デジタルネーティブ世代の発注者、国交省職員にBIM講習! Revitによる簡易モデリングとBIM活用方法を1日でマスター(オートデスク)
2022年2月7日

国土交通省九州地方整備局は2021年12月、同局の営繕担当職員13人を対象に4日間にわたるBIM研修を行った。この研修はオートデスク、グラフィソフトジャパンの2社が講師を担当し、うちオートデスクが担当した12月14日~15日は、BIMの概要やRevitを用いた簡易なモデリング実習、実務に即したBIMモデル活用法などの講習を行った。受講者は入省1~3年目の“デジタルネーティブ世代”だけあって、BIMモデルの操作も短時間でマスターしていた。

2021年12月15日、Revitを使って簡易なBIMモデルを作成中の営繕担当職員たち

 8階建てビルを題材にモデリング実習

「次は、平面図の下に集計表を配置してみましょう。できた人は、手を上げてください」と、講師が言うと、受講者の中から次々と手が上がる―――2021年12月15日の夕方、福岡県久留米市にある九州技術事務所で行われた営繕担当職員を対象としたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)研修は、終盤を迎えていた。

この日の午前中は前日の座学に続き、受講者が1人1台のパソコンを操作しながら、オートデスクのBIMソフト「Revit」を使って、8階建てのオフィスビルを題材としたモデリングの実習が行われた。

講師を務める工学院大学建築学部教授の岩村雅人氏。課題となった8階建てのオフィスビル。簡易なBIMモデリングを半日で行った

写真右側の画面で講師の操作説明を確認しながら、左側のパソコンで自らマウスやキーボードを操作し、RevitでBIMモデリングに取り組む受講者

Revit内で場所を設定し、建物が落とす影が日時によって変わる様子を画面上で確認しながら、日影解析の操作も簡易に体験

午前中は構造体のほか、カーテンウォールなどのファミリ(=Revit用のBIMオブジェクト)を使ってビルの外装を仕上げ、パースや面積表も作成した。

午後は実務レベルのモデルを実際に触りながら、内装仕上げ情報を仕上げ表に見やすくまとめる方法や、モデルに入力されている情報を活用して、フィルタリングなどの操作によって、分かりやすく図面の色分けする方法を、法申請図の作成を例にしながら学んだ。

一般に公開されているBIM関連委員会の資料なども参照しながら、実務で活用する時に、どういった細かい操作をしているのか、そして、どんなところに今後の課題があるかなども解説した

九州地方整備局では、2020年1月に地方整備局の営繕部門としては初めて、営繕事業の発注者を対象にBIMモデルの操作演習を交えた研修を九州技術事務所で開催した。今回の研修は、これに続く2回目として行われた。

BIM研修が行われた九州技術事務所の構内(左)。研修には多くの報道陣も駆けつけた(右)

研修を企画した九州地方整備局営繕部 官庁施設管理官の浅野智氏は「発注者自らがBIMモデルを作ることはありませんが、作成されたBIMモデルを開いて動かしたり、BIMモデリングの基本操作を体験したりしておくことは、発注者としてよりよいマネジメントにつながります」と、研修の目的を説明する。

 発注者としてのBIM活用法を学ぶ

講師を務めたのは、工学院大学建築学部教授の岩村雅人氏と、日本設計プロジェクト管理部BIM室主管の本間智美氏だ。

BIMモデルから図面や集計表を作成する演習までがひと通り終わった後は、さらにBIMモデルを、プロジェクト関係者間で効率的に活用する方法の説明に移った。

講師を務めた工学院大学建築学部教授の岩村雅人氏(左)と、日本設計プロジェクト管理部BIM室主管の本間智美氏(右)

教室内を回りながら、受講者にアドバイスを行っていた講師の岩村氏は突然、大スクリーンわきに歩み寄り、図面を指さしながら語り始めた。

「設備は高さ方向に情報が分布しているので、これまでの平面図では、配管などの周りに設備の仕様を記した『タグ』が密集し、読みにくかったですが、発注者もBIMを使えると、3Dモデルを動かして見やすい位置で情報を読み取れます。受注者も図面作成が楽になり、受発注者双方にメリットがあります」(岩村氏)。

岩村氏は長年、日本設計でBIMを使った設計や、設計の自動化などに取り組んできたため、受注者の苦労も熟知している。今回の研修は、発注者にも受注者側の作業を知ってもらうことで、BIMによる双方の生産性向上を提案する場にもなっていた。

「発注者がBIMを使うことで、受発注者の双方で生産性向上が実現する」と説明する岩村氏

また、もう1人の講師である本間氏は、BIMモデルをクラウド上でプロジェクト関係者が共有することによる生産性向上を解説した。実際のプロジェクトで使われたBIMモデルを映し出しながら、クラウドシステム「BIM 360」にアップロードして、インターネット経由でどこからでもアクセスできる実演を行ったのだ。

「クラウド上でBIMモデルを一元管理すると、オフィスだけでなく自宅や外出先など、どこからでも最新のBIMモデルを共有し、同時に操作できます」と本間氏は語る。

各地に現場が散らばる営繕業務では、現場への移動や関係者との打ち合わせに、多くの時間と手間が取られがちだ。クラウドを使うことで、移動時間や連絡時間などのムダを省き、生産性向上を実現できることを、わかりやすいデモで示した。

BIMモデルをクラウド上で共有することで、営繕業務の生産性は大幅に高まる

 デジタルネーティブな受講者のBIM力

今回の研修に参加した受講者は、入省1~3年目の20代前半の職員ばかりだ。パソコンが広く使われるようになったWindows95の発売以降に生まれ、3Dのテレビゲームで遊びながら育った世代の若手職員は、今回、BIMソフトを初めて操作するにもかかわらず、“デジタルネーティブ”ならではの能力を見せていた。

「あまり説明しなくても、画面に映ったBIMモデルをグルグルと回したり、拡大・縮小したりという操作を、自然に行っていました。さすが3Dが当たり前の世代は違うと思いました」と、岩村氏は言う。

そのためか、最後はRevitを自動化するビジュアルプログラミングツール、「Dynamo」を使った設計チェックのデモンストレーションまで行った。

「防火区画にある不燃性トビラの数を数えるのに、これまではタグの表記を見ながら一つ一つ、数えていたと思います。Dynamoを使うとタグの情報を読み取り、色分け表示や自動集計できます。1階当たり20枚のトビラがあると、20階建てビルだと400枚になりますから、大きな省力化につながります」という岩村氏の説明に、受講者は聞き入っていた。

DynamoによるプログラミングでRevitを自動化した例

九州地方整備局営繕部が鹿児島県奄美市に建設を予定している名瀬第2地方合同庁舎(RC造、地上6階建て、延べ面積約3300m2)の設計業務は、営繕部として初めて、発注者指定でBIMを活用する案件となった。

この案件では基本設計図書の作成や納品にBIMを活用しているが、近年、受注者提案でBIMを活用している別の案件も含め、設計図書の審査やコストの検討、部材間の干渉チェックなど、営繕担当職員がBIMモデルに関わる機会が増えているため、営繕部では今後、BIM用のパソコン数台を導入し、設計段階や施工段階での受注者とのやり取りに利活用するとのことだ。

今回のBIM研修を受けた職員は、設計や施工へのBIM活用の推進に、大きな力となりそうだ。

【問い合わせ】
Autodesk Revit 日本公式Facebook
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