建設DX時代の工程管理シリーズ(1)
なぜ「工程’s」は建設DXを加速させるのか?(ウェッブアイ)
2022年1月31日

人手不足問題に直面する建設業で今、工程管理システムに注目が集まっている。中でもウェッブアイの「工程’s」をはじめとするオラーリオシリーズは、工事進捗や人、資機材の計画を“デジタルツイン化”することで、工程に潜む「ムリ」「ムダ」「ムラ」を未然に防ぐほか、数カ月先に必要な人や資機材の手配を前倒しで行える本格的なものだ。そしてBIM/CIMやロボット、工場製作などと連携しながら、建設DXを加速する引き金にもなりそうだ。

高機能な工程管理ソフト「工程’s」の画面。見た目はおなじみのガントチャートで、表計算ソフトやCADと同じように工程の計画や変更が簡単に行える

   建設DXの本格化に伴い、導入が急増

「当社として初めての製品である『工程’s』を発売したときから、常に10~20年後の建設業を考えながら、製品開発に取り組んできました」と語るのは、ウェッブアイ(本社:東京都江東区)の代表取締役社長、森川勇治氏だ。

「工程’s」とは、工事現場の工程管理をスマートに行うためのソフトだ。2003年に発売されたこの製品をはじめとする同社のオラーリオシリーズソリューションは、建設業はもとより、重工業やエネルギー、製造業など様々な業種で2000社を超える企業に導入されている。プロジェクト管理や工程管理の分野ではリーディングカンパニーの位置づけとなっている。

「工程’s」+「Promio」を活用し、iPad上で工程表を表示した例

建設業では、発売当初に導入以来、現在まで活用し続けている大手建設会社もある。火力発電所の建設工事など、土木、建築、設備、機械など多数の専門工事会社や協力会社が参加する大規模プロジェクトを中心に活用されてきた。

そしてここ2~3年、導入する建設会社が急増しはじめた。

「その背景には、建設業でのデジタル化による生産性向上の機運が高まってきたことが上げられます。BIM/CIMの普及で建設分野のデジタルトランスフォーメーションの動きが本格化してきたことや、建設業の海外進出、ベテラン技術者の定年退職に伴う、施工ノウハウの伝承などの課題が顕在化してきたこともあります」と森川氏は説明する。

これらの課題のソリューションとして、なぜ「工程’s」に注目が集まっているのだろうか。

   ガントチャートの裏でネットワーク計算を自動処理

「工程’s」の見た目は、おなじみのガントチャートで、表計算ソフトやCADのように工程の計画や変更などが簡単に行えるようになっている。しかし、その裏では「ネットワーク工程表」(PERT)の仕組みに基づいた本格的なネットワーク計算処理が行われている。

ネットワーク工程表とは、一つ一つの作業を矢印で表し、工程の順につないだものだ。その特長は、(1)各作業の順序と工期がはっきりわかること、(2)工期の遅延に直結する作業をつないだ「クリティカルパス」がわかること、(3)各作業に必要な人数を「山崩し」によって平準化できること、などガントチャートにない強みがある。工期を遅らせず、かつ人員を増やさずに、施工管理を行うことができる。

一方、ネットワーク工程表のデメリットは、作成や山崩しがガントチャートに比べて複雑で、計算に時間がかかることだ。土木施工管理技士の2次試験でも毎回、クリティカルパスや山崩しを手作業で計算する問題が出題されるので、その大変さを知っている人も多いだろう。

ネットワーク工程表のイメージ。作業の節目を○印、各作業を矢線で表す

山崩しのイメージ。縦軸に作業に必要な人員数、横軸に日数をとり、1日の必要人員のピークを下げるようにガントチャートを調整する

その点、工程’sはガントチャートを修正するだけで、バックグラウンドのネットワーク計算が連動し、全体の工期などが自動的に計算される。また、手作業だと非常に手間ひまのかかる山崩し計算も、一瞬で終わるのだ。

   工程の計画と実績をデジタルツイン化

「工事のコスト、工期、品質はそれぞれ相反する条件になります。『工程’s』をはじめとするオラーリオシリーズは、限られた人的リソースを最大限に有効活用し、ムリ、ムラ、ムダのない工程を計画したり、数カ月先の作業日に必要な鉄筋工や型枠工の人数を予測してあらかじめ手配したりすることができる、ただ1つのソリューションと言っても過言ではありません」と森川氏は説明する。

「工程’s」の特長の1つ目は、工事の日程に変更があった場合、工程のバーを移動して日付を変更すると後続する工程も自動的に移動する「後続移動」機能があることだ。もちろん、表計算ソフトやCADで作成した紙ベースの工程表では、こうはいかない。

工程の連動機能。先行する工程のバーを動かすと後続する工程も自動的に移動する

工程の連動機能。先行する工程のバーを動かすと後続する工程も自動的に移動する

2つ目の特長は、「マルチディメンジョンキューブ」という機能があることだ。これにより、一つの工程表を複数の視点から検討することができる。

例えば、専門工事会社ごとに、自社に関係のある工程表だけを取り出して見られる。複数の協力会社が出入りする現場の工程表は非常に複雑なものになるが、同じ工程表を(1)協力会社ごと、(2)工種ごと、(3)階ごと、(4)CADから取り込んだモデルごと、のように視点を変えてシンプルな形で確認することができる。

「マルチディメンジョンキューブ」は他にも、着工から完成までの「全体計画」、毎月の工程を表す「月間計画」、毎日の詳細な工程を表す「詳細計画」など、一つの工程表を様々なスパンで確認したい場合や、リソースの観点から工程を調整したい場合にも活用できる。

工程を様々な切り口で見られる「マルチビュー機能」。リソースの面で工程を見たところ

3つ目の特長は、単一の現場だけでなく、複数の現場やJV(共同企業体)をまとめた工程調整や山崩しが行える機能だ。場所的に近い複数の現場で、鉄筋工や型枠工などの人的リソースのスケジュールを共有し、調整することで、現場にとっても職人にとっても、ムリ、ムラ、ムダのない工程を組むことができるのだ。

工程’sの自動山崩し機能

「こうした複雑な工程調整を手作業で行う場合に比べて、工程’sは100倍の生産性があるとの調査報告があります。さらに弊社製品PREGAREを併用すると、当初に計画した工程から最終的に実行された工程まで、各バージョンを記録として残せるので、後で別の工事の工程作成に利用できます。これが施工ノウハウの伝承につながるのです」と森川氏は説明する。

工程’sは、工事現場で行われる一つ一つの作業について、前後作業とのつながりや開始・終了日、そして必要人員数などを「デジタルツイン」(デジタルの双子)化しながら、工程の計画・実績の記録とノウハウの継承を実現するソフトなのだ。

   世界三大ソフトの一つが“源流”に

つまり工程’sとは、見た目は日本の工事現場で慣れ親しまれているユーザーインターフェースを採用しながら、その中身は国際標準で用いられるネットワーク計算を使って工程管理を行う“和魂洋才”のソフトなのである。

こうしたソフトが誕生した理由は、ウェッブアイが2000年に創業したときの経緯にある。当時、世界で使われていた三大プロジェクト管理ソフトの一つを扱う外資系企業の日本法人に森川氏は在籍していた。

1995年頃から、プロジェクト管理ソフトは各国の文化と独自に融合しはじめ、日本ではガントチャート上に進捗度合いを描き込んで折れ線グラフ化した『イナズマ線』などが要望されるようになってきた。

「海外で使われている表現と正反対の表現もあるため、英国本社に日本特有の表現にも対応できる機能を開発しようと提案したのですが、難しすぎると却下されました。それなら、自分たちで日本の文化に適したプロジェクト管理ソフトを開発しようと、私を含む25人で現在のウェッブアイを設立しました」(森川氏)。現在、同社は社員約100名を数え、拡大を続けている。

ウェッブアイ代表取締役社長の森川勇治氏

今後、日本の建設業が海外プロジェクトに本格的に乗り出したときも、すべての工程情報をデジタルデータで保持する「工程’s」なら、相手国で使われている表現方法に合わせて表示をカスタマイズするだけで、工程情報をそのまま利用できるのだ。こうした工程’sの国際性にも、将来を見据えた開発姿勢がうかがわれる。

   工程’sが「建設DXへの道」を切り開く

日本の人口は今後、22世紀以降まで減少が続くと予想されている。建設業でも、より少ない人数で多くの仕事をこなすために、生産性向上が喫緊の課題として求められており、建設DXの実現に対する期待が日増しに高まっている。

その第一歩が、工程管理などの現場業務をクラウド化することで、まずは「移動のムダ」を徹底的になくすことだろう。

工程’s にも、1つの工程表をクラウドで複数の人が同時に共有し、書き込みができる「Planow」や、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末での活用を可能にする「Promio Orario」、そして社内の基幹システムと連動して幅広い部門と予算やコスト、進捗状況などのデジタルデータや工程表を一元管理できる「PREGARE」などのソリューションシステムがオラーリオシリーズとして用意されている。

これらのシステムによって、移動のムダをはじめ、二重入力など様々な工程管理業務上のムダを省くことができる。

複数の部門や協力会社で工程’sのデータを共有、同時編集できる「Planow」

工程’sのデータは「Promio Orario」を使うとスマホやタブレットでも活用できる

しかし、建設DXの真価は、その後の取り組みにかかっていそうだ。

工事現場でも、工場設備を使って建物などの部材を作る「プレハブ工法」や、コンクリート躯体を自動的に造る建設用3Dプリンター、様々な施工用ロボットなど、これまで人間が手作業で行ってきた仕事を大幅に省力化するための技術や工法が続々と開発されている。

肝心なのはこれらの新技術や新工法を使って、工事の各工程をムリ、ムラ、ムダなくスムーズにつなぎ、一連の流れとして竣工まで持っていく工程計画力となるだろう。

ウェッブアイでは、こうした未来の建設業のワークフローをにらんで、クラウドによるリソース調達を行うためのシステム開発を着々と進めている。

例えば「工程’s」と連動する業務マッチングプラットフォーム「オラーリオ・クラウド・プラットフォーム」(OCP)を開発し、2021年12月に発表したほか、2022年6月にはAI(人工知能)によってオンデマンドの受発注を可能にする「OCP-エージェント」サービスも提供を開始する予定だ。

工程’sと連動し、業務マッチングを行う「オラーリオ・クラウド・プラットフォーム」の概念図

工程管理ソフトは今、非常に多くの製品やサービスが発売されている。これから10~20年後の建設業をにらんで、工程管理データを知的資産として残し、さらに建設シミュレーションや現場業務の自動化まで活用した建設DXを視野に入れるなら、「工程’s」が一つの選択肢になりそうだ。

【問い合わせ】
株式会社ウェッブアイ
<本 社>
〒135-8071 東京都江東区有明 3-6-11 TFTビル東館 9F
TEL:03-3570-2391(代表)、FAX:03-3570-2393
ウェブサイト https://www.webi.co.jp/
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