海洋土木を担う本間組が高精度測位サービス「ichimill」を導入し、KOLC+と連携したデジタルツインで作業船位置を可視化。設置の容易さで省人化・コスト削減を実現し、天候に左右されない測位で遠隔からの進捗把握や退避判断の高度化にもつなげた。
概要
株式会社本間組は、海洋土木・陸上土木・建築を柱とする総合建設会社。港湾工事における作業船の位置確認や施工範囲の把握、関係者間の情報共有に課題があった。高精度測位サービス「ichimill」を導入し、3次元クラウドプラットフォーム「KOLC+(コルクプラス)」と連携。作業船の位置を正確に把握し、関係者間でリアルタイム共有可能なデジタルツインを構築し、施工管理の生産性を大幅に向上した。(2026.4)
課題
- 海上では目印の設置が難しく、作業船や施工範囲の正確な位置把握が困難だった。
- 従来の位置測位方法では計測情報を特定のPCでしか閲覧できず、関係者間でリアルタイム共有できなかった。
- 従来のGNSS測位システム設置やリアルタイム測量は準備・設置が大掛かりで、事前準備や人員手配に手間とコストがかかった。
導入サービス
ichimill(イチミル)
「ichimill」はセンチメートル級の高精度測位により正確な位置を可視化。3次元モデル上でのリアルタイム共有が可能となった。設置してモバイルバッテリー等の電源と接続するだけで運用でき、少人数・短時間で体制構築が可能に。運用負担とコストの削減につながった。
コメント
「ichimillは設置も簡単で、操作も分かりやすく使いやすいという声がありました。最小限の人員で『ichimill』を所定の位置に設置するだけなので、従来方法より大幅な作業時間の短縮・省人化を実現しています」(株式会社本間組 技術部 技術企画課 神蔵 昌士 氏)
目印なき海上施工、その限界とICTの模索
「陸上工事と違って、海上では目印の設置が困難でした。従来の方法は海中に目印となる竹を設置していましたが、波で動いたり流されたりするため、不確かな部分がありました。また、陸上から測定器で計測する場合でも、構造物や作業船にプリズムという目印を設置し、それが見える位置まで近づかなければなりません」(神蔵氏)
「計測できるのは条件がよくても約500メートルまでで、雨や霧など天候によって計測できる距離が変わっていました」(伊藤氏)
ケーソン据付では、事前下見・前日入り・当日・撤収まで複数日にわたり、計25人工、約300万円の費用が発生。天候により中止の可能性があり、予備日確保も必要だった。自社船以外へのGNSS設置は大掛かりで、限られたPCでしか確認できず共有が困難。一般船舶の回頭範囲も具体的に計測できていなかった。
ichimill導入という決断
ichimillはGNSSに加え全国3,300以上の独自基準点によるRTK測位により、誤差数センチメートルでの測位を実現。デバイス一体型受信機でモバイルバッテリー稼働が可能なため、構造物や作業船に設置するだけで運用開始でき、出来形管理の基準も満たした。
1 RTK測位:固定局と移動局の2つの受信機を利用し、リアルタイムに2点間で情報をやりとりすることで、高精度での測位を可能にする手法。
2 出来形管理:構造物の寸法や位置が設計図面に示された規格値内に収まっているかを確認するプロセス。
港湾工事現場の構造物にichimillを設置。外部GNSSアンテナやモバイルバッテリーにつなげて使用。※現在、写真のサービス一体型受信機「LC01」は販売を終了。代替手段についてはWebサイトを確認のこと。
ichimillは衛星信号で位置を取得するため、雨や霧など視程が悪化しても測位が可能。「天候に左右されず、かつ船に直接設置できることもichimillの良さだと思います」(伊藤氏)
取得した位置情報はAPI連携で3次元クラウドプラットフォーム「KOLC+」と接続可能。KOLC+上の3次元モデルに作業船の位置情報を連携し、施工対象物との距離や位置関係を把握でき、デジタルツインを実現。現場検証を経て導入を決定した。
設置の容易さがもたらした確認と運用の変化
「ケーソンの仮置き作業の際は、私一人で現場に赴き、構造物の四隅に設置したのですが、設置作業だけであれば約5分で完了できました」(神蔵氏)
専門業者への発注コストや日程調整の負担が減少。顧客とは施工状況の画面共有により、進捗をデジタルツイン上で把握でき、不必要な待機時間が減少した。
「現場から離れた場所にいても、iPadを開けば船がどう動いているかが分かります。デジタルツインの良いところは、遠隔でも現場の状況を把握でき位置情報まで見えることです。視覚的に確認でき、いつでもどこでも状況を把握できるようになりました」(伊藤氏)
出典:KOLC+
経験則+デジタルデータ 退避判断を変える航跡活用
新潟港では、定期船「佐渡汽船」の入出港に合わせた退避のため作業中断が発生。ichimillを同船舶に設置して航行軌跡を取得し、KOLC+上で作業船との位置関係を可視化した。
「実際の航行軌跡から必要な退避エリアや退避時間を確認できました。これまで設定していた退避ラインの過不足が確認できました。この結果を佐渡汽船様と共有し、相互理解を深めながら適切な退避範囲について今後も協議を進めていきたいと考えています」(神蔵氏)
過去の経験則に加え、実測の航跡データ活用により、客観的かつ精緻な安全判断が可能に。危険予測の精度が向上し、安全確保と工期短縮の両立を進める一歩となっている。
出典:KOLC+
今後の展望
「ichimillで得られたデータを解析し、より最適な施工範囲や作業手順を検討していきたいと考えています。また、UAV(産業用ドローン)との連携も可能と聞いているので、当社で利用しているUAVと連携させることで、これまで時間を要していた標定点の設置作業についても効率化していきたいです。さらに、災害発生時の活用も視野に入れています。(中略)ichimillを職員の車両に搭載しておけば、本社から位置情報を把握し、誘導や安否確認に活用できると考えています」(神蔵氏)
港湾工事の現場で始まった取り組みは、取得データを次の施工へ生かす仕組みづくりへとつながり、安全性の確保と生産性向上の両立を実現していく。
お話をうかがった方
- 株式会社 本間組 土木事業本部 技術部 技術企画課長 伊藤 義将 氏
- 株式会社 本間組 土木事業本部 技術部 技術企画課 神蔵 昌士 氏
- 株式会社 本間組 土木事業本部 技術部 技術企画課 小川 秀成 氏
- 株式会社 本間組 土木事業本部 技術部 技術開発研究室 安藤 恭平 氏
本事例での導入サービス
ichimill(イチミル)
全国3,300以上の独自基準点と衛星(GNSS)信号で、誤差数センチの高精度かつリアルタイムに位置測位。







