建材・設備メーカーのLIXILは、ARCHICADなどのBIMソフト上で駐輪場やフェンスのデータを割り付ける自動設計ツールを開発した。BIMソフト上で部材を配置する部分を指定すると、一瞬のうちに並べてくれるのだ。手間ひまのかかる作業を自動化する「設計者ファーストⓇ」のツールは、BIMによる設計の生産性をさらに高めてくれそうだ。
駐輪場の配置計画を一瞬で自動設計
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)でマンションの駐輪場などで使われる屋根付きの「サイクルポート」は、駐輪場のエリアに複数列で並ぶことが多い。敷地を有効活用しながら、自転車の出し入れがしやすいように、数多くのサイクルポート部材を1つ1つ、手作業で配置するのは非常に時間のかかる作業だ。
ところが、LIXILが開発した「設計者ファースト」の自動設計ツールを使うと一瞬のうちにこの作業を完了できるのだ。
このツールは、ARCHICADなどのBIMソフトのアドオンツールとして機能する。
「サイクルポートの配置方法を選び、BIMモデル上で駐輪場の範囲を指定するだけで、実際に市販されているサイクルポート製品の大きさに合わせ、自転車が出入りするスペースを考慮して、自動割り付けします。または自転車の台数を入力して必要台数分を割り付けることも可能です」とLIXIL エクステリア営業部 エンジニアリング営業グループ主幹の山下克人氏は説明する。
配置パターンもサイクルポートを1列に並べる案や背中合わせに2列で並べる案などをメニュー上で選べるほか、配置後にサイクルポートの列を引き伸ばしたり、屋根の奥行きを変えたりすることも自由自在だ。
「このツールをインストールすると、ARCHICADなどのメニューバーに『エクステリア』というコマンドが追加されます。アルゴリズムによる自動割り付けで、フェンス・駐輪場をスピーディーにモデリングすることができます」とエクステリア商品開発部 商品戦略室主査の遠藤 雅人氏は説明する。
敷地の高低差を自動認識
自動割り付けはサイクルポートのほかフェンスや通路屋根も可能だ。例えばフェンスの場合は、フェンスのタイプを選び、平面図上でフェンスの中心線や地盤の変化点を指定していく。
すると、ツールが地盤の傾斜を自動的に計測して、フェンスを配置していく。傾斜に応じて割り付け図も自動的に確認でき、長さ調整が必要な端部の長さも図中に示される。
さらに、設計段階に応じて、パースや図面に表示する図面形状も単にフェンスであることがわかる「簡易表記」や、リアルな製品イメージまでかわかる「詳細表記」に切り替えて表示できるので、基本設計でも実施設計でも使える。
また、通路屋根は、通路上に部材を1つ配置し通路に沿って必要な長さを配置する。部材を1つ1つ置いていくのではなく、“伸ばしていく”という感覚で作業できる。部材の個数や配置間隔は、ツールに任せておけばよいので、ミスもなく、スピーディーに作業できる。
その後、屋根や支柱のタイプなどを変えたいときは、パラメータ上で一括変更できる。また、必要に応じて、支柱の基礎も自動設計できるのだ。
LIXIL エンジニアリング営業部 担当部長の西村雅雄氏は「建物の周囲に駐輪場やフェンスなどの外構がしっかり描かれたCGパースは、建物のデザインをいっそう引き立てます」とツールの効果を語る。
充実した属性情報で設計図書の作成も自動化
LIXILが自社製品のBIMデータをユーザー向けに提供し始めたのは2011年。ビルサッシやカーテンウォールのデータを個別物件に対して提供を始めた。
「LIXILビジネス情報サイト」(http://www.biz-lixil.com/)でのBIMデータの一般公開は、公共エクステリア用を2015年に開始し、2016年には衛生設備器具にも拡大した。
LIXILの提供するBIMデータは、豊富な編集機能やカスタマイズ性、納まりのバリエーションが特に優れている。
例えば、ビルサッシやカーテンウォールのデータは合計27点が一般公開されており、リアルな表現はもちろん、カスタマイズ機能でユーザーがサイズや窓数の組み合わせなどの仕様変更が行えるようになっている。
また、BIMデータ内には製品の型番や各種仕様が豊富にインプットされているため、図面作成や数量集計表の作成も大幅に自動化できる。
こうした特徴は、自動割り付けされたBIMデータも同じで、デザイン検討から基本設計、実施設計、そして施工での資材発注まで、引き継いで業務の生産性向上を図ることができるのだ。
LIXILが提唱する「設計者ファースト」とは
LIXILは設計者の日々の業務を第一に考え、高度な技術提案で建築図面作成を支援する「設計者ファーストⓇ」を重視して、設計者にBIMデータを提供してきた。
今回、開発した駐輪場やフェンスなどの自動割り付けツールは、手間の作業をスピーディーに行えるようにすることで設計者の負担を軽減するとともに、様々な配置パターンを比較検討して設計の品質向上をサポートするものだ。
LIXILは今後も「設計者ファースト」の観点から、非住宅エクステリア分野をはじめとするBIMデータの充実を図っていく方針だ。
●LIXIL のBIMへの取り組み LIXILは、「BIMのことを話し合えるコミュニケーションスペース」としてBIM CAFÉを開催しており、BIMについての困りごとや未来について話し合う場を設けている。 また下記サイト(https://www.biz-lixil.com/column/business_library/article05_001/)では、早くからBIMを導入している青木あすなろ建設の取り組みについて、BIM導入の経緯、使い勝手やメリットを交えて紹介している。 今回の「設計者ファースト」の自動設計ツールについて、対応BIMソフトなどの詳細は、下記のLIXIL ニュースリリースをご参照ください。 |
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