株式会社 梓設計
東京国際空港をはじめに空港、病院などの公共性の高い建物から、都市開発、商業施設、オフィスビルまで幅広い分野で事業を展開する日本有数の組織設計事務所。BIM導入にも早くから取り組み、建築設計分野でのIT活用のパイオニアとなっている。
URL: www.azusasekkei.co.jp/
現在、建築設計の分野でも3Dプリンターの導入が進んでいる。3Dプリンターは製品が続々登場しており、価格帯はもちろん方式も多彩。今回は建築模型の作成に向けてインクジェット方式の3D Systems ProJet 660Proを利用開始した梓設計の柴峯一廣氏に導入メリットやモデル作成への取り組みを伺った。
建築系に最適な方式を検討、新国立競技場の設計に活用も
梓設計が導入した3Dプリンターは3D Systems社のProJet 660Pro。インクジェット粉末積層方式となるもので石膏粉末の層を重ねていく中で、固められた部分が成形物として残り、固められてない部分は粉末のまま重ねられていき、立体的な成形物を作り出していく。
成形物のない場所には粉末が詰まっているため、成形される物がどんな形をしていても、例えば浮いていても生成できる。そのため、低価格タイプに見られるフィラメントで成形するタイプの3Dプリンターと違い、サポート(土台)なしの物体を作り出すことが可能。また、同時に粉末に色を付けることができるため、フルカラーで出力できることもこの方式の特徴だ。
梓設計情報システム部長 柴峯氏とProJet 660Pro
もちろん良いことだけでなく、成形が終わった際にまわりの粉末を除去する必要があり、成形物の強度を出すためには硬化剤を塗布する後処理が必要になるという手間がかかる。
今回お話を伺った梓設計の柴峯一廣氏によれば、ProJet 660Proを選んだ理由としては、同業者の事例を参考にしたということで、コスト、時間、などから選択したという。
建築設計業の中では、まだ3Dプリンターを自社で購入して稼働しているところは少ない中、導入に至ったきっかけは、当初はトップダウンによるもの。その後、複雑な形状のイメージが発表された新国立競技場の設計に携わる中ではなくてはならないものとなり、今では分割して出力して組み合わせるなどして、大きな模型の作成も開始しているほど活用している。
3Dプリンターで意思疎通が進み、複雑な形状も理解しやすく
3Dプリンターで出力することで実際の形状がよくわかる。
手にとってさまざまな角度から見ればより理解を深めることができる
社内でも3Dプリンターをフル活用している柴峯氏は「画面の中だとイメージがあるが、実際どうなっているかとなると、なかなか理解してもらえない。それを意思の疎通をさせるために3Dプリンターを使った模型を作り、模型を前にして話し合う」と“カタチ”にする利点を語る。
複雑な形状になればなるほど、3D的に表示したとしても平面のモニターを見ただけでは理解できることに限界がある。
それが、実際に成形物として出力することで、手にとって形状を詳しく確認できる。複雑な形状では、見る角度によっては図面や3D表示だけでは理解にしくい部分もあるため、クライアントの理解をすすめるためにも非常に重要となる。特に新国立競技場のような、複雑な形状の建物となるとそれが顕著だ。
また、模型ができることで、今まで気づかなかったところに気づいたり、より完成度を高めることにつながっていくため、設計側としても複雑な形状の建築物の設計には不可欠となっていくとしている。
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