Archicadを大学教員、施工図屋さん、発注者はどう使う?
オンライン番組“るみ子の部屋”をのぞいてみた(グラフィソフトジャパン)
2021年4月12日


BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Archicad」のベンダーであるグラフィソフトジャパンは、「Archicad on Air」というオンライン番組を放映中だ。同社の看板スタッフ、志茂るみ子さんが毎回、建築のプロを招いてArchicadの活用方法を根掘り葉掘り聞き出すこの企画は、BIM界の“るみ子の部屋”とも呼ばれ、好評を博している。今回は設計者以外として、大学教員、施工図屋さん、発注者を招いた「Vol.3」の回をのぞいてみた。

BIM界の“るみ子の部屋”こと、「Archicad on Air」のひとこま

「みなさん、こんにちは。グラフィソフトの志茂です。今回は『進み始めたBIM、設計者以外のシーンで?』をテーマに、教育者、施工図屋さん、発注者の3組のゲストをお招きしてお話をお聞きします」───グラフィソフトジャパンがネット上で絶賛放映中のArchicad on Airは、同社の大阪営業所長を務める志茂るみ子さんのこんなフレンドリーな語り口で始まる。

オシャレでゆったりとした雰囲気の中で、各ゲストからArchicad活用を聞き出すこのオンラインセミナーは、一部からBIM界の“るみ子の部屋”と呼ばれるのもうなずける内容だ。

今回は金沢工業大学教授の下川雄一さん、アートヴィレッヂ代表取締役社長の原行雄さん、そして伊東屋の森脇英里子さん、ANALOGの池田暢一郞さんを招いた「Vol.3」の回を紹介しよう。

#1 「未来の設計者へのBIM教育」
   金沢工業大学教授 下川雄一さん

金沢工業大学建築学部建築学科教授の下川雄一さん

設計者以外のArchicadユーザーを招いた今回、最初のゲストは金沢工業大学建築学部建築学科教授の下川雄一さんだ。

2012年からArchicadを導入した下川さんは、同大学の建築教育で4年間という限られた期間に、CADやBIMの初歩からプログラミングを使った高度な活用スキルとともに、施工管理関係の仕事に就く卒業生が多いことも踏まえて、従来の「図面」もしっかり教える短期集中型の独自カリキュラムについて語った。

まずは1年生の「建築デザイン基礎」という授業では、3D造形の入門ツールとしてSketchUpを教える。続いて2年生の後学期をフルに使って、Archicadの基本的操作をみっちり教えている。

1年生から、いきなりArchicadを教えないのは、SketchUpと違って建築の構成を基本的に理解していないと難しいからだという。

さらに3年生の前学期に「建築情報デザイン」という授業で、プログラムで3D形状などを自動生成する「ビジュアルプログラミング」で、RhinocerosとGrasshopper」、そしてArchicadを接続する実習を行っている。

金沢工業大学でのBIM教育を語る下川さんとホスト役のるみ子さん

限られた授業時間で、BIMソフトとしてのArchicadの特徴をしっかりと学ぶためには、ある程度、操作面も教えることが必要と下川さんは語る。最初の課題は、前の学期の授業で学生が設計した住宅作品を、Archicadで入力することだ。

まずは3Dでモデリングをしっかり行い、後半でようやく図面の描き方を教える。その際はもう、2次元CADは使わず、Archicadの製図機能のみで行うという。建築業界でも“正統派”のBIM活用を、授業でも実践しているのだ。

ハンズオン的な指導が求められるBIM教育だが、2020年はコロナ禍で下川さんもオンライン授業を余儀なくされた。特に前学期はZoomによるリアルタイム授業ではなく、動画配信を行った。

例えば、Grasshopperを下川さん自身が操作しながら動画を録画し、後で無駄な部分を編集してカットするといった方法だ。動画編集という負担の大きな作業だったが、学生は何度も見て復習でき、先生は今後教えるのが楽になるというメリットも大きかった。

またこれまで約10年間続いてきた、能登町のリアルイベントでの展示や、自分の設計案やアイデアを伝えるリアルなコミュニケーション、そして中高生を招いて行うオープンキャンパスも、2020年度はコロナ禍により行えなかった。

その代替手段として、VR(バーチャルリアリティー)の仮想空間に集まって、コンペに学生が出す設計案をレビューする取り組みも始まったという。オープンキャンパスもソーシャルVR空間に大学の建物を建てて期間限定でアクセスしてもらうという方式で実施した。

VR空間上での作品レビュー

このほか、金沢工業大学の地元である野々市の市役所周辺をVR化して「バーチャル野々市」を作り、子どもたちにアクセスしてもらい、自由に自分だけの野々市空間を作ってもらうイベントも実施した。いずれもBIMだからこそできる教育や建築関係のイベントである。

さらにArchicadなどによるBIM教育は、卒業生の就職にも好結果を生み出しているという。例えばある学生は、在学中にArchicadとGrasshopperの活用スキルを磨き、博士号も取得。そして難関といわれるBIMコンサルタント会社への就職も果たした。

最後に下川さんは、デジタル技術は建築業界でも今後、さらに求められていく。高校生の皆さんには、デジタル技術によってよい建築や環境作り、新しい文化や技術を積極的に取り込みはじめた建築分野の門をたたいてほしいと語った。

#2 「“施工図屋”さんにとってのBIM」

   アートヴィレッヂ 代表取締役社長 原 行雄 さん

アートヴィレッヂ代表取締役社長を務める原行雄さん

2人目のゲストは、1988年の設立以来、三十数年にわたって建築施工図や実施設計を手がけてきたアートヴィレッヂ代表取締役社長の原行雄さんだ。

その間、89年にはCADを導入し、通信回線でデータを送るなど、建築実務でのICT(情報通信技術)も業界に先駆けて行ってきた。Archicadは2012年に導入した。

Archicad on Airのタイトルなどでは、同社のことを何度も「施工図屋さん」と呼んでいるにもかかわらず、あらためてその呼び方で合っているかを確認するるみ子さんに対し、原さんは「施工図屋とよく言われるし、実際、その通りです」と、優しく応じた。そのやりとりには、施工図を長年手がけてきた自負がにじみ出ていた。

建築設計事務所が描いた図面だけでは建物は造れない。ゼネコンが工事を受注してから、現場でのものづくりを行うために欠かせないのが施工図なのだ。そのため、大学で建築を学ぶ学生も、建設業界の仕組みがおぼろげにわかってくる卒業間際になって初めて「施工図」の存在を知る。

同社がArchicadの存在を知ったのも、ゼネコンでの研修に同社のスタッフが参加したことがきっかけだった。原さんはその機能に「なんだこれは、すごい」と驚き、無料体験版を1カ月使ってみて、「今後はこれになるな」と焦りを感じたという。そして5人の社員全員分のArchicadを導入し、使い始めた。

当初はチームワーク機能も十分活用できず、レイヤーの作り方も各スタッフでバラバラという手探り状態でのスタートだった。

アートヴィレッヂのスタッフと。Archicad導入当時より所員数も大幅に増えた(写真:イメージラボ河村)

その後、顧客である現場所長からの「あの時の図面はどうなっているの? 設計図、施工図、生産設計、製作図などを一式持っていなさい」と言われたことをきっかけに、モバイル端末でArchicadのBIMモデルや図面をいつでも参照できる「BIMx」をフル活用するようになったという。

それから新入社員の研修で躯体図や仕上げの図面の描き方を覚えてもらったり、ゼネコンにALC版や押し出し成形セメント板の納まり、システム天井を説明したりするのにもArchicadならではの3DのBIMモデルと2Dの図面の連携機能をフルに活用している。

現場でのものづくりに直結する図面として、「施工図は問題提起しないといけない。設計がおかしい部分を洗い出すのが施工図なので、そのためにBIMxに躯体図や平面詳細図も入れていつでも取り出せるようにしている」と、原さんは語る。

BIMxに入れたArchicadのBIMモデルや施工図を自ら活用し、設計検討を行う原さん

原さんはBIMxの活用法について、3Dモデルを使って派手なプレゼンテーションを行うというよりも、BIMモデルや2D図面を含めて多数の設計図書をまとめて見る機能に価値を見いだしている。

その理由は、施工図は工事の進捗(しんちょく)とともに常に変化しているからだ。一見、同じように見える施工図だが、その中身は鉄骨やサッシ、設備などの専門工事会社が決まるにつれて変わっていく。それを逐一見せられるのがBIMxのよさだと、原さんは語る。

ものづくりに直結する施工図屋さんならではアイデアも数々飛び出した。例えばBIMの数量集計機能を活用して建物を管理し、固定資産税の圧縮につなげたり、コロナ禍においては都心の現場に1人が常駐し、他のスタッフは地方やリゾートなど別の場所からネットワークで現場の業務を支援したりといった働き方改革などだ。

BIMはBuilding Information Modelingにとどまらず、今後はBusiness Information Managementのツールとしても活用する「BIM to BIM」を考えていると、施工図屋さんならではのBIMへの取り組み方を原さんは語った。

#3 「発注者からみたBIM」

   伊東屋カフェ事業部 森脇 英理子さん ANALOG代表取締役 池田 暢一郎さん

発注者として伊東屋カフェ事業部の森脇英理子さん(左)、その設計者としてANALOG代表取締役の池田暢一郎さん(右)をゲストに招いた

3組目のテーマは「発注者からみたBIM」だ。ゲストは発注者として東京・銀座に1904年に創業した老舗文房具店の森脇英里子さんと、店舗設計を担当するANALOGの池田暢一郞さんを招いた。

スタジオでの収録だったが、新型コロナウイルス感染症対策のため、ソーシャルディスタンスをとり、アクリルパネルを間に置くなどのテレビ局と同様に万全の対策で臨んだ。

伊東屋は2015年に本店を建て直した。るみ子さんはまず、伊東屋の森脇さんに、発注者としてBIMを使ったプロジェクトは、2次元CADの時代とどう違うと感じたかについて聞いた。

森脇さんは建て直しの3~4年前から、本店のリニューアルについて池田さんと一緒にプロジェクトを進めていた。当初は池田さんがBIMを導入する前だったため、模型やパースで計画を進めていたという。

その後、池田さんはArchicadを導入し、BIMを使ったプレゼンテーションが増えていった。そこで驚いたのは、目線の位置や店舗のレイアウトがしっかり立体で再現されていたことだった。

発注者と設計者の双方がBIMの導入によってメリットがあったことを引き出したるみ子さん

発注者である伊東屋のメンバーには、建築の専門的な知識はないが、Archicadを使ったプレゼンだと誰もがわかり、実際に建て直しが行われたときは、まるで知っている店に来たような錯覚にとらわれた。柱の寸法からディテールまで、すべてがその通りで、設計と実物の間にギャップがないことに驚いた。

伊東屋では店舗作りの際に、客の目線や什器の高さをとても大事にしているので、身長何センチの人だったらどこまでが視界に入るかなどを、その場で目の高さを変えて確認でき、打ち合わせ中に設計変更が行えたのも助かった。時間のロスがなく、打ち合わせがとても早く進んだことも助かった。

2018年、伊東屋が横浜元町店をオープンしたときも、池田さんのArchicadによるプレゼンは大活躍した。

例えば、何気ないレター用品の陳列什器なども、棚の位置を少し低くするとか、棚の上の方が見えにくいので棚板の角度を上げるといった、客目線を詳細に検討した上でかなり細かい寸法の変更を行った。

横浜元町店の設計に使われたBIMモデル。何気ないレター用品の陳列棚も高さや棚板の角度が緻密に計画されている

特注の什器や壁面の棚、内装までBIMモデルそっくりに完成した実際の店舗

別の角度から見たBIMモデル

実際の売り場

池田さんの方でも、Archicadを業務の効率化に役立てていた。

前述の本店の建て直しの時は、Vectorworksとform-Zという2つのソフトを使っていたが、3Dで作ってモノを2Dの図面にするときに書き直しが必要で、パースも固定された角度からしか見せられず、作業がムダと感じていた。

特に物販店舗やインテリアのプロジェクトはパースの重要性が高く、発注者にパースを見てもらわないと設計がリアルな皮膚感覚としてとられてもらえない。そこで一度、BIMにトライしようとArchicadを導入したところ、発注者の方と店舗のBIMモデルをウオークスルーしてもらいながら、中の形をスタッフ全員と共有できた。

こうしたプレゼンテーションには、池田さんはBIMxを使っているが、森脇さんの方では社内で3Dモデルを動かして見ることはあまりないという。またBIMxもデータが重くなると高性能のパソコンが必要になってくる。

そこでパースが必要な場合は池田さんの方でBIMxのスクリーンショットを撮って送っている。BIMxのレンダリング精度がかなり上がってきたことで、こうした使い方ができている。

発注者からの信頼を勝ち取るためにもBIMの導入はお勧めしたいと語る森脇さん

伊東屋では、設計内容を検討していく段階では、ほとんどBIMxしか見ておらず、BIMX上で「もう少し細くしてほしい」「これを右にずらしてほしい」といったリクエストを行っている。図面を見るのは発注直前の最後の確認段階だけだ。

その後、話は店舗のBIMモデルを使ったオンラインショッピングや、客の導線などのマーケティング分析に基づくレイアウト変更などにも及んだ。

最後に発注者としてのコメントを求められた森脇さんは、「発注者は図面を見ることに長(た)けていないメンバーも多い。設計者の意図が発注者にうまく伝わらず、一度失敗してしまうと、二度と発注はないと思う。クライアントの信頼感を勝ち取るためにも、ちょっと頑張ってBIMを導入する方がいいと思う」と語った。

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