ChatGPT、点群、建築・土木・設備アドオンとも連携!DWG互換CAD「ARES」はここまで進化した(Graebert Japan)
2024年7月26日

建設業界での世界標準CADソフト「AutoCAD」と同じように使えるDWG互換CAD「ARESシリーズ」が、ますます進化してきた。操作方法や機能は、AutoCADとますます近くなり、操作方法を調べるヘルプ機能には、「ChatGPT」の開発元であるOpenAI社の生成AI(人工知能)を実装。設計時の様々な質問に答えてくれるようになった。また建築・土木・設備用の設計ソフトやライセンス管理を効率的に行えるシステムとの連携が進むなど、ARESを軸とした「エコシステム」も広がっている。2024年6月19日に、販売元のGraebert(グレバート) Japan(ジャパン)が開催したイベント「Graebert Next」から最新情報を紹介しよう。

東京国際フォーラムで開催されたイベント「Graebert Next」には多くの来場者が詰めかけた

東京国際フォーラムで開催されたイベント「Graebert Next」には多くの来場者が詰めかけた

   様々な質問に答える「ARES AIアシスト」

DWG互換CADは2D図面を作図するための「枯れた技術」と思っている方も多いだろう。しかし、Graebert JapanのARESシリーズは、生成AIや点群データ、BIM/CIMなどの最新技術とともに、右側の窓でますます進化を続けている。

CADで設計を進める際、設計者が知らないことに出会うと、操作方法はCADソフトのヘルプ画面で、基準関係は仕様書、単位関係は換算表といった具合に、様々な資料を調べて解決していた。

「ところがデスクトップ版のARES Commanderは、これらの生成AIや点群データ、BIM/CIMなどの最新技術とともに疑問に即座に回答してくれるので、設計作業がストップすることはありません」と、Graebert Japanの江端陽二代表は語る。

ARESシリーズの最新機能について説明するGraebert Japanの江端陽二代表

ARESシリーズの最新機能について説明するGraebert Japanの江端陽二代表

ユーザーは「Excelから表をインポートする機能はどこですか?」、「建築図面のレイヤー名を提案してください」、「5フィートは何センチ?」などと、わからないことをダイレクトに聞くだけで、ARESがワンストップで答えてくれるからだ。

その秘密は、OpenAI社が開発した生成AI「ChatGPT」に、CADやARES製品に関する知識を深く教え込んだ「ARES AI Assist」(略称:A3)という機能が搭載されているからだ。

例えば、CAD図面中に描かれた「ブロック」の数を知りたいとき、手作業でカウントしていると時間がかかるうえ、ミスも起こりやすい。そんなときは「ブロックの数が知りたいのですが」と、普通に聞けば「BCOUNT」というコマンドがあることや、その使い方などをChatGPTのように懇切丁寧に教えてくれるのだ。

作図中に「ブロック」の数を調べる方法を聞くと、右側のウィンドウで「BCOUNT」コマンドや使い方を教えてくれる

作図中に「ブロック」の数を調べる方法を聞くと、右側のウィンドウで「BCOUNT」コマンドや使い方を教えてくれる

これまでのヘルプ機能は、ユーザー自身が質問の内容を整理し、ヘルプの目次などを手掛かりに何度も調べる必要があった。それがARES AIアシストによって、CADの操作方法や業界の知識、ちょっとした計算、専門用語、翻訳など、わからないことを直接、CADにたずねるとワンストップで答えてくれるようになったのだ。DWG互換CAD「ARES」の進化を象徴する新機能と言えるだろう。

   スーパーゼネコン3社が採用する高い信頼性

DWGデータとの互換性を高めるだけでなく、ARESシリーズはデスクトップ版の「ARES Commander」を軸として生成AIやBIM/CIMとの連携や、そしてクラウド版アプリ「ARES KUDO」、モバイル版アプリ「ARES Touch」によって、CADユーザーの生産性向上やコスト削減を追求してきた。

ドイツのGraebert本社で事業開発・マーケティング部長を務めるセドリック・デボルデス氏は、「当社は収益の40~50%を研究開発に再投資し、新技術を導入しながらユーザーの利便性を追求するとともに、コスト削減への努力も続けています。これが当社の“生きがい”です」と語る。

ARESシリーズの開発方針について語るGraebert-本社 事業開発・マーケティング部長のセドリック・デボルデス氏(右)

ARESシリーズの開発方針について語るGraebert-本社 事業開発・マーケティング部長のセドリック・デボルデス氏(右)

DWGデータの互換性だけでなく、AIやBIM、クラウドとの連携を通してユーザーの利便性を高め、コスト削減に努めることがGraebert社の“生きがい”という

DWGデータの互換性だけでなく、AIやBIM、クラウドとの連携を通してユーザーの利便性を高め、コスト削減に努めることがGraebert社の“生きがい”という

地道な機能改善は、AutoCADとのメニューやコマンドの互換性から、クラウド版のARES KUDOでも使える450個以上にも上るオンラインダイナミックブロックの追加、表の作成・編集機能にも及ぶ。

さらにはAutoCAD Civil 3DやCorelDRAWとのデータ互換性改善、ベントレー・システムズのMicrostationで使われているDGN形式への書き出し、そしてBIMモデルの表示やBIMデータからの図面作成に至るまで、数々の最新機能を搭載した。

ARESシリーズに搭載された主な新機能。ますます進化を続けている

ARESシリーズに搭載された主な新機能。ますます進化を続けている

「今回のバージョンアップで、AutoCADの機能をARESによってほとんど置き換えられるようになったと言っても過言ではありません」とデボルデス氏は語る。

それを裏付けるように、日本のスーパーゼネコン5社のうち、大成建設、大林組、竹中工務店がARESシリーズを導入しているほか、日本の建設業上位20グループのうち65%がARESを導入するまでになった。

その背景には、ARESシリーズを軸として、サードパーティーから建築・土木・設備などの業種別に、アドオンソフトなどの連携ツールやモデリングサービスが続々と提供され、「エコファミリー」が形成されてきたこともある。

エコファミリー(1)点群データとの連携
3Dデジタル・アーカイブ・サービス、Undet for ARES Commander

現場の形状や寸法を、3Dデータで余すことなく計測できる点群データは、これからの建設業には欠かせないものだ。しかし、点群データのままではデータ容量が重すぎ、設計にも使いにくいため、3Dモデル化したいことがある。

そんな時に便利なのが、ゼンリンの100%子会社、ジオ技術研究所(本社:福岡市博多区)が提供する「3Dデジタル・アーカイブ・サービス」だ。

同社は3D計測機器を独自に開発し、取得したデータからより少ない工数で3D形状を抽出、生成する独自の技術を生かしたシステムを開発している。

「3Dデジタル・アーカイブ・サービス」の流れ。ARESで利用しやすい点群データに加工してくれる

「3Dデジタル・アーカイブ・サービス」の流れ。ARESで利用しやすい点群データに加工してくれる

点群データやメッシュ数の間引きから、高い生産性を生かした3Dモデリング、干渉チェックやシミュレーションに適したBIM/CIMオブジェクトの分割、そしてゲーム的な見栄えの良さを追求した3Dモデルまで、ARESシリーズで点群を活用するために役立つサービスを展開している。

このほか、3D GEOKOSMOS(本社:東京都豊島区)は、点群データを利用して2D図面を作成するプラグインソフト「Undet for ARES Commander」を発売している。点群データのクリップや、線形の自動トレース、地表面のメッシュ処理などを行う機能が付いている。価格は1年間のサブスクリプションで税込み15万2000円だ。

点群データを使った2D図面作成などをサポートする「Undet for ARES Commander」

点群データを使った2D図面作成などをサポートする「Undet for ARES Commander」


エコファミリー(2)土木業務向けアドオンソフト
J-CIVIL

低価格の汎用CAD「ARES Commander」に、土木現場で必要十分な機能を追加したのがkynos(キーノス)logic(ロジック)(本社:名古屋市千種区)が開発したアドオンソフト「J-CIVIL」だ。

機能としてはまず、日本の地形図データ交換標準である「J-Land XML」が読める点にある。また、土木業界ならではの公共座標系に対応するため、都道府県ごとにある基準点を、地図上で分かりやすく選べる機能も付いている。

汎用CAD並みの低価格で使える土木用アドオンソフト「J-CIVIL」

汎用CAD並みの低価格で使える土木用アドオンソフト「J-CIVIL」

さらに、作成した図面に「KML」データを付けて、Google Maps上に表示する、ICT施工で使われるICTデータの形状などをビジュアルに確認する、住所から現場調査地点にアクセスする、といった生産性向上に役立つ機能が盛り込まれている。

注目すべきは、ARES Commanderを含めた永久ライセンスで17万5000円(税別。以下同じ)、1年のサブスクリプションで8万5000円という利用料金の安さだ。

汎用CADの価格でありながら、初心者でも使える操作性のよさや、日本の建設仕様に合った機能を持っているので、「土木業界のジェネリックCAD」というのが売り物だ。


エコファミリー(3)建築設計向けアドオンソフト
N-Gaudi for ARES

ARES Commanderに建築設計の「意匠」「仮設」「施工」「設備」「構造」の各業務で作成する図面を、スピーディーに描くための作図コマンドや図面要素などの機能を追加するアドオンソフトが、C&Cソリューションズ(本社:大阪市中央区)が開発した「N-Gaudi
for ARES」だ。

もともと20年ほど前にAutoCAD用のアドオンソフトとして開発されたものを、ARES Commanderに対応させたものだ。永久ライセンスは9万8000円と、リーズナブルな価格となっている。

N-Gaudi for ARESの意匠設計機能

N-Gaudi for ARESの意匠設計機能


エコファミリー(4)設備設計向けアドオンソフト
ARCADENEO

ARES Commanderを2次元建築設備CADとして使うための機能を追加するアドオンソフトが、協振技建(本社:東京都文京区)が開発した「ARCADENEO(アーケード・ネオ)」」だ。

空調機器を壁に沿って一括配置する機能などを備えた「機器配置」機能、配管やダクトの経路をクリックで指示して継ぎ手を自動的に挿入する「経路作図」機能や「経路編集機能」などの作図機能を備えている。

さらには平面図からアイソメ図を自動作成する機能や、オブジェクトの属性情報を利用して機器の台数や配管・ダクトなどの長さを拾い出す積算機能も付いている。

ARCADENEOの経路作図機能

ARCADENEOの経路作図機能


エコファミリー(5)サブスクリプション管理
iKAZUCHI(雷)

ARESシリーズも含めて、サブスクリプション契約のライセンスが増えてくると、多数のソフトに対して今、どんなソフトが社内で契約されているのか、ライセンスはいつまで有効かといった契約内容の把握や、更新の手続きが煩雑になってしまうことがある。

そんな時に便利なのが、ダイワボウ情報システム(本社:大阪市北区)が提供するサブスクリプション管理ポータル「iKAZUCHI(雷)」だ。

従来主流であった満了更新型では、サブスク期間が終了し、次期もソフトを使うためには、毎回、契約更新の手続きや注文書などの煩雑なやりとりを繰り返す必要がある。

一方、iKAZUCHI(雷)に掲載しているサブスクサービスは、自動継続型になります。iKAZUCHI(雷)を利用することで、初めの1回だけ契約手続きを行えば、次期以降は同じ契約で請求の処理だけを行えばよいので、ユーザーの手間ひまは大幅に削減されるのだ。

iKAZUCHI(雷) 導入のメリット。自動継続により、サブスク契約の更新手続きは大幅に省力化される

iKAZUCHI(雷) 導入のメリット。自動継続により、サブスク契約の更新手続きは大幅に省力化される


人手不足が年々、厳しさを増す日本の建設業界は、2024年4月から時間外労働に上限規制が設けられたことをきっかけに、「全員参加型の建設DX」によって安全や品質は従来通りに保ったまま、より少ない人数と時間で業務を遂行する必要に迫られている。

建設業に多い「移動のムダ」を削減するために、クラウドやモバイル版のアプリ活用は特効薬となる。CADソフトも例外ではない。

この機会に、クラウド版の機能が大幅に拡充され、ARES AIアシスト機能も搭載されたARESシリーズの導入を検討してみてはいかがだろうか。

 【問い合わせ】
Graebert Japan 合同会社

〒160-0023 東京都新宿区西新宿 1-20-3 西新宿高木ビル 8F
ウェブサイト:https://www.graebert.com/ja/

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