ユーザー事例 & スペシャルレポート/有限会社 原忠
2023年4月3日

ユーザー事例

有限会社 原忠
原口 広

「建設ITガイド2023」掲載

原口広氏は、福岡県田川市内を中心に活躍する地場の工務店を経営。MiniCAD時代からのパワーユーザーで、3D設計から各図面作成、積算、パースとVectorworksの小回りの利く操作性を武器に早い段階から施主とのイメージ共有を図り、設計業務の効率化につなげている。共著として「VECTORWORKS ARCHITECTで学ぶ住宅設計のためのBIM入門」を執筆。

柔軟な建具表機能とVectorworksのBIMで確認申請

柔軟なVectorworks

これまでもVectorworksは柔軟な機能を搭載し、ユーザーの工夫を加えることで、さまざまな側面を見せてくれた。

例えば、今まで建具表に特化した機能はなかったのだが、バージョン2019に搭載されたデータタグを利用することで、自由なレイアウトの建具表を作成できた。そもそもデータタグはオブジェクトが持つデータを文字列として注記ができる機能であり、壁や床の使用材料を図面内に表記できるものである。このデータタグの特性を上手に活用し建具表として転用したのが「1分建具表」である。それぞれの建具をビューポートとしてシートレイヤに切り出し、ビューポートの注釈にデータタグを配置するという要領である。

標準のドアや窓に登録できない情報は、Vectorworksが古くから持つ「レコード」機能をフル活用していた。データタグでは、オブジェクトに連結されたレコードの情報も表記でき、それらのレイアウトも自由に作成できるため、Vectorworksの柔軟さがとてもよく表れた機能である。

データタグを使った建具表は、ある程度の作業は必要なものの、オブジェクトと建具表が紐付いているため、仕様変更にきちんと追従できるというVectorworksの柔軟なBIMの特性を持った便利な使い方であった。

それが今回「グラフィック凡例」という大きな機能が搭載された。

1分建具表

グラフィック凡例の基本機能

グラフィック凡例は、その名前が表すように「絵をともなう凡例」を作成できる機能である。対象となるオブジェクトは、Vectorworksの壁やスラブ、各種プラグインオブジェクトをはじめ、ユーザーが作成したシンボルも含めることができる。ドアや窓のようにプラグインオブジェクトが持つさまざまなパラメータを表記でき、データタグのようにオブジェクトに連結されたレコード情報も取得可能だ。

レイアウトはデータタグ譲りの自由さを持ち、自分好みの、あるいは事務所標準のスタイルを再現できる。データベース、データタグ、ワークシートのいいとこ取りをしたような機能となっている。

極め付きは、凡例イメージの柔軟さである。凡例として表示するシンボルなどの姿図を定義できるもので、好きな方向からの表示を設定でき、複数の姿図を配置することも可能だ。建具表以外の利用方法も考えられたVectorworksならではの機能に仕上がっている。さらに建具の寸法を自動表示できるので、前述の1分建具表はもうやめてしまって構わない。

グラフィック凡例建具表

グラフィック凡例の活用

グラフィック凡例の機能は多岐にわたる。まず、1種類の建具に複数の情報が割り当たっている場合などである。例えば、異なる部屋に同じ窓が設置される場合などでは、それぞれの建具に所属する部屋の情報を紐付けできるが、グラフィック凡例ではそれらの情報をどのように表示するかを設定可能だ。文字列の動的テキストの定義で設定をすれば思い通りの表示に変えられる。

建具の種類が多く、1ページに収まらない場合も簡単にレイアウトを変えられる。セルの表示とソートから現在のグラフィック凡例に表示したい建具にチェックを入れるだけで絞り込みが可能。次ページでは続きの建具を指定するだけだ。

表形式の建具表しか考慮されていないBIMツールもある中、Vectorworksはさまざまな業界で活用されている汎用ツールなので、設計者がグラフィック凡例を好みのレイアウトで作成できるため自由度は群を抜いている。

BIMのツールとしての成熟度がまた一段と高まった。

情報の表示絞り込み

VectorworksのBIMで確認申請

BIM機能が充実しているVectorworksだが、昨年には建築士会連合会と日本ERIとの共同企画で、各社のBIMによる4号建物確認申請プロジェクトに参加した。ここでも、VectorworksのBIMの柔軟さが発揮された。

Vectorworksのハイブリッドシンボル(2Dと3Dの形状を併せ持つオブジェクト)を活用することで、24時間換気扇などの壁面設備は図面表現と3Dモデルの表現を、きちんと両立できた。シンボルにもレコードを連結できるので、バージョン2023の新機能であるグラフィック凡例の一覧表に情報として記載できる。

さらに、天井設備(火災報知器)も同様のハイブリッドシンボルで作成することで、平面図における設備プロットを可能にし、内観パースでは設備を表示できる。

壁面設備

確認申請のための情報活用

確認申請で必要となるものの中で、延焼の恐れのある部分(いわゆる延焼ライン)がある。Vectorworksの中では汎用3Dモデルを作成できるので、隣地境界や前面道路中心を基準として、必要なオフセット部分に延焼ラインのボリュームを作成できる。さらにこの部分にかかる建具に対して防火戸の情報を付加することができ、防火戸のドアのみを色付けすることも可能だ。

BIMでは情報が重要なウェイトを占める。3Dモデルを作成するだけであればCGソフトでも構わない。だが、BIMを行うにはどれだけ情報を管理できるか、情報を表に引き出せるかが大事だ。

延焼ラインと防火戸

VectorworksでBIMを実施するメリット

Vectorworksの持つ柔軟性、汎用性、カスタマイズ性の上に成り立ったBIMは、他のツールではできないことが簡単にできる点が多い。デザインという設計の重要なポイントを押さえるのであれば、Vectorworksがそれに応えてくれる。

原口 広

有限会社 原忠

  • 所在地:福岡県田川市
  • 創業:1968年
  • 事業内容:注文住宅新築および増改築、建築設計、店舗改装、社寺建築
  • この事例は一般財団法人経済調査会の許可により 「建設ITガイド2023」で掲載された記事をもとに編集したものです。記事中の人物の所属、肩書き等は取材当時のものです。
  • 記載されている会社名及び商品名などは該当する各社の商標または登録商標です。 製品の仕様、サービス内容等は予告なく変更することがあります。

詳しくは、エーアンドエーのウェブサイトで。

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