「W540に込めたエンジニア魂、大和研究所開発チームに聞く」を公開
2014年3月17日

ThinkStation完全検証 ~W540に込めたエンジニア魂、大和研究所開発チームに聞く

2013年12月、レノボ・ジャパンは、最新モバイルワークステーション「ThinkPad W540」の出荷を開始した。ThinkPad W540は、ThinkPad W530の後継製品であり、3K解像度(2880×1620ドット)の液晶を選択できるようになったことや、ボディの薄さが15%も薄くなったことなど、さまざまな点が強化されている。 ThinkPad W540の開発を担当したのが、横浜みなとみらいにあるレノボ・ジャパン横浜事業所大和研究所である。大和研究所は、ThinkPadの開発拠点であり、世界で最も要求が厳しいといわれる日本のユーザーの要望を元に製品開発を行っているのだ。ここでは、大和研究所のThinkPad W540開発チームの方々に取材する機会を得たので、ThinkPad W540の開発で苦労した点やアピールしたい点などをお聞きした。

薄さと冷却性能を両立させるために熱設計は2回も大改造を行った

伊藤貴志子/レノボ・ジャパン 製品開発統括担当・ノートブック製品開発
伊藤貴志子 レノボ・ジャパン 製品開発統括担当・ノートブック製品開発

ThinkPad Wシリーズは、レノボ・ジャパンのThinkPadシリーズの中でも、ハイエンドに位置づけられるモバイルワークステーションである。ThinkPad W540の開発において最も苦労した点は、ボディの薄型化と冷却性能を両立させることだと、開発を統括した伊藤貴志子は語る。

「クライアントへのプレゼンの際にモバイルワークステーションを持っていく方が多いです。そのため、ボディの薄型化と軽量化が、強く求められていました」。 ThinkPad W540は、ThinkPad Tシリーズと共通のボディを採用することで、前モデルに比べて15%もの薄型化を実現しているのだが、ボディを薄型化すると、背が高く風量の大きなファンを搭載できないため、熱設計が難しくなる。最初の試作品は、開口部のサイズが足りず、負荷をかけているとボディの温度が上がり過ぎてしまい、開口部をデザインし直し、さらに、それでも温度に不満があったため、再度熱設計を行ったという。 「ThinkPad W530に比べて、ThinkPad W540は、開口部が大きくなっています」(高橋俊樹)。 「熱設計に関しては、2回も大改造を行ったので、冷却性に加えて静音性も基準を達成できました。」(伊藤貴志子)。 実際、ユーザーからも、同程度のスペックを持つ他社のモバイルワークステーションに比べて、ThinkPad W540はより静かだという評価を得ている。

高橋俊樹/ノートブックシステム設計
高橋俊樹 ノートブックシステム設計
ThinkPad W540とThinkPad W530の開口部の比較
ThinkPad W540とThinkPad W530の開口部の比較

3K解像度とIPS液晶にこだわり、ベストの液晶を搭載

ThinkPad W540の魅力の一つとして、ThinkPadシリーズで初めて3K解像度の高解像度液晶を搭載できるようになったことが挙げられる。他社の15インチクラスのモバイルワークステーションでは、フルHD液晶搭載が主流だが、ThinkPad W540の3K液晶では一度に表示できる情報量はフルHDの2.25倍にもなるため、大きな図面も高精細な画面で表示できる。CADユーザーには特に嬉しい強化点といえるだろう。

井上晃司 レノボ・ジャパン株式会社 ThinkPad液晶&タッチ開発
井上晃司 液晶&タッチ開発

この液晶には、ディスプレイの開発を担当した井上晃司の想いが込められているのだ。 「ThinkPad W540でどうしても実現したかったのが、解像度の向上とIPS液晶の採用の2点です。W530でも色再現性の高い液晶を搭載していましたが、IPS液晶はさらに中間調の色再現性に優れています。ワークステーションをお使いになるお客様にとって、色がちょっとでもずれてしまうというのは問題だと思いました。熱やノイズ対策にも苦労しましたが、このサイズにおいては現状でベストな液晶を搭載することができたと思います。」  さらに、ThinkPad W540の液晶は、350cd/m²という高い輝度を実現しているので、輝度を含めたダイナミックレンジが非常に広いことも魅力だ。

その高品質な液晶を最大限に活かすために搭載されているのが、カラーキャリブレーターだ。カラーキャリブレーターは、色のずれを検出し、正しい色に調整するための機器だが、カラーキャリブレーターを内蔵しているワークステーションは、ThinkPad Wシリーズだけだ。パームレスト部分にカラーセンサーが内蔵されているので、カラーキャリブレーションソフトを起動して液晶を閉じるだけで、自動的にカラーキャリブレーションを行うことができる。 「実は、工場でも高価なカラーキャリブレーション用の機械を使って、1台1台液晶の色情報を取得して、その情報をカラーキャリブレーターに覚えさせています。ですから、最初から色はきっちり合っていますし、経年劣化に対しても内蔵のカラーキャリブレーターで色がずれることを防ぐことができます。」(高橋睦良)

IPS液晶搭載で色再現性が高く、カラーキャリブレーターの搭載により、経年劣化による色ずれを防げるThinkPad W540は、色にこだわる写真家やデザイナーにも最適だ。

ThinkPad W540では、パームレスト部分にカラーキャリブレーターが内蔵されている
ThinkPad W540では、パームレスト部分に カラーセンサーが内蔵されている
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