現場の仕事を楽にする図面管理・現場管理アプリ「SPIDERPLUS」を開発・販売するスパイダープラス(本社:東京都豊島区)は、2021年3月30日に東証マザーズに上場した。数ある現場管理アプリの中でも、このアプリが現場のユーザーに広く受け入れられ、使い続けられるのはなぜなのか。代表取締役 CEOの伊藤謙自氏にその秘密を直撃インタビューした。
約800社、3万8000人のユーザーを持つSPIDERPLUS
「SPIDERPLUS」とは、建設業やメンテナンス業などに欠かせない、現場での図面管理や写真管理をクラウドと連携して効率的に行えるアプリだ。
現場にiPadやiPhoneを持っていくだけ。現場管理に必要な図面を見たり、工事写真を撮影したりできるほか、帳票まで自動作成できる。そして、現場で記録した情報は、クラウドサーバーで関係者全員と共有できるので、報告業務も楽に行える。
まさに現場業務でありがちな「移動のムダ」「手待ちのムダ」をなくし、即、生産性を向上してくれるツールなのだ。
●SPIDERPLUSの特徴
特徴1 | クラウドで会社や事務所メンバーと簡単に進捗・情報共有 |
特徴2 | 現場に持っていくのはタブレットだけ!現場と事務所の往復を大幅削減 |
特徴3 | デジタル図面に写真貼付、検査記録も簡単。多くの事務作業を現場で完結 |
特徴4 | 電子小黒板機能を標準装備、簡単に編集可能! |
特徴5 | 1クリックで記録帳票が作成可能! |
特徴6 | 1カ月に数十時間の業務効率化も可能 |
2020年12月時点で、「SPIDERPLUS」を導入したうちの70%は専門工事会社、25%弱がゼネコン、ライセンス数は38,000以上、ユーザー企業数は約800社にも上る。
そして、一度「SPIDERPLUS」を使ったユーザーは、99%以上が契約を更新して使い続けているのだ。
【顧客に支持される理由~その1】
ユーザーの心がわかる職人自らが開発
SPIDERPLUSがこれほどユーザーに支持されているのは、なぜなのだろうか。その大きな理由は、もともと設備工事の現場担当者によって開発したアプリだからだ。
スパイダープラスの代表取締役 CEOを務める伊藤謙自氏の前職は、ナント、配管やダクトの断熱工事を行う職人だった。
「1990年代の後半の見積もり作業は、紙図面から配管やダクトの長さを三角スケールで測り、電卓で集計していました。大きな工事だと1カ月もかかるので、工事を受注できなかった時のダメージは相当なものでした」と伊藤氏は当時の苦労を振り返る。
「われわれの仕事にあったアプリがないなら、いっそのこと自前で作ってしまえと開発したのがSPIDERPLUSの元になりました。このアプリのおかげで、1カ月かかった見積もりは1週間でできるようになりました」(伊藤氏)
現場最前線のユーザー目線で開発されたアプリはその後、カメラ付きのiPad2の発売に合わせてバージョンアップされるなど機能も進化。その後のクラウドの普及とともに一気に建設現場での支持を集めた。
ちなみに「スパイダー」とは、もともとアプリの開発時期に社内で呼んでいたコードネームだった。図面上でマウスを動かして数量を拾う軌跡がクモの巣のようだったため、この名前が付けられたという。
【顧客に支持される理由~その2】
建設会社のユーザーと現場密着の機能を共同開発
SPIDERPLUSのもう一つの特徴は、建設現場のユーザーのニーズに密着した14種類ものオプション機能が用意されていることだ。
その中には、ダクトの吹き出し口からの風量測定や照度測定、水圧計の連続測定など、様々な計測機器と連携したオプション機能も多い。
●SPIDERPLUSの豊富なオプション機能
こうした特殊な業務でのニーズは、机上でアプリ開発について検討しているだけではわからない。いったい、どのようにこれらのオプションが開発されたのだろうか。
「これらの機能はすべて、ユーザーである建設会社と共同で開発したものです。断熱工事ならともかく、他の工種のニーズはわれわれにはわかりませんから」と、伊藤氏はその秘密を明かす。
「当社では営業社員などがお客さんのところに出向き、現場でのお困りごとや機能開発の要望などを聞く勉強会を年間で2000回も行っています。ユーザーとの密接な関係を築いていくなかで、彼らのお困りごとを解決するオプション機能を一つ一つ解決していきました」(伊藤氏)。
その一例が、水道管やガス管などの圧力試験器との連携機能だ。以前は一晩中、圧力計の値を何度も計測し、記録する作業が現場担当者の負担になっていた。
しかし、この連携機能が開発されたおかげで、夜間の圧力変動が自動的に記録できるようになった。担当者は圧力計の設置と撤去の2回を行うだけでよくなり、移動のムダ、手待ちのムダがなくなり、仕事がとても楽になった。
建設業界では、鉄筋偽装事件や杭基礎の施工不良事件、配管などの貫通部となるスリーブの施工ミス事件などが起こってきた。それに対応するようにSPIDERPLUSに「配筋検査機能」「杭施工記録機能」などが加わってきたことも、顧客ニーズへの真摯な対応を物語っている。
【顧客に支持される理由~その3】
自社の断熱工事部門で現場での活用を徹底検証
スパイダープラスと言えば、ソフト開発専門のIT企業と思われがちだが、実は創業以来の断熱工事部門が今も営業を続けていることを聞くと、意外に思う人もいるだろう。
しかも、従来のグラスウールに代わり「アーマフレックス」という新しい断熱材を使い、最大で工期を33%短縮、コストを45%削減(自社比)、結露ゼロと、保温・断熱工事業界では高い競争力を誇っている。大手重工会社の冷凍機などに採用されるなど、施工実績は500社を超える。
SPIDERPLUSの事業が大きく成長した今、売上高に占める断熱工事の割合は1割程度になったが、同社の競争力を高めるために欠かせない機能をもっている。それは人材教育だ。
「新入社員教育の場として現場業務を体験してもらうほか、営業社員には月に1~2回は自社の現場に行ってもらっています。そこでSPIDERPLUSがどのように使われているのかを見たり、現場の生の声を聞いたりすることで、お客さんの気持ちがわかるようになる。これは他社にはない強みです」(伊藤氏)
マザーズ上場でさらに広がるネットワーク
スパイダープラスの経営理念に「SpiderPlus & Co.」ということばがある。「& Co.」が意味することの中には、ユーザー企業をパートナーと捉え、一体となり、仲間となって業界を変えていくという意味が含まれている。
「SPIDERPLUSの開発では、プロと組まない仕事は絶対にしません。オプションの開発であれ、プログラムの開発であれ、必ずその道のプロと一緒にやると決めています」と伊藤氏は言う。
ユーザーとの密接な連携を強みに成長してきたスパイダープラスは、2021年3月30日に東京証券取引所のマザーズ市場に上場した。
上場によって、企業としての信頼性が高まる、他社とのアライアンス(連携)が組みやすくなる、優秀な人材が獲得できる、資金調達がしやすくなる、といったメリットが期待できる。
伊藤氏は「上場は一つの通過点で、当社の顧客に対する姿勢は全く変わりませんが、資金調達がしやすくなることで、さらにスピーディーな対応ができるようになります」と言う。
「SPIDERPLUSと他社のシステムとのAPI連携をさらに加速して、現場管理のプラットフォームにしていきたいです。海外展開では、日本のユーザー企業も多く進出していしるアジア圏を中心に多言語化を図ったり、現地で多く活用されているAndroid版の開発を行ったりすることも考えています」と、伊藤氏は上場後の展望を語った。
【問い合わせ】 |
スパイダープラス株式会社 |
<本社> 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目12番5号 東京信用金庫本店ビル 7階 TEL:03-6709-2830(代表)/FAX:03-6709-2837 <西日本営業部、大阪営業所> ホームページ https://spiderplus.co.jp/ |