清水建設が配筋施工図の3次元モデルを自動作成!現場ニーズ踏まえ、Revitで汎用ツールを開発(オートデスク)
2023年4月4日

清水建設が、土木分野で基本設計図から配筋施工図の3次元モデルを自動生成するツールの開発に取り組んでいる。従来、現場担当の手書きによる配筋施工図の作成指示をパラメータ化し、モデリングソフトを介してオートデスクのBIMソフト「Revit」から3次元の配筋施工モデルを作成する。「現場のニーズを的確に把握し、汎用性のあるツールとして仕上げていきたい」と語る同社土木技術本部イノベーション推進部先端技術グループの宮岡香苗氏と、プログラム開発を担うGEL(東京都江東区)代表取締役の石津優子氏に自動化ツールの方向性を聞いた。

(日刊建設通信新聞 2023年3月31日付「シリーズ「BIM/CIM未来図」/清水建設」より転載)

 配筋施工図の3次元モデル自動作成

清水建設土木技術本部イノベーション推進部先端技術グループ 宮岡 香苗氏

清水建設土木技術本部イノベーション推進部先端技術グループ
宮岡 香苗氏

——開発の背景は

宮岡 従来は、現場担当者が基本設計図面に配筋施工図を作成するための指示内容を書き込み、それをもとにCADオペレーターが配筋施工図を作成しています。施工計画に応じ、同じ構造部材でも複数のパターンを作成する必要があり、配筋施工図の作成指示による作業は多大な労力がかかっています。鉄筋の種類は多く、修正も頻繁にあり、現場担当者は配筋施工図を復し直しています。

近年は、発注者からも3次元モデルを求められることが増え、当社も設計プロセス合理化の観点から2次元から3次元の流れへと移行しつつあります。現在、当社JVがジャカルタで進行中の設計施工案件である地下鉄工事「ジャカルタMRT南北線2期工事CP202工区」ではBIM/CIMを活用した土木設計プロセスの合理化に向けて取り組んでおり、パラメトリックモデリングによる配筋施工図の3次元モデル自動生成ツールの開発は、その流れの一つになります。

これまで手書きで基本設計図面にメモしていた配筋施工図の作成指示部分をパラメータデータとして整理できるようにし、それをモデリングソフト「Rhinoceros」「Grasshopper」に読み込み、Revitから3次元モデルを自動生成します。

パラメータデータの整理をどう進めるかなどのアドバイスから3次元モデルの自動生成プログラムまで、GELが力を貸してくれています。GELとは国内の土木プロジェクトで協業しており、パラメトリックモデリングによる3次元モデルの自動化についても豊富な実績があり、協力をお願いしました。

配筋施工図の3次元モデル自動生成ツールの概要

配筋施工図の3次元モデル自動生成ツールの概要

RevitとRhinoceros Grasshopperの利用イメージ

RevitとRhinoceros Grasshopperの利用イメージ

石津  Revitを活用した配筋モデルの自動生成については建築プロジェクトで経験がありますが、土木のプロジェクトでは初めての経験になります。建築は鉄筋の種類が非常に多く、カスタムした鉄筋を使うこともあり、パラメトリックに解き切ることが難しいですが、土木は繰り返しのパターンが多く、パラメータデータとして整理する際、計算式で解決しやすいため、パラメトリックとの相性は良いと考えています。

建築は一品生産の性格が強く、開発したツールもそのプロジェクト限定でしか使えないケースが多くなります。清水建設では他の土木プロジェクトにも水平展開できるツールとして開発を進めており、われわれにとっても他のプロジェクトへの展開を見据えながらプログラムを組むことが、やりがいにもなっています。

 Revitがシステム全体下支え

——進捗の状況は

宮岡 2022年6月から開発に着手しました。現在は地下鉄駅舎の壁部分について配筋モデルの自動化を完了し、試験運用に取り組んでいます。床や柱についても順次開発を進めており、23年度上期をめどに試験運用に着手したいと考えています。微調整を繰り返しながら、より使い勝手の良いツールとして確立していきます。

GEL代表取締役 自動化エンジニア 石津 優子氏

GEL代表取締役
自動化エンジニア
石津 優子氏

石津 自動化のプログラムはRevitとモデリングソフトそれぞれのAPI(アプリケーション•プログラミング・インターフェース)を使い、幾何学的に解いています。きちんと3次元モデルを自動生成するためには、このツールの軸となるRevitの機能を熟知している必要があります。手入力した時と、APIから連動させる際の挙動が異なるため、Revit特性を見極めながらプログラムを組んでいます。

Revitはオブジェクトベースでモデリングするツールです。単純にモデルを作成するだけではなく、次の工程にも活用できるモデルとするためにどんな情報を入れ、どういう風に解決させるかをRevitの仕様に応じて調整しています。

宮岡 そのためにも現場のニーズ把握を重視してきました。施工図を自動生成する際、どういうパラメータデータを用意すれば、3次元モデルとして成立するかを念頭に置き、情報収集にも力を注いでいます。現場がどういうルールで図面を書き、どのような条件で鉄筋を配列していくか、そうした細かな部分まで把握しなければ、自動化を実現することはできません。

石津 開発当初は、実際にモデリングソフ卜からRevitにデータを流してみて、鉄筋を自動でどこまで配置できるかを確認しました。Revit関連の開発ではテンプレー卜とファミリー、そしてツールの3点セットで進めることになります。われわれはプログラムの開発以外に、テンプレートやファミリーのパラメータも確認しながら開発を進めました。現場の皆さんからはツールを効果的に使いたいという前向きな意識があり、対話を繰り返しながら開発を進めています。

——ツールの到達点は

宮岡 既に地下鉄工事の壁部分で試験運用を始めましたが、最終的には他の現場にも水平展開することを前提に、汎用的なツールとして開発しています。国内のプロジェクトも含めて幅広く使うことを考えると、特定の現場条件に合わせてしまっては、ツールとしての対応範囲が限定的になってしまいます。汎用的に開発していく部分と、現場が自発的にカスタマイズしていく部分を区分けしながら進めています。一例ですが、現場では鉄筋形状コードの部分について、日常的に使っている英国の基準に合わせたいという思いを持っていました。われわれは汎用的に使うため、Revitのコードを前提に開発を進めてきており、集計シートの中でコードを変換できるように対応しました。現場側が汎用性を意識しながら積極的に意見を出してくれることも、心強い点です。

石津 プログラムは組んでからがスター卜です。使う側の意見を踏まえながら仕上げていき、ツールとしての使い勝手を上げていきます。開発目的をきちんと関係者間で共有することが大事です。生産プロセスやワークフローの全体を見据えて作ることは時間がかかりますが、そうすることでより大きな効果を発揮できます。清水建設はBIM/CIMを活用した設計合理化という明確なビジョンを描き、一貫したシステムとして取り組んでいこうと突き進んでいます。そうした姿勢に私自身も、とても共感しています。

宮岡 先行している壁部の自動化では、現場の施工図作成チームにプログラムを渡し、実際に使ってもらっています。現場からの積極的なフィードバックもあり、修正を繰り返しながらしながら、より使い勝手やツールの精度を向上しています。比較対象がないため、正確な試算はできませんが、鉄筋の3次元モデルを作成する社内作業と比較検証した場合でも、30%ほどの効率化が期待できると考えています。実際に手を使ってモデルを作る作業時間がなくなるため、さらなる効率化も実現できるでしょう。いま、現場では自主的にパラメータづくりが動き出しています。日ごろから使っている鉄筋数量を管理する集計シー卜から、パラメータのデータを生成できるように工夫したのもその一つです。このように現場発の取り組みが出てくることで、ツールは成長していきます。

詳細設計システムの全体ワークフローと本開発の対象範囲

詳細設計システムの全体ワークフローと本開発の対象範囲

 現場ニーズ踏まえ汎用ツール確立

——今後は

宮岡 設計段階も施工段階もデジタル化によって効率化できる余地は、まだたくさんあると考えます。重要なのは特定の現場に限定せず、汎用的に使える枠組みとして仕上げることです。そのためにも幅広く現場のニーズを把握し、どこを改善すべきかをきちんと見定めていく必要があります。システム開発が高度化すればするほど、社内の技術者だけでは解決できない部分も出てきます。当社も含め、建設会社では高度なプログラム開発を担える人材が不足しています。GELのような建設プロセスを熟知した優秀な専門家との協業が、現場のデジタル化を推し進める上で重要な存在になってくることは間違いないと考えています。

石津 現場のデジタル化が進展し、われわれのようなツール開発側に声が掛かるケースは増えています。中でも自動化については相談が増えていますが、自動化ツールを専門とするエンジニアは少ないのが現状です。職能として認知され、仲間がもっと増えてほしいという思いもあります。清水建設のように、関係者全員が同じ方向を目指し、ワークフローの全体最適化に向けて突き進めることは、われわれシステム開発側の役割としても理想的な協業の場です。

宮岡 いま、ジャカルタの地下鉄工事では、基本設計図面からの自動モデリング、鉄筋種別の自動分類、構造細目に対する自動照査、鉄筋施工図の作成、そして3次元図面から集計表を出し、鉄筋ロス率も考慮した注文シー卜の作成についても自動化しようと取り組んでいます。全体を一つにつなげようと各プロセスでシステム開発が進行しているということです。照査の部分も、当初はパラメトリックモデルでなく、別に作成した3次元モデルで検証していましたが、今後はわれわれが担当している自動化モデルを照査の部分につなぎ、検証を進めていくことになります。プロセス全体をつなげる上で重要なのは、後工程で必要な情報を、前工程で位置付けていくことです。鉄筋名称の部分についても統一的な表現にしていくことが求められます。土木設計の合理化は取り組めばすぐに実現するわけではありません。乗り越えるべき課題を見つけ、一歩ずつ着実にクリアしていきます。

【問い合わせ】
Autodesk Revit 公式Facebook
autodeskrevitjapan@facebook.com
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