの導入、運用によって、地場の工務店・建設会社でも可能となりました。目指すべき、ひとつの指針として、大林組の取り組みを本稿で取り上げます。

2次元の施工用図面をデジタルで革新

建築工事ではこれまで意匠図・構造図・設備図を統合した2次元の施工用図面を作成し施工していました。しかし、高さ方向で部材の位置が被っている場合など不整合が見分けにくいという課題がありました。

一方で、BIMモデルは施工に必要な情報が収納され、3次元で表現されるため、不整合の有無の確認などに向いているものの2次元の施工用図面として利用するには煩雑な作業が必要となり適していませんでした。そのため変更の都度、施工用図面とBIMモデルの両方を更新しなければならず、担当者の負荷が高くBIMの一貫利用を阻害する大きな要因となっていました。

BIMモデルの情報は施工用図面に直接反映される

それらの課題を解決するために、BIMモデルに必要な情報を更新するだけで施工用図面として抽出・表示・伝達できる手法を確立し、次世代型生産設計図として運用を開始しました。これによってBIMモデルの情報は施工用図面に直接反映されるため、施工用図面の修正作業がなくなりました。加えて、BIMモデルには設計情報と生産情報を集約しているため、監理者や施工者、協力会社といった利用者ごとに必要な生産情報を直接視覚化(図面化)して伝達できます。次世代型生産設計図を利用することで「BIMモデルを主体とした」一貫性のある実務運用が可能となりました。

◇集約・整合させたうえで情報を可視化する

次世代型生産設計図の特長

  1. BIMモデル情報を直接表示
    建築構成部材や個々に必要とされる生産情報はあらかじめBIMモデルに盛り込みます。その上で、施工用図面として部材の外形情報や部材間の位置関係に関する情報など、BIMモデルから直接引用し表示します。また、BIMソフトのタグ表示機能により仕様に関する情報も選択し表示できます。

    ◇タグによる情報表示のイメージ

  2. 必要な情報を整理し、利用する人に適した様式に構成して提供
    設計情報と付加すべき生産情報を標準化したことに加え、施工の段階や工種ごとに必要な情報を分析・分解し、目的別に分類整理しています。これら分類に基づき、監理者や施工者、協力会社など工事関係者ごとに必要とする情報をBIMモデルから選別し、利用者に適した様式で提供しています。
  3. 紙の図面という「しばり」から脱却
    次世代型生産設計図は、BIMモデルの生産情報をタブレットに表示できるので、1フロア全体を1枚の全体図として管理しています。またアイソメトリック図などを用いて視覚的に分かりやすく立体で表現し、施工のイメージがしやすくなりました。従来のA1サイズなどの紙に印刷することを前提とした縮尺分割図の様式や表現形式にしばられないことも次世代型の特長です。

    ◇アイソメトリック図のイメージ図

詳しくは、福井コンピュータアーキテクトのウェブサイトで。

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