MMS測量船で漁港を3D計測!
2017年9月4日

モバイルマッピングシステム活用事例(IP-S3 HD1)

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コンパクトだから船でも自転車でも台車でも “MMS化”するIP-S3 HD1

広範囲を短時間に3D計測が可能なMMS(Mobile Mapping System)。2012年には国土地理院の作業マニュアル(案)も発行され普及が進むMMSだが、一般的に搭載する移動体は自動車であろう。一方で青森県八戸市の総合建設コンサルタント会社である株式会社興和様は、Mobile Mapping System IP-S3 HD1を自動車以外にも搭載しユニークな活用をされているという。早速お話を伺うことにした。

増加する3D計測に対応するために。

「当社では5年前に3DレーザースキャナーGLS-1500を導入以来、積極的に3D計測へ取り組んでいます」。こうお話されるのは同社取締役地理空間情報部長の菊池元良(きくちもとよし)様。以来、幾多の3D計測業務をこなし点群データの扱いについて研鑽を積んできた。この実績を評価されてか、近年では公共測量以外、工事測量においても3D計測の業務依頼が増えてきたそうだ。そこで同社では昨年に3DレーザースキャナーGLS-2000を増設、加えてレーザースキャナーよりも広範囲を短時間で、しかも高密度な点群データの取得が可能なIP-S3 HD1の導入を決断された。i-Constructionの普及を見据えてのことだ。

IP-S3 HD1測量船の誕生!

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今回伺ったIP-S3 HD1の導入事例として一番注目したのは、漁港の測量業務。陸上はGLS-2000、海底地形はナローマルチビーム音響測深機、更に防波堤や消波ブロックの計測のため、測量船にIP-S3 HD1を搭載して行った。3つのセンサーを使い、対象となった漁港の陸上や構造物から海底に至るまで、全てを3D化したのである。 作業の詳細について、同社仙台支店の支店長代理である留目司(とどめつかさ)様に伺った。「陸上は3Dレーザースキャナーで簡単に測れます。海底も測深機を使えば同様です。課題となっていたのは、防波堤の現状と消波ブロックの積まれ方を詳細に3D化することでした。陸上からですと死角ができてしまいますから近くに行きたいのですが、消波ブロックの上に3Dレーザースキャナーを立てるのは危険ですし、切り立った防波堤の側面までは測りきれません。それならばいっそ、IP-S3 HD1を測量船に積んで測ってしまおうと考えたのです」。3つのセンサーで3D計測を行った、まさに”ハイブリッド3D計測”となった今回の現場。データの合成には、3D点群処理ソフトウェア MAGNET Collageを使われた。MAGNET Collageとは3D点群データを処理するソフトウェア。3Dレーザースキャナー、UAV、MMSなど様々なセンサーで取得したデータを高速処理して点群を生成、これらを合成するという、3D点群を一括管理するソフトウェアだ。多少の懸念はあった各データの整合性も全く問題なくきれいに合成でき、成果にはとても満足しているという。留目支店長代理は続ける。「船にMMSを載せるのは当社としても初めてのケースなので、一概に従来との比較はできません。ただし、想定していた以上に短時間で計測できたこと、危険な箇所に立ち入ることなく安全に計測できたこと、そして成果の出来栄えを考えれば十分に効率的かつ高品質な成果が得られる、優れた手法だと思います」

Kowa_IPS3HD1_002_J.jpg取得した点群データによって3D化された漁港とその周辺。MAGNET Collageによって、IP-S3 HD1、GLS-2000、そして音響測深機のデータを合成した。

決め手は”何にでも載せられる”コンパクトさ。

さて話は遡りIP-S3 HD1の導入経緯について。検討段階では各社のMMSを徹底的に比較したという。「当社独自の活用方法、今まで世の中にあったMMSというイメージに捕らわれないユニークな活用ができるか。比較に際しては常にこのことを意識していました」と菊池部長は当時を振り返える。そして社員だけでなく、地元大学の先生を含め幅広い方々と意見交換をしつつ、最後に残ったものがIP-S3 HD1だというのだ。決め手となったのは、小型軽量なシステムで取り回しが良いこと。「先ほどお話した測量船に載せるだけでなく、IP-S3 HD1なら様々な移動体に取り付けることで”MMSといえば自動車”という一般的なイメージを越えた活用分野があると感じました」 今回の取材でもう1つ”自動車以外”の実例を伺うことができた。河川の築堤調査業務へのIP-S3 HD1の活用例だ。同社地理空間情報部空間計測グループの川又弓華(かわまたゆか)様からご説明いただいた。「往復延長12kmあり、3Dレーザースキャナーではかなりの時間と手間がかかってしまいそうでした。しかも、調査対象のほとんどが歩道部でしたから、自動車では立ち入れません。そこで、IP-S3 HD1をアシスト付き自転車+リヤカーや電動台車に搭載して計測する方法を提案したのです」。従来法では2週間程度かかると見積もっていた業務であるが、IP-S3 HD1を使うことで、2時間程度で終わらせることができたという。作業時間だけで、なんと40倍の効果があったことになるのだ。 現場作業を短時間で終わらせることができれば費用の削減に繋がる。これは発注者、請負業者双方に大きなメリットだ。菊池部長は「IP-S3 HD1を選択したことは、大正解だったと思っています」と、今回の導入に満足いただいている様子である。

Kowa_IPS3HD1_003_J.jpg写真左)自転車で引いたリヤカーに。写真中央)電動台車に。これなら、自動車やバイクで侵入できない場所でもIP-S3 HD1が活用できる。橋の下など高さ制限も問題ない。 写真右)もちろん自動車にも搭載。造成現場では、UAV・GLS-2000・IP-S3 HD1と用途に合わせて使い分けて全体を3D化、ビューワーと共に成果納品している。

3Dデータの活用を推進し業務拡大。

同社では既にUAVによる空中写真測量も手掛けており、今回のIP-S3 HD1導入で3D点群データ取得に必要な機材は揃った。さっそく、i-Construction対象現場における起工測量、出来高・出来形の計測には、状況に応じ3Dレーザースキャナー、UAV、MMSを組み合わせて活用を始めている。 「今後は現況測量や工事測量だけでなく維持管理調査業務、例えば道路や建物、占有物、構造物の調査業務へ活用を拡大していきたいですね」と菊池部長。さらには3D点群データの有効活用を進めるため、納品時には従来から成果物に加え、ビューワーソフトと併せて3D点群データまで提供を始めた同社。3Dによる「見える化」は、発注元からも至って好評のようだ。
3D計測は潮目の変わりゆく時期が到来したのかもしれない。

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お話を伺った株式会社興和の皆様。左から 取締役地理空間情報部長 菊池元良様、仙台支店支店長代理 留目司様、地理空間情報部空間計測グループ 川又弓華様

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