BIMで建築が夢をみる
#51 「J-BIM研究会」のBIM申請分科会の革新性
「J-BIM研究会」は「GLOOBE」「J-BIM施工図CAD」のユーザー会で2014年に発足、ゼネコン、設計事務所などのBIM担当者を中心に、BIM申請分科会などの専門部会を立ち上げ50社構成で活動を続けています。今回のテーマは確認申請なのでBIM申請分科会を中心に進めますが、今後は、機会を見て、他の分科会の活動も紹介していきます。合わせて福井コンピュータアーキテクト側ではユーザー各位からの参加を募集しています。
「GLOOBE」のBIMモデルを確認申請に使用できるように、確認検査機関である日本ERIの参加も受けてBIM申請分科会が発足したのは2016年12月です。それ以降、BIM申請分科会ではBIMモデルによる確認申請用テンプレートの作成や凡例表現の標準化などに取り組んできました。その際に明らかとなった問題点は、予想はできましたが、やっぱりそうなのかという内容でした。
確認申請時における図面表現や防火区画などの法的規制を表現する凡例などについて各社の事例を調査すると、会社ごと、場合によっては担当者ごとに、異なった扱い方をしていたのです。それではBIM以前の問題です。BIM申請分科会では、参加者ごとに異なる現状を調査して取りまとめることからスタートしました。
そしてBIM申請分科会では確認申請に適応できるように図面表現、凡例などを統一、標準化しました。確認申請という枠組みに限定されてはいますが、筆者が知る範囲では、BIMにおける組織を超えた標準化=インフラ整備が実現した我が国で初の事例となりました。
テスト(実)案件として6階建て共同住宅のBIMモデルを活用して電子認証によって済証を受領
そのようなBIM申請分科会が約1年半に渡る活動を経て、テスト(実)案件による検証を開始したのは2018年4月です。スターツCAMが6階建ての共同住宅をテスト案件として「GLOOBE」によってモデル化しました。スターツCAMは、日本ERIと福井コンピュータアーキテクトと協力して、BIM申請分科会メンバーが作成した確認申請用テンプレートを共同住宅用に整備、改良して確認申請を行い、済証を受領しています。
スターツCAMでは「確認申請に要する時間はほぼ半減できる」との感触も述べていますし、日本ERIは「BIMソフト本体を用いて申請チェックを行うので申請図面とBIMモデル間の整合性も確認でき、申請図面上では防火構造、建具、面積表なども異なる種別で色付けられるので識別しやすく、確認漏れも防止できる」と述べています。
これによって建築確認申請というmust=やらなければならない業務の革新を可能にしましたし、ソフトベンダー(福井コンピュータアーキテクト)、BIMユーザー、建築確認機関共に、ウィン・ウィンの関係を築くことに成功しました。
「GLOOBE」による建築確認申請のフロー(提供:スターツCAM)