NEXCO東日本の「eYACHO for Business」活用
2023年3月6日

NEXCO東日本の「eYACHO for Business」活用の取り組み

遠隔立会から道路点検、日常業務まで
デジタル野帳で業務改善を実現

国土交通省では、受発注者の監督・検査業務効率化のため、デジタル技術を活用した遠隔臨場を推進している。そのような背景のもと、東日本高速道路(NEXCO東日本)でもデジタル野帳「eYACHO for Business」を導入。遠隔立会だけでなく、道路点検や日常業務にまで応用し、業務改善を実現している。

 現在、日本の建設・土木の現場では、高齢化・人手不足といった問題が慢性化しており、デジタル技術の活用による省力化・業務改善は待ったなしの課題だ。NEXCO東日本でも、ここ数年は様々なデジタルツール、ネットワークサービスなどを検討していたという。
「当社は、新潟県および長野県の一部を含む関東以北から北海道までのエリアの高速道路の建設・維持管理・運営、サービスエリア事業および高速道路関連ビジネスを行っています。非常に広大な地域をカバーしているため、事務所から現場の往復だけでも相応の時間と労力が必要。早急に業務改善に着手したいと考えていました」。管理事業本部 本部付部長 金田泰明氏は経緯についてこのように説明する。

遠隔立会を実施することで
移動時間の約6割を削減

 そこで同社が着目したのが、MetaMoJiのデジタル野帳「eYACHO for Business」(以下・eYACHO)だ。eYACHOを利用した遠隔立会の試行を担当したのは、技術本部 技術・環境部 環境課長の本宮剛志氏。当時、現場所長として赴任していた上越管理事務所で遠隔立会に着手。さらに次の赴任先の札幌管理事務所でも試行に取り組むことに。

札幌では上越での検討結果をもとに、今後の全社への適用性、活用性を考慮し、工種は舗装とした。現場が分散・点在し、管理事務所から施工現場、また施工現場間の移動に時間を要する現場環境ということで、管理ヤード舗装工事を試行の対象とした。

従来は、出来形検測、材料検収の際、同社の担当者と施工管理員が現地に赴き、施工立会や材料検査、確認などを行う必要があった。ウェアラブルカメラとeYACHOを用いた遠隔立会の場合は、以下のような手順で実施された。

    1. ①検測実施前までに出来形検測調書をeYACHOへアップロード。
    2. ②eYACHOとウェアラブルカメラを併用し、出来形検測の状況を配信。
    3. ③映像を確認の上、eYACHOへ遠隔立会等結果を記録。
    4. ④eYACHOにより遠隔立会等結果報告。補助監督員等が電子押印により承認。

札幌の試行では、すべての立会のうち、遠隔立会は52件、現地立会は50件という結果に。「プルフローリング試験などの現場試験が伴う場合や立木調査、現地検査を伴う場合などは、現場での立会が必須。しかしそのほかの出来形検測、材料検収は遠隔立会で十分可能でした」と本宮氏。

その結果、従来の現地立会だけであれば約40時間必要であった移動時間を、遠隔立会を取り入れることで24時間も削減することができた。「朝9時台に現地立会に向かうとなると、早出の出勤が必要になります。また16時以降の現地立会がある場合には、事務所に戻るのは定時の17時半を過ぎることになります。遠隔立会を実施することで朝夕の超過勤務を軽減する効果も期待できます」(本宮氏)。その分、事務所における内業に注力できるほか、現場進捗に応じた立会依頼にも臨機応変に対応できるメリットも生まれた。

そのほか、現地立会における承認・決裁の書類は、eYACHOを利用することですべて電子化。A4サイズ4,488枚分に相当するファイル15冊分の書類を作成・保管する事務作業も削減できた。「書類関係の煩雑な手間が省けるのも助かりました。メールでやりとりした書類を印刷する手間がないし、受発注者間で書類がシェアできる。また、その場で承認が完結して、承認書類を送り返す手間もない。すべてのデータをeYACHOで共有することができ、一連のフローがすべてリアルタイムに eYACHO上で完結する。これが遠隔立会にeYACHOを利用する最大のメリットですね」(本宮氏)。

日常業務の省力化にも
eYACHOを活用

 その他、同社では日常業務にもeYACHOを活用している。社用車運転日報の管理については、従来、車両ごとのカバンに運転記録簿を入れ、運転するたびに記⼊していたが、⼿書きの記⼊、距離の計算、月次の取りまとめなど手間が掛かっていた。そこで車両カバン保管庫上部に二次元コードをプリントした紙を貼付。そこから車両ごとのeYACHOノートを格納したフォルダにアクセスできる。携帯端末などから必要事項が入力できるので入力漏れが大幅に減少した(図1)。

車両カバン保管庫上部に張られた二次元コードからリンクされた社用車運転日報のテンプレート。日付や時間、チェック欄などはプルダウンで選択できるので簡便に入力できる。サイン欄のみ手書き。手書きのノートのときよりも手早く記録できることもあり、入力漏れがなくなったという。

 また、緊急時に持ち出すための物品を棚に入れて整理していたが、eYACHO内に物品ごとの棚をイメージしたノートをつくり、タップすると貸し出し簿が出てくるようにした(図2)。持ち出す際には書式にのっとって名前、返却予定、持ち出し個数などを入力する。席にいながらにして物品の貸出状況を確認でき、誰が何を持って行ったのかを共有することができる。「これまでのノートの書式を模したフォーマットを作成できるので、慣れやすく移行しやすい。数値など選択肢のあるものはプルダウン処理もできるので記入も楽になった。管理事務所によって必要な書類は異なるし、書式なども違うものですが、eYACHOの帳票テンプレートのアレンジは自由度が高いので対応しやすいですね」(本宮氏)。

事故や災害などの非常時に必要な用具をまとめた棚をそのままのイメージでeYACHO内に整理。物品の欄をクリックすればそれぞれの貸し出し簿の書式につながるようになっている。

 その他、毎年恒例の全線徒歩点検の記録や工事変更検討会の資料などにもeYACHOを活用しているという(図3)。現在、eYACHOは全ての管理事務所、グループ会社で使えるようになっているが、その運用はそれぞれに任されている状況だ。管理事業本部 管理事業統括課の山下航輝氏は「今後は、社内の標準化に向けて検証と調整を進めていきます」と話す。同社における業務の効率化はさらに加速していきそうだ。

現場で計測した数値や調査結果についてリアルタイムで共有できる。オンライン動画アプリなども併用して現場と事務所をつなげば、タイムラグもほとんどなくスムーズに確認可能。現場で記入したメモ、写真添付などもその場で記録され、サーバーに保管されているので、記録の保管の手間もない。

 

【お話を伺った東日本高速道路株式会社のみなさん】

東日本高速道路株式会社 管理事業本部
本部付部長 金田 泰明 氏

東日本高速道路株式会社 技術本部
技術・環境部 環境課長 本宮 剛志 氏

東日本高速道路株式会社 管理事業本部
管理事業統括課 山下 航輝 氏

 

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