“VR酔い”を防ぐのに有効なQUADROシリーズとは
BIM/CIM用のグラボ選びとの違いはこれだ(NVIDIA)
2017年11月17日

建築・土木業界では、景観検討や合意形成、営業活動に、実寸大で立体的に建物や土木インフラの3Dモデルを見られるVR(バーチャル・リアリティー)が使われ始めている。このとき“VR酔い”が起こってしまうと、せっかくのプレゼンテーションも逆効果になりかねない。その問題解決のコツは、グラフィックボードの選び方にあるのだ。VR酔いはなぜ起こるか、どんな製品を選んだらよいのかを世界的グラフィックボードメーカー、NVIDIA(エヌビディア)の田中秀明氏に突撃取材した。

VR用グラフィックボード「NVIDIA QUADRO P6000」を手に解説するNVIDIA エンタープライズマーケティングマネージャーの田中秀明氏

VR用グラフィックボード「NVIDIA QUADRO P6000」を手に解説するNVIDIA エンタープライズマーケティングマネージャーの田中秀明氏

   “VR酔い”は0.02秒の映像遅れで起こる

3次元モデルで建物や土木構造物を設計するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)による設計が普及する中、実寸大で立体的に3Dモデルを見られるVRによるプレゼンテーションに注目が集まっている。

しかし、BIM/CIM用の高性能ワークステーションにHMD(ヘッドマウントディスプレー)をつないで、顧客にHMDで周囲や上下を見回してもらうと、気分が悪くなる“VR酔い”を起こしてしまうことが少なくない。

VRによるプレゼンテーションの例。顧客にHMDを装着し、上下左右に首を振ってもらうと、その動きに追従して建物や土木インフラなどを見てもらうことができる

VRによるプレゼンテーションの例。顧客にHMDを装着し、上下左右に首を振ってもらうと、その動きに追従して建物や土木インフラなどを見てもらうことができる

HMD内の左右のモニターには、左右の目の視差に応じて角度や大きさを変えた2種類の画像が表示され、原寸大で立体的に見える

HMD内の左右のモニターには、左右の目の視差に応じて角度や大きさを変えた2種類の画像が表示され、原寸大で立体的に見える

その原因について、NVIDIA エンタープライズマーケティングマネージャーの田中秀明氏は「VR酔いの原因は、HMDを着けた人が上下左右に頭を動かしたときに、3D映像の動きが遅れてしまうことにあります。VR酔いを防ぐには、映像の遅れを0.02秒以内にすることが必要です」と説明する。

VR酔いを防ぐためには、HMDの動きと表示画像の時間差を0.02秒以内にする必要がある

VR酔いを防ぐためには、HMDの動きと表示画像の時間差を0.02秒以内にする必要がある

ディスプレーでBIM/CIMによるウオークスルーをサクサク行えるマシンを使っていても、VR酔いが起こることはよくあるのだ。いったい、何が問題なのだろうか。

「例えば、ハイビジョン仕様のディスプレーでウオークスルーを行うときは、毎秒6000万画素の表示性能が求められますが、VRの場合はその7.5倍の毎秒4億5000万画素の表示性能が求められるからです」(田中氏)。

BIM/CIMのウオークスルーをハイビジョン仕様のディスプレー(1920×1080画素)で毎秒30フレームで行うと毎秒6000万画素の表示速度だが、VRの場合はより高密度の画面(1512×2)が2面と毎秒90フレームの表示が求められ、毎秒4億5000万画素の表示速度が求められる

BIM/CIMのウオークスルーをハイビジョン仕様のディスプレー(1920×1080画素)で毎秒30フレームで行うと毎秒6000万画素の表示速度だが、VRの場合はより高密度の画面(1512×2)が2面と毎秒90フレームの表示が求められ、毎秒4億5000万画素の表示速度が求められる


VR用のNVIDIA QUADROグラフィックボードによって、BIMモデルの映像がHMDの動きにどれだけ素早く追従するかをデモしたYouTube動画

なるほど、従来のウオークスルーで十分な表示速度をもっていたとしても、VRの場合はその7.5倍の表示速度が必要となると、マシンにもワンランク上の性能が求められることになる。その解決策は、どこにあるのだろうか。

   「VR Ready」のグラフィックボードなら安心

「もし、机上のディスプレーで問題なくウオークスルーができるパソコンやワークステーションなら、グラフィックボードを『VR Ready』のものに変えるだけで、VR酔いのないプレゼンテーションができるでしょう」と田中氏は言う。

「VR Ready」とは、NVIDIAなどがVRでの使用に適したスペックをもつグラフィックボードの製品に付けた認定マークだ。

NVIDIA VR Readyのエントリー機種である「QUADRO P4000」(左)と最上位機種の「QUADRO P6000」(右)

NVIDIA VR Readyのエントリー機種である「QUADRO P4000」(左)と最上位機種の「QUADRO P6000」(右)

例えば、NVIDIA VR Readyのエントリー機種である「QUADRO P4000」は、小規模から中規模の建物のVRプレゼンに適している。メモリー容量が8GBで、4096×2160画素のディスプレー4面に対し、別々の視点から見たVR映像を毎秒120フレームで表示できる性能をもっている。つまり、毎秒42億4000万画素の表示速度をもっているわけだ。VR Ready製品がいかに高性能なのかがうかがえる。

また、ハイエンド機種の「QUADRO P6000」は、画素単位の表示速度はそのままだが、メモリー容量が24GBと3倍になる。大規模なビルや都市計画のVRプレゼンは、瞬時に大容量のデータを処理する必要があるため、メモリー容量の大きなグラフィックボードが向いている。

さらに大規模なBIM/CIMモデル用には2枚差しで使う「P5000 SLI」や「P6000 SLI」といった製品も用意されている。

NVIDIA VR Readyのグラフィックボード。メモリー容量とグラフィック性能によってエントリー機種からハイエンド機種までが用意されている

NVIDIA VR Readyのグラフィックボード。メモリー容量とグラフィック性能によってエントリー機種からハイエンド機種までが用意されている

VR Readyタイプのグラフィックボードなら、HMDの動きに対する画面の遅延も0.02秒以内で収まるのでVR酔いのない快適なプレゼンや検討をじっくり行うことができるのだ。

   日本HPのVR用ワークステーションにも採用

VR Readyタイプのグラフィックボードは、パソコンやワークステーションにも続々と採用されている。

例えば、BIM/CIMユーザーに定評のある日本HPのモバイルワークステーション「HP ZBook17 G4 Mobile Workstation」には、モバイル用の「NVIDIA QUADRO P5000」が搭載されている。グラフィックボードのメモリー容量は16GBで、画素単位の表示速度はP6000などと同じだ。

日本HPのモバイルワークステーション「HP ZBook17」とVR Readyタイプのグラフィックボードの組み合わせによるVR推奨構成の例

日本HPのモバイルワークステーション「HP ZBook17」とVR Readyタイプのグラフィックボードの組み合わせによるVR推奨構成の例

そして背負って歩けるウエアラブルタイプのVR用ワークステーションとして話題の「HP Z VR Backpack」には、16GBのメモリー容量をもつ「NVIDIA QUADRO P5200」が搭載されている。

背負って歩けるVR用ワークステーション「HP Z VR Backpack」にはVR Readyの「NVIDIA QUADRO P5200」グラフィックボードが搭載されている。「Archi Future 2017」に出展した日本HPのブースにて

背負って歩けるVR用ワークステーション「HP Z VR Backpack」にはVR Readyの「NVIDIA QUADRO P5200」グラフィックボードが搭載されている。「Archi Future 2017」に出展した日本HPのブースにて

   BIM/CIMでのVRプレゼンにQUADROを選ぶ理由

建設業界ではBIMソフトで設計したマンションやビル、住宅などを、着工前からVRで購入希望者にプレゼンする営業手法を取り入れるデベロッパーや建設会社などが増えている。

こうしたVR化の動きに、BIM/CIMソフトベンダーも対応し始めた。例えば、ダッソーシステムズの「CATIA」は3Dモデルを直接VRで見られる出力機能を搭載している。また、オートデスクの「Revit」は「Revit Live」というクラウド上でVRコンテンツの変換が行えるサービスを提供している。またグラフィソフトの「ARCHICAD」なども、ゲームエンジンの「Unity」用にデータを変換するとVRでのプレゼンが行える機能をもっている。

VRでのプレゼンだけなら、ゲーム用のグラフィックボードでも行えるがBIM/CIMソフトのユーザーは、圧倒的多数がQUADROシリーズを選んでいる。その理由は、主要なBIM/CIMソフトベンダーとNVIDIAが密接に連携し、各ソフトがQUADRO上でスムーズに動くように開発されているからだ。

BIM/CIMソフトは設計段階だけでなく、施工段階での活用も増えてきた。現場を3Dレーザースキャナーやドローン(無人機)で計測し、現場の3次元形状を数千万~数億の「点群データ」として取得し、BIM/CIMによる設計の元データや施工管理などで活用されることもある。QUADROはこうした用途にも問題なく使えるのだ。

BIMソフト「ARCHICAD」もNVIDIA QUADROと連携して開発されている。「Archi Future 2017」に出展したグラフィソフトジャパンのブースにて

BIMソフト「ARCHICAD」もNVIDIA QUADROと連携して開発されている。「Archi Future 2017」に出展したグラフィソフトジャパンのブースにて

3Dレーザースキャナーで計測した点群データのVRプレゼンもスムーズ

3Dレーザースキャナーで計測した点群データのVRプレゼンもスムーズ

また、万一、ソフトとグラフィックボードの連携に不具合があったときには、NVIDIAからしっかりしたサポートが受けられる。しかし、ゲーム用のグラフィックボードの場合は、BIM/CIMソフトに対してこうしたサポートはないので自分自身の責任で解決するしかない。納期が決まったBIM/CIMでの業務に、QUADROが選ばれるのにはこうした理由がある。

   VRによる遠隔地コラボ、HMDの低価格化も

BIM/CIMでのVR活用は、今後、ますます設計や施工管理の生産性を高める可能性がある。例えば、離れた場所にいるプロジェクト関係者同士のリアルなコラボレーションだ。これを実現したのが、NVIDIAの「Holodeck」というクラウドステムだ。

自動車開発の例では、クルマのVRデータをHolodeckにアップしておき、離れた場所にいる関係者がHMDなどを付けてWEBブラウザーからこのVRデータにアクセスする。

すると目の前にはクルマのリアルな姿がVRによって実寸大の立体で見えるとともに、離れた場所にいる関係者もクルマの周囲に“バーチャル集合”してデザインについて話し合うことができるのだ。

Holodeckでは、オートデスクの3ds MAXやMaya向けにVRデータをアップロードするためのプラグインが用意されている。Holodeckは2017年11月現在、アーリーアクセスプログラムとしてアプリケーション開発者などに限定して公開されている。一般向けには来年、公開される予定だ。

Holodeckによって遠隔地にいるプロジェクト関係者がVRデータの中で“バーチャル集合”し、デザインについて話し合うイメージ

Holodeckによって遠隔地にいるプロジェクト関係者がVRデータの中で“バーチャル集合”し、デザインについて話し合うイメージ

また、マイクロソフトでは、Windows10でVRやAR(拡張現実)に対応したシステム「Windows Mixed Reality」を提供している。このシステムに対応したHMDがパソコン関連メーカー各社から発売されており、価格も5万~6万円と従来の半額程度となっている。

HMDの低価格化によって、VRはコスト的にも敷居が低くなり、ますます建築・土木でのプレゼンや合意形成、コラボレーションなどに使いやすくなってきた。VR酔いのない快適なVR活用には、NVIDIAの「VR Ready」タイプのグラフィックボードをぜひ、選びたい。

【問い合わせ】
NVIDIA Japan<本 社>
〒107-0052 東京都港区赤坂2-11-7 ATT新館13F
Email: https://nvj-inquiry.jp/
ホームページ http://www.nvidia.co.jp/
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