受注生産と見込み生産とは 特徴や違いについて
2022年8月8日

ある製品をつくる際には、つくるタイミングや個数などさまざまな要素を検討する必要があります。このうち、つくるタイミングを表す用語が受注生産と見込み生産です。
今回の記事では、受注生産と見込み生産の概要、種類、特徴、それぞれどのような製品の製造に向いているのか、などを解説します。

受注生産と見込み生産とは 特徴や違いについて

受注生産と見込み生産

受注生産と見込み生産

製品をつくるタイミングは、受注の「前」か「後」にざっくりと分けられます。受注した後に製造する方法が受注生産、受注する前に製造する方法が見込み生産です。

受注生産では在庫を持たず、顧客から注文を受けた後に製品をつくり、製造後すぐに出荷します。多品種少量生産の製品によく用いられる生産方法で、いわゆるオーダーメイドも受注生産のひとつです。
一方、見込み生産は、製品の需要を見込んであらかじめ製品をつくっておく方法です。製造した製品は在庫として持っておき、顧客から注文を受けた際に出荷します。さまざまな顧客に販売できる汎用的な製品や、需要が安定している製品、製造原価の安い製品などの生産に適した方法です。

理想的には、在庫余りやキャッシュフローなどの観点から、全ての製品を受注生産にする方がいいとされています。しかし実際はうまくいかない場合も多く、製品の原価や製造時期などに応じて、受注生産と見込み生産が使い分けられています。

受注生産の種類

受注生産は、毎回同じ仕様の製品をつくる繰返受注生産と、一から仕様を考え直す個別受注生産に分けられます。両者の概要は以下のとおりです。

繰返受注生産

繰返受注生産は、同じ仕様に基づく製品を繰り返しつくる生産形態です。最初の生産時に製品仕様を決めてしまい、2回目以降に受注した際も同じ仕様で製品をつくります。カタログを用意して、いくつかの選択肢の中から最適な仕様を顧客に選んでもらうケースもあります。場合によっては、顧客の要望で規格や仕様を変更することもあり得ます。
繰返受注生産では、受注のたびに一から仕様を設計する必要がありません。そのため作業効率がよく、生産を管理しやすい点が特徴です。
自動車や家電、日用品といった規格が決まっている商品は、ほぼ全て繰返受注生産でつくられています。

個別受注生産

個別受注生産は、繰返受注生産とは逆に、受注のたびに異なる仕様で製品をつくる方法です。試作品の製造時や、多品種を少量ずつ生産する場合などに採用されます。「受注設計生産」「個別設計生産」ともよばれます。
オーダーメイド品をはじめ、顧客のさまざまな要望に対応できる点は個別受注生産の強みです。しかし、受注のたびに一から設計が必要になる点や、製造時に毎回トライアンドエラーが必要な点、コストや納期の見積もりが難しい点などはデメリットといえます。
個別受注生産でつくられる製品には、船舶や工場プラント、大型機械、オーダー家具、オーダースーツなどがあります。

受注生産の特徴

受注生産には、さまざまなメリット・デメリットがあります。

メリット

受注生産の場合は注文を受けてから製品をつくるため、大量の在庫を抱えるリスクがありません。注文のキャンセルや最小ロット数などの関係で多少在庫が出るケースはありますが、見込み生産と比べて在庫の量を大幅に抑えられます。結果として、在庫の保管や管理に必要なコストが減るため、製品を生産した分だけ効率的に売り上げを伸ばせるのです。
受注生産で在庫数を適切に管理すれば、在庫の廃棄数が少なくなるため、環境への負担を減らせます。
個別受注生産の場合は顧客の要望に応じて一から製品を設計するため、顧客のニーズに対応しやすい点もメリットです。顧客が本当に求める製品をつくれば顧客満足度がアップし、競合他社との差別化もできるでしょう。

デメリット

受注生産の場合、どうしても受注から納品までの時間が長くなってしまいます。顧客の需要に応じてすぐに販売することが難しく、販売機会を逃してしまうケースもあるでしょう。また、生産時にトラブルが起きて当初の納期に間に合わなくなれば、顧客の信頼を失ってしまうかもしれません。
さらに、生産途中に顧客から仕様変更を求められる可能性もあります。この場合、仕様の再検討や部品の再発注などに時間をとられるため、結果的に生産コストが増えてしまいます。このような状況を防ぐため、生産をはじめる前に顧客の要望をしっかりと聞き取り、設計に落とし込んでおきましょう。
注文の時点で完成品を確認できない点も、受注生産のデメリットです。どのような製品が出来上がるかは完成するまで分からないため、完成後に顧客から「イメージしていた製品と違う」とクレームを受ける可能性もあります。

見込み生産の特徴

受注生産と同じく、見込み生産にもメリットとデメリットがあります。
見込み生産とは、売れそうな量を予測し、それを元にした販売計画に沿って生産する方法です。受注が確定する前に生産が開始できるため、受注生産に比べて短い期間で納品できる点がメリットです。また予測の精度を高めれば、早い段階からの大量生産が行えるため、大量受注を引き受けることができ、競合他社をリードできるでしょう。
一方で予測が外れれば、大量の在庫リスクを抱えてしまう可能性もあります。その際、在庫を処分するために値下げをしてしまうと収益性の低下にもつながります。また予測が需要を下回れば、欠品からの機会損失につながる可能性もあります。

メリット

見込み生産の最も大きなメリットは、受注してから製品を発送するまでの時間(リードタイム)をできる限り短くできる点です。常に在庫がストックされているため、顧客が望んだときにすぐ製品を発送できます。このようなスムーズな取引は、顧客満足度の向上にもつながります。
また、「大量につくっても売れる」と高い精度で見込める製品の場合、見込み生産でたくさん製造しておけば、大量に受注することで単価が抑えられるため、大きな利益を上げられます。需要の予測が正しければ売れ残りも少なくなるので、在庫管理のコストも小さくなるはずです。精度の高い生産計画を立案できれば、競合他社よりも優位に立てるでしょう。

デメリット

見込み生産は、製品の需要を予測してある程度の製品をつくっておく方法です。そのため、需要を大きく見積もってしまうと製品をつくりすぎ、大量の在庫を抱える危険性があります。逆に需要を小さく見積もってしまうと、顧客から注文を受けても製品在庫が足りず、販売の機会を逃すことになります。安定した見込み生産を行うには、世の中の動きに目を向けて製品の需要を精度よく予測し、柔軟な生産計画を立てる必要があるのです。
見込み生産は、多くの顧客が使う汎用的な製品(加工食品や日用品など)の生産によく使われる方法です。これらの製品は、多くの企業が同じような条件で製造、販売しています。つまり、競合他社が多いのです。そのため、受注獲得や売れ残り回避のために製品を値下げする場合も多く、結果として収益性が低下したり、製造現場への負担が増えたりする危険性があります。

受注生産に向いている製品

受注生産は、生産量が少ない製品や、カスタマイズが必要な製品、オーダーメイド製品、原価が高いため在庫を持ちたくない製品、生産途中で顧客から仕様変更を求められるケースが多い製品などに向いている方法です。たとえば、機械設備や注文住宅、船舶、家具、寝具、金型、特殊な工作機械などは多くの場合、受注生産でつくられます。また、製品の開発段階で少量だけ試作品をつくりたい場合にも、受注生産が適しています。

見込み生産に向いている製品

安定した需要が見込める製品や、大量生産しやすい製品、多くの顧客が購入する汎用的な製品、スピーディーな納品が必要な製品などには、見込み生産が適しています。たとえば、加工食品や衣料品、家電など、スーパーや家電量販店で販売している商品の多くは見込み生産でつくられています。また、自動車や建売住宅なども見込み生産です。その他、製造原価の安い製品は多少在庫が残ってもあまり利益を圧迫しないため、見込み生産されるケースのほうが多いです。

まとめ

「受注生産」は顧客から注文を受けた後に製品をつくる方法、「見込み生産」は注文を受ける前に製品をつくる方法です。受注生産はさらに、同じ仕様の製品を繰り返しつくる「繰返受注生産」と、受注のたびに製品を設計し直す「個別受注生産」に分けられます。
受注生産の一番のメリットは、製品の在庫を最小限に抑えられる点です。ただし、受注から納品までの時間が長くなる、注文時に完成品を確認できないといったデメリットもあります。見込み生産の場合、受注から発送までの時間を短くできる点は大きなメリットですが、需要を精度よく予測しないと大量の在庫を抱える危険性があります。
受注生産と見込み生産には、それぞれメリットとデメリット、向いている製品と向いていない製品があります。各生産方法の特徴を正確に理解したうえで、どちらの方法で製品をつくるか検討しましょう。

詳しくは、ミスミ meviyのウェブサイトで。

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