今年で第9回を迎えた「Vectorworks教育シンポジウム2017」が、2017年8月25日(金)、東京・大手町サンケイプラザで開催された。「デザインとの邂逅(かいこう)~めぐりあい~」が今回のテーマだ。
開会のあいさつに立った横田貴史氏は、今年4月にエーアンドエー代表取締役社長に就任した。「教育シンポジウムが、Vectorworksを通じてデザインとともに多くの人々がめぐりあい、つながっていく場になってほしい。エーアンドエーとして環境や空き家などの問題解決に貢献していきたい」と語った。
午前の特別講演では、tomito architecture(トミト アーキテクチャ)の冨永美保氏、伊藤孝仁氏が土地や物、歴史、人のスキルの関係性に基づく建築の作り方を3つの実例から講演したほか、モーメントの平綿久晃氏と渡部智宏氏がブランド製品の個性を生かす店舗デザインの実例を語った。午後は2つの分科会に分かれ、OASIS加盟校の教職員がVectorworksによるCADやデザイン教育、駅や能舞台などキャンパスの外での実践的なデザイン教育について講演した。
Vectorworksを教育に活用する教職員や学生を対象にしたイベントならではの企画として、OASIS加盟校向け奨学金制度による学生の研究成果発表の場や、その成果作品の展示なども行われた。来場した約100名の教職員らは新しいデザイン教育の実践者としてコミュニケーションを図り、充実した1日を過ごしていた。
特別講演
半端の生態学
tomito architecture(トミトアーキテクチャ) 冨永 美保 氏(左)、伊藤 孝仁 氏(右) |
横浜国立大学大学院で学んだわれわれが2014年に設計事務所を立ち上げたとき、最初のオフィスとなった横浜駅近くの古民家には鳥居や崖、池などからなる大きな庭が3つあった。そのときは何となくきれいな庭だなとしか思っていなかった。
しかし、建物オーナーの親族たちが集まって行う、2月の初午(はつうま)祭に参加させてもらったとき、その庭は、集まる人の数に合わせたちょうど良い広さ、お供え用のサカキは庭から取ってきたものを使い、梅の木の開花に合わせて飛んでくるメジロが季節感を添えるなど、それらは人の手によって高度に設計されていたことに気づき、衝撃を受けた。
このときの体験が、われわれの建築設計に対する考え方のベースになった。生態学的な広がりのある中に建築を位置づけたいと思ったのだ。
もう一つ、考えていることに「半端」ということがある。一般的には「全部がそろっていない」「どっちつかず」などの意味で使われている。
しかし、世の中には半端でないものは少ない。一方「セミプロ的な料理の腕前」を持つ人や「週3日だけ時間を作れる」主婦、「線路に切り取られた三角形の残地」など、半端なものは非常に多い。これらはもっと表出し、建築デザインに取り入れていくべきではないだろうか。
こうした建築デザインを実践するために重視しているのが「観察/記述/取材/構築」というプロセスだ。
最初に紹介するのは「吉祥寺屋台プロジェクト」だ。吉祥寺はもともと格子の目のように農地割りがされていて、そこを斜めに横切るように中央線が建設された。そのため、上から町を見ると、線路と街路が交わる部分に、「ヘタ地」と呼ばれる三角形の土地がたくさんあることがわかる。
自主的な活動として、これらのヘタ地がどのように使われているのかを見てみた。四角い土地に比べると三角形の土地は使いづらい。店舗では商品を並べて屋外売り場にしたり、エアコンの室外機置き場や駐輪場・駐車場として使われたりしていた。歩道のタイルも、斜めに切り取られていた。
せっかく線路沿いのいい場所にあるのに、ヘタ地の本格的な活用は図られていないと感じたのだ。
そこで考えたのが、自転車とリヤカーを利用した移動式の屋台だ。これをヘタ地にとめてリヤカーのカバーを開くと三角形のテーブルとなり、屋台に変身する。そして、営業が終わればたたんですぐに移動できる。
「店を持ちたいが、今は資金がない」といった中途半端なふつふつとした思いを、この移動式屋台でかなえることができて、中途半端な三角形の土地も生かすことができると考えた。
次に紹介するのは横浜・野毛で手がけた「CASACO」というプロジェクトだ。築60年以上の2軒長屋を改装し、シェアハウスと地域のイベントスペースにした。
街路に面した6畳間を取り払って、半屋外空間にしたほか、2軒を隔てていた壁を取り払って大きな吹き抜け空間を作った。そして2階にはシェアハウス、1階には共同のキッチンやリビングなどを設けた。室内の見通しと強度を両立させるため、コの字の鋼製フレームの補強材を分散させて配置した。
建物のオーナーは、ここを地域の人が集える場所にしたいという強い思いがあったが、資金は潤沢ではなかった。また、地域の人の関心も薄く、ニーズを吸い上げるために行ったワークショップに来てくれたのは子ども1人という状態だった。
そこで地域のニュースを紹介するミニコミ誌を発行し、約200軒に無料配布を続けた。すると少しずつ、理解者が増えていった。
改修コストを節約するため、近くで古民家の解体があると聞けば、現場に出掛けていって古い建具や家具を譲ってもらった。また、横浜市からはピンコロ石が入った歩道の廃材を提供してもらい、一つずつバラしてピンコロ石を再生し、テラスの材料に再利用した。これらの作業は、地域住民と一緒に行った。
われわれはこの施設の設計者だけではなく、完成後は運営メンバーとなり、いろいろな人がやりたいことを実現できるようにするルールや仕組み作りなどにかかわっている。
1階のキッチンやリビングはシェアハウスの共用施設だが、利用時間をマネジメントしながら地域の人にも利用してもらえるようにした。例えば、日曜日に留学生が「世界の朝ごはん」というイベントを行ったり、金曜日の夕方からは料理自慢の奥さんたちが集まり、「ババーズ」というバーを開いたりして、地域の住民や親子、先生などのコミュニケーションの場となっている。
このプロジェクトをヒト、モノ、カネの側面から見ると、どれも中途半端かもしれないが、これらを積極的に生かすことで、地域に新しいスペースが実現した。
CASACOをきっかけに、地元の不動産会社もわれわれの考え方に関心を持ってくれた。そこから実現したのが、付近の古民家を改装して美容室にするプロジェクトだ。もともと建物を解体して駐車場にする予定だったが、たまたま美容室を開業したいという人が見つかったこともあって実現した。
古い建物の庭に面した部分には鉄筋コンクリートや鉄骨構造が採用されていた。そこには、庭をよく見せるために、開口部を最大限にとりたいという昔の設計者の意図が感じられた。
このほか、静岡県真鶴市で古民家をリノベーションした「真鶴出版」の2号店プロジェクトでは、周辺に残る魅力的な自然を生かしてどんな庭を造るかをまず考え、それに合わせた内部空間や建築をデザインした。
これらのプロジェクトで一貫していることは、どんな建築を作るかという方法を自分たち自身で考えていくことだ。ドローイングには、どの部分に何を関連づけるのかという考えを発展させる力がある。今後も、それを生かしながら、建築に取り組んでいきたい。
特別講演
アイデアの調理法
株式会社モーメント 平綿 久晃 氏(左)、渡部 智宏 氏(右) |
多摩美術大学の建築学科でともに学んだわれわれ2人が設計事務所「モーメント」を設立して今年で13年になり、スタッフも20〜30代のデザイナー10人をかかえている。
事務所を設立した当初からイッセイミヤケはクライアントであり、これまでに何件ものプロジェクトを担当させていただいた。イッセイミヤケのプロジェクトを中心に、われわれがどのようにデザインとかかわり、アイデアを醸成していくかという「アイデアの調理法」について語ろうと思う。
初めに紹介するのが「BAO BAO ISSEY MIYAKE」というアクセサリーブランドの某百貨店内で展開された期間限定のポップアップストアのデザインだ。
ここ数年、百貨店はフロア全体を統一したデザインでまとめることが増えてきた。そこで画一的な環境から店舗の領域を浮き立たせるため、BAO BAO ISSEY MIYAKEのブランドを象徴する三角形の連続したパターンで店舗を丸ごと「くるむ」ことを考えた。電車やバスなどでおなじみのラッピングの手法を用いた。
遠くから見ても店舗の壁や床、棚などが三角形のパターンで埋め尽くされているのがわかる。しかし、近づいていくと棚の内側などの部分はパターンの一部しか見えなくなり、逆にバッグなどの商品の方に目が行くようになる。家具はシンプルな直方体を鏡面仕上げにすることで、周囲のパターンが映り込み、一体化する。「くるむ」というデザイン効果は思わぬところに波及効果をもたらした。
同じBAO BAO ISSEY MIYAKEの日本橋某百貨店内のポップアップストアでは、「かこう」という手法で領域を浮き立たせた。アルミ蒸着された四角い風船を300個用意し、それを連結して店舗の外側を囲った。
店内の空調や、通行人の風圧で300個のバルーンが想定以上に揺れたが、よりインパクトが高まり面白い効果が生まれた。
バルーンは鏡のように人や、歴史ある百貨店の環境を昆虫の複眼のように映し出し、歩きながら見ると反射した風景が少しずつ変化していく。風船という子供も大人も親しみやすい素材で店舗を囲ったことで、思わぬ発見もあった。
3つ目は銀座のBAO BAO ISSEY MIYAKE。これはポップアップではなく、本設の店舗としてデザインした。
BAO BAO ISSEY MIYAKEのバッグを作るのは職人の高度な技術が必要で、現状日本でしか製作することができない。銀座の店舗ではその「手仕事」を象徴するデザインができないかと考えた。そこで用いたのが、「たたく」という手法である。
日本には古くから金属をたたいて表面に特有の表情を生み出す鎚起(ついき)という技術がある。アルミ材を鎚起し、細かな凹凸をつけ、店舗の全てを覆うことを試みた。
遠くから見た店舗は銀色に覆われているように見えるが、近づいていくと鎚起による微細な表情が浮き立ち、職人の手仕事による痕跡がじわりじわりと伝わってくるのがわかる。鎚起によって生じるアルミ材の表面の傷やひずみも味わいとなる。
次に紹介するのはISSEY MIYAKE MENという、メンズのポップアップストアのデザイン。2週間限定のポップアップストアを1度だけ行うのではなく、期間をおいて3回繰り返すという与件があった。
別の見方をすれば、ポップアップストアに必要な部材は解体し、次の使用に備えて保管しておく必要がある。そこで思いついたのが「たたむ」という手法。お店を「備蓄」するという発想である。
メインとなる素材に、「パルプモールド」を使った。古紙を粉砕し、型に流し込んで成型した板状の再生材で、用途に応じてプレス加工する。これらは卵のパッケージなどに使われている。
プレス前のパルプモールドは大きく波打っているが、この形をそのまま生かし、連結し壁材にすることで躍動感を表現した。また、重ねて強度を高め什器に変換した。パルプモールドの組み立ては簡単で、板同士をクリップで留めるだけの機構となっている。
これらの材料は、解体すると規格の段ボール箱数箱にきれいに収まる。輸送も保管も簡易に行うことができる。
このほか、21世紀のTシャツがメイン・コンセプトのブランド「me ISSEY MIYAKE 」の玉川店では商品を掛ける最小単位のフックに着目し、「つなぐ」という手法をとった。新宿店ではTシャツの質感を表現するため、断熱材の吹き付けによって「にせる」という手法をとった。
そして、最後は「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」の 上海の店舗設計について紹介したいと思う。日本国内だけでなく、世界中で愛されている製品のため、「世界共通」の店舗づくりが求められる。
しかし、現場は国によって内装工事の仕方や職人の技量は大きく異なる。世界で多店舗展開する多くのブランドは意匠を統一し、特殊な材質にいたっては世界中に送り現地で組み立てる方法をとることで、各国で共通のイメージを訴求することはできる。反面それぞれの店舗は金太郎飴のようになり個性や自由が感じられにくくなる。
その相反する条件を解決するために使ったのが「まとめる」という手法。天井に等間隔に配置されたボックスは、ラックをつり下げられる機能の他に、照明、設備を集約できる機構を有し世界共通の意匠として、それだけをデザインした。壁などは各国で入手しやすい素材を用い地域性を高める仕組みにした。
われわれがデザインを考える場合、直接的なモチーフをよりどころにすることは少ない。本質をとらえたキーワードとビジュアルイメージを結びつけることで、一見脈略が無いように感じることが丁寧に調理されることにより、直接的なものよりも強いインパクトを放つことが多いように感じる。いつ、どこで役に立つかはわからないが、今後もいろいろなものにアンテナを張って、新しいデザインを生み出していきたいと思う。
分科会A-1
人文系デザイン学科におけるCAD教育
駒沢女子大学 人文学部 住空間デザイン学科 教授 三戸 美代子 先生 |
駒沢女子大学人文学部住空間デザイン学科は2002年に空間造形学科として開設され、2014年に現在の学科名に改称された。そのミッションは、くらしの環境をトータルに考える「リビングデザイナー」を育てることにある。
カリキュラムは建築やインテリアを中心に、木工・陶芸・テキスタイルも横断的に学べるようになっている。文系の学部でありながら、一級建築士の受験資格も得られるのが特徴だ。
このカリキュラムの中で、CAD教育はコース共通の専門科目と位置づけられている。CAD教育を行う環境としては、教員用1台と学生用30台のパソコンを備えたパソコン室が2室ある。大学としてはネットワーク版のVectorworksを合計69ライセンス持っている。CAD教育以外の授業でも、VectorworksはPhotoshopやIllustratorなどと一緒に使われることが多いので、授業と自習を含め稼働率は7割を超えるほどだ。
このほか、3年生以上の学生は3~4割が学生単年度版を購入している。学年によっては半数が購入する場合もあり、自宅での学習や卒業制作などに使っている。
1年後期の「CAD I」、2年前期の「CAD II」の授業内容はそれぞれ、初めの10週でテキストによる基本操作を学び、続く5週でレベルチェックのための応用課題や即日課題を行う。テキストにはエクスナレッジムックの「10日でマスター!Vectorworks」を採用した。
市販のテキストは操作方法が順を追って細かく解説してあるので、授業の途中でつまずいた学生も、手順通りに進めれば授業についてこられるのが良い点だ。一方、気になる点としては、手順通りに操作しているだけでは、ゼロから作図するときに必要となる基礎製図の知識が理解不足になってしまうことがある。
2年後期の「CAD III」は、2年前期の「設計製図I」という授業で手描き図面として作図した住宅の図面を、Vectorworksのシートレイヤ機能を使ってレイアウトしてプレゼンテーションにまとめるという内容だ。
本学の「設計製図」は、建築だけにとどまらずインテリアを含めた課題になっているのが特徴だ。さまざまな角度から課題に取り組むことで、後の課題にも対応できる能力を身につけるのが狙いだ。
2年後期で行う「設計製図II」は、シェアハウスを設計し作図はCADの使用を推奨している。こちらの課題にも、建築とインテリアの両面が含まれている。
2年後期の「プレゼンテーション技法」は3年次の学外実習や就職活動に備えて、自身の作品をブラッシュアップし、ポートフォリオの制作を行う実践的な内容だ。これまでVectorworksだけで作ってきた作品を、Photoshopで加工したり、背景を入れたり数十ページにもわたる作品集としてまとめていく。
4年間の教育の集大成となるのが、4年後期で取り組む卒業研究だ。実質的には前期から8つのスタジオに分かれての指導が継続している。建築やインテリアはもちろん、陶芸などのプロダクト系の研究もプレゼンテーションパネルの提出が必須になっている。ここでも、CAD が学科必修であることが役立っていると考える。
卒業研究の成果は学内の発表会のほか、東京都心に会場を借りて行う卒業制作展でも発表する。そのポスターや案内状の作成も学生たちに任せている。
このほか、実際の賃貸住宅やカフェなどを学生の感性を盛り込んでリノベーションする「コマジョリノベ」や、調布駅近くの賃貸住宅を企画・提案する「コマジョクリエ」などの産学連携プロジェクトも行っている。
入学時には何もできなかった学生が、CADを中心とした実践的な教育を通してスキルを身につけ、成功体験を積み重ねながら、社会人へと成長していく姿は頼もしく思える。
分科会B-1
美大のデザイン教育
金沢美術工芸大学 デザイン科 環境デザイン専攻 教授 坂本 英之 先生 |
人口45万人の金沢市には先端と伝統が共存している。2009年には日本で7都市が認定されているユネスコ創造都市ネットワークの一つに選定され幹事都市として活動する一方、歴史都市としての性格も色濃く残っている。
金沢美術工芸大学は創立71周年を迎え、デザイン科は62年の長い歴史を持つ。産業界に貢献する人材を育成するのがミッションだ。学生は全国から集まり、少人数制の丁寧な教育によりデザイン科の就職率は100%を誇っている。
本学では常勤教員1人当たりの学生数が少ないのが特徴で、最も多い油画科でも4.2人、最も少ない工芸科では1.7人しかいない。
デザイン科の環境デザイン専攻には、ランドスケープ、建築、インテリア、プロダクト、グラフィックをそれぞれ専門とする5人の教員がおり、「5本の矢」として連携しながら20人の学生を指導している。
コンパクトな大学だが、工房設備は充実しており、順番待ちがなく作品作りが可能。また教員同士の間には、専攻の壁がない。
大学の設備は申請すれば24時間いつでも使えるほか、学内の立ち入り禁止日は年末や入試日など年間24日間しかない。そのため、金沢市民からは「不夜城」と呼ばれることもある。
学生もキャンパスライフをのびのびと楽しんでいる。運動会や美大際などの行事のほか、卒業式では学生全員が仮装して出席するのが伝統になってきた。
デザイン科の特色ある授業として、3年生を対象とした「リレー演習」がある。基本的なテーマはリノベーションだ。金沢市内で遊休化している地域資源を活用して歴史的、文化的に再生することが課題だ。持続可能性とともに今あるものよりも、さらに価値を高めることを目的として進めていく。
今年で5年目だが、2013年は公園、14年は広場、15年はコンビニエンスストア、16年は市庁舎分館、そして今年は町家をテーマにしている。
一つの課題をランドスケープ、建築からグラフィックに至るまでの各専門分野の視点で5人の教員がリレー形式で講義を進めていくのだが、最初のランドスケープでは周囲の景観や立地など大きなスケールでプロジェクトを企画し、続いて建築やインテリア、家具、そしてプレゼンテーションと、詳細化、具体化していく。
その境目となる授業には次の専門分野との引き継ぎを行うために明確な「リレーゾーン」の回を設け、次の専門を担当する教員と2人で講義・指導するのだ。
同じデザイナーでも、専門分野が違うと意見も微妙に異なり、時には対立することもある。デザインの世界ではよくあることだ。しかし、こうした違いを乗り越えて初めてデザインが完成する。デザイン界の現実を、授業の中で再現することで学生も学ぶことがある。
今年は町家がテーマだ。最初に町家を見て調査する。この作業には、顧客の体験価値を図式化するカスタマー・ジャーニーマップ、略してCJMという手法を用いている。これを具体的なプロジェクトに落とし込んでいく。
最初のランドスケープの分野では、建物の敷地や周囲の街並み、景観などの中で建物の位置づけを考えながら企画、立案していく。
続いて建築分野の授業では、建物のスタディーを行ったり、模型を作ったりして構想を仕上げていく。これを引き継いでインテリアの分野では、内装の色や素材感といったさらに細かいデザインに進んでいく。
その後のプロダクトでは、いすなど家具の形や大きさなどをデザインし、実寸で試作を行う。最後のグラフィックでは、模型や試作した家具の写真、建築CGなどのプレゼンテーション用の資料を作成する。
金沢美術工芸大学は公立大学で地域の大学だ。まちが教室であり、まちに学んで、まちに還すのがわれわれのミッションだと思っている。
分科会A-2
アキタリビング
~産学官連携による市街地木質化の取り組みについて~
秋田公立美術大学 美術学部 美術学科 景観デザイン専攻 准教授 小杉 栄次郎 先生 |
大学卒業後、二十数年にわたり建築家として活動するなか、2011年には木の可能性を広く社会に提案するNPO法人「team Timberize」の副理事長になり、2013年には発足したばかりの秋田公立美術大学の准教授となった。現在はこれまでのキャリアを生かしながら、大学教育に取り組んでいる。
秋田駅前はバブル経済の崩壊後に市街地の空洞化が進み、一等地が駐車場になったり、多くの客待ちタクシーが並んでおり、クルマはいるが人はいないという寂しい風景が広がっている。また、秋田駅にはバブル期にできた立派な東西自由通路があるが、人通りは多いものの通り抜けるだけで、人だまりはなかった。
この駅前広場の状況をなんとか改善できないかと思った私は、工学部の都市計画的なアプローチではなく、美大ならではの提案ができないかと、学内の文化人類学や美術史、ランドスケープの先生方と共働して、「人の居場所をつくる」というコンセプトのもと、駅前の平置き駐車場を芝生広場にしたり、駅ビルの上層部を木造で増築するなどのアイディアを盛り込んだ駅前広場の都市計画(秋田プルーラルシティー)という提案を作成した。
この提案を持って秋田市やJR東日本など、いろいろなところを訪ねて話をして回っていると、秋田県から地域の木材需要を増やすイベントをしたいという依頼が舞い込んできた。これが2014~2015年に実施した「市街地木質化実証モデル事業」として実現した。
この事業ではまず、どんな場所に木材が使えるかを調べる市街地木質化可能性調査を行った。
秋田駅の連絡通路のような半屋外通路のピロティ―部の軒天井や柱を木材で覆う場合や、古い耐火建築物に外装やルーバーとして木材を使用する場合などには、建築基準法的に防耐火性能は不要だ。
しかし、通路の内装として使うためには天井と壁は準不燃材料にする必要がある。ところが、床や家具は特に制限はないため、後ほどご紹介する実証モデルでも木製のジャイアントファーニチャーをデザインして、人の居場所を空間化している。親しみのある空間を具体的にビジュアル化したことで市街地木質化の可能性をリアルに一般市民に感じてもらうことができた。
次に安藤忠雄氏が設計した秋田県立美術館で、木材利用の可能性を提案する「Timberize AKITA展」を開催した。
東京や東北の大学の建築学生たちによる木造建築物提案や模型を展示したり、美術館のコンクリート打ち放しの柱を木材で覆ったりしながら実物大の展示を行い、市民に都市木造のスケールを体感してもらった。
そして最後は、秋田で一年を通して人の往来が多い秋田駅の中央改札付近に3つの木質化実証モデルを設置した。
一つ目は壁面を秋田杉で覆って木質化するリノベーションで、秋田への来訪者をまずは秋田杉の空間で出迎えるような空間づくりを行った。
残りの二つは自由通路に天然秋田杉の一枚板を使ったハイカウンターと、東屋のようなフォリーベンチといったジャイアントファーニチャーである。ただの通路だった場所に人の居場所をつくり、多様なアクティビティーを生み出したいと考え、デザインした。
その狙いは的中し、高校生が楽しそうにおしゃべりしたり、ちょっとパソコンを開いて仕事するビジネスマンなどの憩いの場になったりしている。
計画当初は、通路にモノを置くと通行に支障が出るなどの懸念もあったが、調査によって問題がないことが判明した結果、通路管理者の協力も得られた。
このプロジェクトの成功が引き金になり、今度はJR東日本によるJR秋田駅周辺整備プロジェクトが進行することとなった。秋田駅構内の待合室やみどりの窓口、観光案内所などの配置を見直し、待合室を木質化して名称も「ラウンジ」に改めた。
室内には「アキタリビング」というコンセプトのもと、秋田杉を使ったいすやテーブル、ロッキングチェアのほか、秋田県をかたどった各地域が分割可能な巨大なベンチも置いた。
このベンチのデザインや製作は、美術学科の今中隆介教授にお願いした。秋田県の地形を立体的に再現し、CNCルーターでウレタン材を切削してコーティングを施したものだ。
地方にはそれぞれ課題があるが、東京と違って産学官が近い関係にあるというメリットもある。そのおかげで、私は2013年まで秋田とは縁がなかったが、着任以降さまざまな立場の方の協力を得ることができたので、これらのプロジェクトを成功に導けたのではないかと考えている。
分科会B-2
旧小樽昭声会組立能舞台の復原を通して
北海道職業能力開発促進センター 居住系 講師 的野 博訓 先生 |
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構は、4年制の職業能力開発大学校を全国で11校、2年制の職業能力開発短期大学校を15校、そして6カ月訓練などを行う職業能力開発促進センターを全国各地に設けている。
小樽の組立式能舞台の復原プロジェクトは、私が今年3月まで勤務していた北海道職業能力開発大学校で学生と共に取り組んだ研究だ。まずは「復元」と「復原」の違いを説明しておきたい。
「復元」は失われたり消えたりしたものを新たに推測して作ること、今回の「復原」は始めの姿が改造などで変化した現状を元の姿に戻すことだ。旧部材や文献などの根拠が求められる。今回の復原プロジェクトでは、1935年に作られた部材を、1967年に撮影された写真の状態に復原した。
復原プロジェクトのきっかけは、2014年に小樽市民会館の倉庫から組立式能舞台の部材と思われるものが発見されたことだ。すべて道産材のマツ(エゾマツが多い)でできており、1967年に撮影された写真も見つかった。
ほこりまみれの部材は353個以上あった。これをすべて大学校に持ち込み、きれいに清掃して修理しながら組み立てた。その作業はまるでパズルを解くようなものだ。能舞台とは異なる部材も混じっていたので、これらを取り除く必要もあった。
約2カ月かけてでき上がった能舞台は、梁上部の梁や火打ち梁などが欠損していることがわかった。そこをスタートにして、2015年4月から翌年3月までの復原プロジェクトが始まる。図面もなく、手探りの状態だったが1年後には完全復原に成功した。
復原作業は353個の既存部材の実測調査から始まった。部材の写真を撮って状態を調査したほか、使用されている継ぎ手や仕口を図表で記録した。継ぎ手や仕口は詳細寸法を計測し、全部材の四面展開図も作った。
これらの作業には4月から9月までの半年間を要した。柱や梁などは80年前に作られた部材であるにもかかわらず、良質でねじれも少なかったことが印象深い。
そして平面図や立面図(正面・側面)、伏図(土台・足固め・梁)の7面図や、部材の3Dモデルを作成した。このほかヒアリング調査や文献調査を行った。
部材の113カ所が欠損しており、100カ所を修復する必要があることがわかった。そして順次部材の製作や修理に着手した。
能舞台の梁上にある欄干の部材は割れて、かすがいやボルトなどの金物類もさびており、どの部分に使われていたのかは全く分からなかった。折れて分断したり、欠けたりした部材は途中に埋木でつないだり、砂時計形の口契りという部材を挿入して連結した。
傷んだ部材を修復するよりも、新しく作った方が早いのは言うまでもなかったが、古い部材をできるだけ残して修復した。
舞台右後方にある脇鏡板は、現存していたが、ねじれており傷みが激しかったため、利用できない状態であった。扉を開閉させるレールや、無双窓という窓を備えた脇鏡板に新規に再生して製作した。復原部材の図面作成から製作まですべて学生が行っている。
これらの修復に使った材料についてだが、エゾマツは今、北海道でもほとんど手に入らないためトドマツを使用した。
復原した能舞台はとても美しい。80年前に作られた柱や梁には節がほとんどなく、今でもまっすぐであった。一方、われわれが新たに作った床部分は節が多い。しかし、節のない長さ5.4mの部材を用意するためには山から材料を切り出してくる必要があり、コストも膨大になってしまうのでやむを得なかった。
また、各部材の組立工程を194の手順で説明したマニュアルやCG動画、能舞台の縮小模型も作った。
復原にかかわった学生メンバーは、すでに7~8回、能舞台の組み立てや撤収を行い、慣れるにしたがって作業スピードは速くなり、作業マニュアルもいらないほどだ。この研究でさまざまな賞をいただくことができて、学生の自信にもつながったと思う。ありがとうございます。
A&A、Vectorworks教育支援プログラム
OASIS研究・調査支援奨学金制度 研究成果発表
2016年度のテーマは「五感で学ぶ」だった。研究・調査支援奨学金を授与された4グループの代表者が、研究成果を発表した。
地方都市再生の実践的研究
金沢美術工芸大学 堀場 絵吏さん、ほか11名 |
金沢市内の住宅地では、毎年100軒以上の町家が取り壊され、空き家も増え続けている。一方、古い町家に移住し「小商い」ともいうべき小さなビジネスを運営している人々もいる。これらの人々が集まる材木町を創造的な地域と位置づけ、町家を維持管理していくためのしくみと利用案を提案したい。
起業家や活動家は、浅野川に並行する通りに集まっているので、この通りを「新材木町通り」と名付け、キーポイントとなる場所に空き町家と居住町家を利用したコミュニティー施設と実験的な小店舗を作り、これらを起点に、新材木町を活気づけ、開発を進めていってはどうだろうか。
町家を改修したコミュニティー施設にはコーディネーターが常駐し、空き町家のオーナーと居住希望者のマッチングを図る機能を持つ案内所やカフェ、ワーキングスペース、ギャラリーなどを設ける。いろいろな人が気軽に入ったり、立ち寄ったりする開放的なデザインにする。
小店舗は街路の角に立地する居住中の町家の1階部分を改装し、物販スペースや吹き抜けを設ける。町家を認知させるため、浅野川の遊歩道を生かして飲食店の出店や、夏祭りなどのイベントも行う。
2016年12月17日には現地で、この提案のプレゼンテーションも行い、地元の有力者や大学関係者、新聞社など20人が参加した。そこには熱い人々が集まり、新たな情報も得られた。今後も継続的に提案を行っていきたい。
京都・宇治養鶏場跡施設のセルフリノベーションによる地域活性化ショーの実験
成安造形大学 加藤 翠子さん |
私が生まれ育った京都の宇治には、祖父母が経営していた養鶏場がある。今は廃業してしまったが、ここをリノベーションし、地域のイベントスペースとして活用することでにぎわいを取り戻せないかと考えた。
地元のことを知らなかった私は、地元のまちづくり会議に初めて参加した。これをきっかけに、まちづくり協議会の会長や高齢者施設の館長などに話を聞きに行くようになった。地域活性化の活動をしている学生社長が主催する24時間ぶっ通しの会議にも参加した。そこには京都を元気にするために何かしたいという約100人の仲間と会うことができた。
これと並行して友達に頼んで「まちおこしラボ」のロゴを作ったり、協力者を得るためのパンフレットを作ったりと、少しずつ準備を進めていった。
しかし、意外なところでこのプロジェクトは頓挫することになる。私の最大の理解者と思っていた祖父が敷地を使わないでほしいと言い出したのだ。かつて祖父が養鶏場を経営していたとき、においや騒音や衛生面などで地元の人たちによく思われていなかった。それでも、どうにか生業を続けてきて、今は静かに暮らしているのに、なぜ、ここに地元の人を呼ばなければいけないのかという思いがあった。この時、私は祖父の苦労を初めて知った。
その後、私は大学院生として地域活性化について研究している。その研究課題としてつい最近、「夢の実現研究所」というプロジェクトを立ち上げ、廃校になった京都市内の小学校の空き教室を使ったイベントや、気球にカメラをつるして成層圏まで飛ばし、その映像や音を使った作品作りなどを計画している。
亘理町仮設庁舎跡地の利活用計画
東北学院大学大学院 澁谷 翔さん |
東日本大震災で被災した宮城県亘理町の旧庁舎は、応急危険度判定によって危険と判定されて解体された。新庁舎は別の敷地に建設されるが、約9300m2の旧庁舎跡地の利活用計画は決まっていない。
私は大学の卒業研究で、亘理町のまちづくりについて研究した。今回の研究ではまず、それをもとに、敷地の接道部分が1カ所しかなく、使い勝手の悪い形状など問題を整理したり、周辺にある公民館や体育施設、温泉施設などの調査を行ったりした。
これらの資料をもとに、2016年10月と11月に新庁舎検討をテーマにした町民ワークショップを開いた。幅広い世代の18人が参加してくれた。3つの班に分かれて意見を分析したほか、私自身もファシリテーターとして参加し、町民の要望を聞き出した。
すると亘理町の活性化や子育て世代を根付かせるための施設の必要性が浮かび上がってきた。議論をもとに、町民を対象にアンケートを実施した。
その結果、80人の子どもが利用できる300㎡の学童保育施設、ステージや調理実習室などを備えた600㎡の生涯学習センター、そして新庁舎と連携する施設として、住民票の発行などを行うサテライト施設を設ける案に絞り込んだ。
具体的な跡地のゾーニング案として、接道部分をセットバックして人の出入りをしやすくし、これらの各施設をまとめた1棟の建物と奥の部分に公園を配置したゾーニング案を作成した。今後の敷地計画の草案として、利用してもらえればと思っている。
東北人が都会に出るための教科書
八戸工業大学 姉帯 愛莉さん |
「東京は怖い」というイメージを持つ東北の就活生は少なくない。では、いったい、何が怖いのか。人々の心の中に「妄想都市としてのトーキョー」ができあがっているのではないか。その実態を明らかにすることで、東京に対するハードルを下げるための研究を行った。
そこで八戸工業大学感性デザイン学科の3年生を対象にアンケートを行い、「東京に住んで働くイメージ」と「東京の人に対するイメージ」についての潜在意識をマインドマップにまとめた。
その回答には、東京の人は「自信家」「プライドが高そう」「社長がワンサカいる」「高級住宅地に住んでいる」などがあった。その一方で「頭おかしい」「すでに別次元」といった回答もあった。あこがれや期待を含むポジティブなイメージと、不安や引け目を含むネガティブなイメージが混在しているようだった。
そこで、「想像-実際」と「興味-不安」という2つの軸によるマトリクス図で分析してみた。その結果、働く姿への期待やあこがれ、人間関係に対する不安は、想像に基づいた気持ちであることがわかった。
最後に就活生が東京に対して抱くイメージは、東京で実際に働いている人も感じていることなのかをSD法によって分析した。東京に住んだ経験の有無と、就活中の学生の相関を取ると、はっきりした傾向が現れた。
その結果、東北の就活生は限られた情報から、心の中に「東京」に対する漠然としたイメージを構築していることが可視化できた。
総評
エーアンドエー株式会社 取締役 OASIS奨学金制度審査委員長 宮野 佳郎 氏 |
今回は「五感で学ぶ」というテーマだったが、どの研究発表も興味深いものだった。学業を進めながら、研究や調査に時間をとっていただいたことに感謝したい。それぞれの研究についてコメントしたい。
金沢美術工芸大学の堀場絵吏さんほか11名による町家の研究は、われわれが目にする観光地の金沢ではなく、一般の住宅地を研究対象としたところが興味深い。地元に住む学生ならではの着眼点から研究を進めたのが素晴らしい。
続いて、成安造形大学の加藤翠子さんは、京都・宇治の養鶏場跡地を利用した地域活性化をテーマに研究が始まったが、途中でテーマを変更しなければならない状況に陥った。当初、設定したゴールから研究が離れてしまっても、別の道を模索して探し続けることは重要だ。
3人目の東北学院大学大学院の澁谷翔さんは、2011年の東日本大震災で被災した亘理町の仮設庁舎跡地の利活用に焦点を当てて、学部の卒業研究をもとに研究を広げた。ワークショップでは町民に参加してもらい、自らファシリテーターとして意見を引き出していった。こうした活動は大変なことだが、地元に住んでいたことの強みが発揮されたと思う。
澁谷さんに限らず、自分が住んでいる地域や地元で、どんなことを自分でできるかという動機で研究調査を申し込む学生が多い。地元をよくしたいという問題意識で研究に取り組むことは大事だと思う。
最後に発表した八戸工業大学の姉帯愛莉さんの「東北人が都会に出るための教科書」では、東北の学生が就職活動をするに当たって、東京での生活や仕事に対する不安材料を考察した。その中でマインドマップという手法を使っていた。われわれ社会人も、多くのことを整理したり分類したりするのにマインドマップをよく使う。社会人になってからも、この研究の経験は大いに役立つだろう。
今回の発表はどれも、自分の身のすぐ近くで起こっていることをテーマに、「五感で学ぶ」という課題どおり、視覚や聴覚だけでなく五感のすべてを研ぎ澄ましながら、研究調査に取り組んでいただいたことに感謝したい。
2017年度の研究・調査支援奨学金制度のテーマは「デザインで笑顔をつくる」だ。多数の応募のなかから、厳正な審査によって次の5組の研究・調査支援奨学金授賞者が決まった。
●2017年度研究・調査支援奨学金授賞者
・成安造形大学 藤原 心平さん テーマ:「share-houses in Share-house」
・東北学院大学 大学院 門脇 悠さん テーマ:「東北学院大学多賀城キャンパス跡地の利活用について」
・日本工学院八王子専門学校 井上 友乃さん、他1名 テーマ:「現代の憩いの場」
・北海学院大学 野村 成美さん、他7名 テーマ:「学生による空き家セルフリノベーション実践研究-沼田町の魅力を体感するベースキャンプの提案-」
・名城大学 大学院 柴田 英輝さん テーマ:「現実空間と同期した仮想空間を持つ居室の指針」
OASIS加盟校学生作品集に収録された作品の中から、Vectorworks開発元の米ベクターワークス社(Vectorworks Inc.)が最優秀作品を選び、表彰する「Vectorworks Executive Prize 2017」には、大阪芸術大学の田彬農さん(指導教官:間宮吉彦先生、石田信行先生)が制作した「上野芸術区」が選ばれた。会場では、同社の最高経営責任者、ビプラブ・サーカー(Biplab Sarkar)氏からのメッセージを、エーアンドエーの横田貴史代表取締役社長が代読し、指導教官の石田信行先生に盾とVectorworks Designer 2017製品版が手渡された。
展示会場報告
講演に関連した実際の部材や模型などのほか、OASIS加盟校の取り組みをまとめたパネルなどを展示したコーナーが設けられ、講演の合間などの時間には参加者の注目を集めていた。
特別講演の会場外にあるホワイエでは、モーメントがポップアップ店舗のデザインで使用した銀色の風船やシート、パルプモールドのテーブル部材などのほか、本設の店舗で使われた断熱材による壁面内装やハンガー、鎚起によってたたき出されたアルミ板が展示され、来場者はじっくりと見入ったり写真を撮ったりしていた。
また、分科会の会場外では、秋田公立美術大学の小杉栄次郎先生の講演で登場したJR秋田駅ラウンジに設置された秋田県形のベンチや曲げ木を使ったいすの模型が展示され、注目を集めていた。
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エーアンドエーは今後も、Vectorworks教育支援プログラム「OASIS」によって加盟校のVectorworksによるデザイン教育や研究をサポートしていくとともに、OASIS奨学金制度によって学生の自由な研究を支援していく。教育シンポジウムは来年、10回目を迎えるが、加盟校同士の情報交流を支援するイベントとして、さらに充実した内容にしていく予定だ。
A&A.Vectorworks教育支援プログラム
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