ドローンや3Dスキャナー、ICT建機を使いこなす人材を育成
i-Constructionを支える神戸トレーニングセンタがオープン(トプコン)
2016年7月5日

2016年6月7日、神戸市西区にトプコンの「神戸トレーニングセンタ」がグランドオープンした。国土交通省の「i-Construction」推進で現場に求められる人材を育成する教育施設だ。ドローン(無人機)や3Dレーザースキャナーによる測量から、ICT建機やGNSS測量機による情報化施工、3次元CADによる設計まで、幅広いカリキュラムが設けられている。

神戸市西区にオープンした「神戸トレーニングセンタ」。3DレーザースキャナーやICT建機などを実習できる約3000m2のデモンストレーションエリアも併設されている

神戸市西区にオープンした「神戸トレーニングセンタ」。3DレーザースキャナーやICT建機などを実習できる約3000m2のデモンストレーションエリアも併設されている

   最先端の情報化施工技術を実習

盛り土上を3Dマシンコントロール対応のブルドーザーやロードローラーが行き交い、その脇では、3Dマシンガイダンス対応のバックホーが法面を仕上げていく。そして空中には地上の3D計測を行うドローン(無人機)が飛ぶ―――。

2016年6月7日に行われたトプコンの「神戸トレーニングセンタ」の開所式は、雨天にもかかわらず約200人の来場者が詰めかけ、最先端の情報化施工技術を興味深く見守った。

情報化施工のデモンストレーションを行うICTブルドーザー

情報化施工のデモンストレーションを行うICTブルドーザー

神戸トレーニングセンタの上空を飛行するドローン

神戸トレーニングセンタの上空を飛行するドローン

情報化施工やドローンのデモンストレーションを見守る約200人の開所式出席者

情報化施工やドローンのデモンストレーションを見守る約200人の開所式出席者

神戸市西区の工業団地内に開設されたこの施設は、情報化施工を実際に体験、実習するための施設だ。約3000m2の屋外デモンストレーションエリアと、40人が同時に受講できる屋内研修施設を備え、トプコンソキアポジショニングジャパンが運営を担っている。

   i-Constructionに対応できる人材を養成

国土交通省は2016年度から「i-Construction(アイ・コンストラクション)」という施策を始めた。

従来から国交省が取り組んできた情報化施工や、3次元モデルで設計や施工管理を行うCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を、調査・設計から施工、維持管理まで一貫して活用することにより、現場の生産性を大幅に向上させるのが狙いだ。

そのため現場では、3Dレーザースキャナーやドローンなどによる現況測量や、3Dマシンコントロールや3Dマシンガイダンスによって自動制御するICTブルドーザーやICTバックホー、施工用の3Dモデルを作るCIMソフトといった新しいツールを使いこなせる人材が大量に必要になる。

しかし、多くの建設業関係者にとって、これらの新しい設計・施工技術はなじみがないものだ。建設会社はどのように準備したらよいのかがわからず、関連会社も何を提案してよいのかがわからない。

そこでトプコンは神戸トレーニングセンタを開設し、こうしたICTによる情報化施工のノウハウや技術の体験や教育が行えるようにしたのだ。同社として、i-Constructionに対応した教育施設は、2014年9月に福島県白河市にオープンした「白河トレーニングセンタ」に続き、2カ所目となる。そして2016年の秋には、3カ所目が九州にオープンする予定だ。

神戸トレーニングセンタ開所式で行われたテープカット

神戸トレーニングセンタ開所式で行われたテープカット

   メニュー方式で技術やノウハウを習得

神戸トレーニングセンタで習得できる測量機器としては、地上型3DレーザースキャナーやMMS(モービルマッピングシステム)、トータルステーション、GNSS測量機、そしてドローンなどがある。

設計や施工データの作成は、オートデスクや福井コンピュータ、建設システム、iSPなどのソフトベンダーが提供する各種建設業向けソフトを学べる。

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座学を中心に行う研修棟(左)と研修室(右)

そして施工は3Dマシンコントロールや3Dマシンガイダンスに対応したICT建機による施工や、sitelink3DというシステムによるICT施工管理、そして重機や3D測量データによる出来形管理や出来高算出を実習できる。

神戸トレーニングセンタの特徴は、これらのスキルや技術をシステムごとの科目ではなく、ユーザーのニーズに応じた「i-Construction サービスメニュー」として提供していることだ。

i-Constructionに関する様々なスキルや技術をメニュー方式で提供

i-Constructionに関する様々なスキルや技術をメニュー方式で提供

例えば測量段階では、「基本パッケージ」として杭打ちや現況測量に必要なトータルステーションの実習を行い、その次の「3Dパッケージ」は3Dレーザースキャナーによる3次元測量の実習が追加され、「フルパッケージ」でドローンやMMSを使った広域3次元計測が加わるといった具合だ。

施工段階でも、「基本パッケージ」で3次元による出来形管理や施工管理を実習し、「ICTパッケージ」でICT建機による施工や転圧管理を追加、「ICTフルパッケージ」でICTによる施工管理を追加する、というようになっている。

また、点群データ処理や3次元モデル作成など、共通する3次元データ・ソフトの扱い方は「基本パッケージ」に含まれている。

測量のメニュー

測量のメニュー

施工のメニュー

施工のメニュー

検査のメニュー

検査のメニュー

   神戸トレーニングセンタ開設の背景

国交省の調べによると、日本の建設業者数は1999年度の60万者をピークに比べて、現在は約20%も減少し47万者となっている。また、建設労働者数は97年度の685万人をピークに減少し、現在は約26%減の約500万人程度となっている。

中でも工事現場での建設生産を担う技能工や建設作業者は120万人、技術・専門職は13万人も減少している。

この傾向が今後も続くと、10年後には建設業の労働力が大幅に減少することは避けられない。そこで建設業の生産性を向上させるために、これまでの作業体系を抜本的に見直すことが求められている。

減少する建設就業者

減少する建設就業者

自動車業界が1990年代以降、生産性を向上させた背景には、3次元CADデータによって設計、製造、検査のプロセスを一貫管理するファクトリー・オートメーションによる工程の自動化があった。

一方、建設業ではCADやデジタル化された測量機器などの導入はあったものの、施工段階では従来通りの手作業に頼る部分が多く残されており、自動化やIT化が遅れていた。

この建設業の課題に対し、国交省が打ち出した答えが「i-Construction」だったのだ。自動車業界と同様に、3次元設計データに基づく施工管理体系を、測量から設計・施工計画、施工、そして検査へと流れる建設プロセス全体に導入することにより、建設業の生産性を大幅に向上させることを狙っている。

3次元設計データによる施工管理体系を、建設プロセス全体に導入し生産性を向上させる「i-Construction」の概念

3次元設計データによる施工管理体系を、建設プロセス全体に導入し生産性を向上させる「i-Construction」の概念

   情報化施工での長年の経験を人材教育に生かす

i-Constructionを普及させる上で課題となる大きなボトルネックは、3次元データを使った情報化施工を理解する人材不足にある。

トプコンの情報化施工に対する取り組みは、1994年に米国のAGTEK社を買収したときにさかのぼる。

以来、1998年には現在の情報化施工の基本となる3Dマシンコントロールシステム「3D-MC」を開発。2004年には精度を高めた「mmGPS」、2008年には高速化した「3D-MC2」を発売するなど、20年以上にわたって日本の情報化施工に取り組んできた。

トプコンの情報化施工に対する取り組みは1994年以来、20年以上にも及ぶ

トプコンの情報化施工に対する取り組みは1994年以来、20年以上にも及ぶ

2016年は「i-Construction生産性革命元年」と言われる。トプコンは長年の情報化施工への取り組みを通じて培った技術とノウハウを、「神戸トレーニングセンタ」などでi-Constructionを支える人材教育に生かしていく方針だ

神戸トレーニングセンタの研修を担当するインストラクター。右端は神戸、白河、九州のトレーニングセンタの総責任者を務めるトプコン営業本部ICT施工/農業推進部の鈴木敏之部長

神戸トレーニングセンタの研修を担当するインストラクター。右端は神戸、白河、九州のトレーニングセンタの総責任者を務めるトプコン営業本部ICT施工/農業推進部の鈴木敏之部長

 【問い合わせ】
 株式会社トプコン
 営業本部 国内ICT-施工/農業推進部 テクニカル・サポート課
 TEL: 03-3558-2511
 ウェブサイト: http://www.topcon.co.jp/positioning_top/

 

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