東京・四谷のGSAには、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)についての相談や業務依頼が毎日のように寄せられる。その内容は、3Dモデルや3Dプリンターによる模型の作成、アプリの開発、さらには導入支援や組織づくりまで多岐にわたる。こうした課題をGSAの力を借りて解決するにはどうしたらよいのか。担当者を直撃取材した。
BIM/CIMの“駆け込み寺”として頼られるGSA
「構造が複雑すぎてモデル化できない」「要求品質が厳しいので助けてほしい」―――BIMやCIMの活用が普及しつつある今、GSAには全国の建築設計事務所や建設コンサルタント、そして建設会社などから毎日のように相談や業務依頼が寄せられる。
その多くは、形状が特殊な建物や土木構造物などの3Dモデル化や、複雑な配筋の4D施工シミュレーションなど、難易度が高かったり、納期までに自社だけでは対応が難しかったりする案件だ。GSAはまさに、BIM/CIMで困ったときの“駆け込み寺”として活用されている。
「納期は2週間から1カ月くらいものがほとんどです。」と、取締役の遠藤啓一氏は語る。
同社に持ち込まれる案件で多いのは、BIM/CIMのモデル作成だ。「複雑に入り組んだ配筋の施工シミュレーションやアプリを使った自動配筋など、基本的なソフトだけでは難しいものがよく持ち込まれます。対象構造物としては河川、トンネル、橋梁、道路、造成、地質、建物まで。そして、3Dプリンターで模型を作ってほしいという依頼もよくあります」と執行役員の内公二郎氏は説明する。
このほか、CIM関連の依頼では3Dレーザースキャナーで計測した現況地形の点群データ上に、新しく建設する構造物の3Dモデルを合体させたデータ作成の依頼も増えてきた。
モデル作成とアプリ開発を連携
GSAに持ち込まれる様々なBIM/CIM案件の解決を担当するのは、制作部と受託開発部のスタッフだ。そのたいていがゼネコンやシステム開発会社出身で、建築や土木の実務を経験した中途採用の社員だ。
BIM/CIMモデルの作成にはオートデスクのRevitやAutoCAD Civil3Dのほか、グラフィソフトジャパンのARCHICADや福井コンピュータのGLOOBEも使用している。
複雑な形状や配筋をモデル化するときも、単にモデル制作スタッフの人数を増やして「力わざ」で対応するのではなく、受託開発部のソフト開発力を生かして入力を半自動化する方法も導入し、モデル制作の生産性を上げている。
「例えば、曲面のコンクリート壁に納める、継ぎ手付きの詳細配筋モデルを作ったときは、DynamoというRevit対応のアドオンソフトを活用し、ルールによって配筋モデルを自動作成しました」と受託開発部の石井伸一部長は説明する。
BIM/CIMモデルの作成や編集には、モデル上の特定の部材をまとめて選択し、削除や属性情報の変更などが行えると効率的だ。
制作部の立岡慎吾マネージャーは、「そんな場合は自社開発のフィルターコマンドや断面BOXコマンドをよく使っています。BIM/CIMモデルを特定の高さの範囲で選択してコンクリートや鉄筋などの数量を集計したり、ある属性を持つ部材だけを数値や部材名で選択したりできるので、モデル作成の効率が高まり、ミスも起こりにくくなります」と言う。
GSAのノウハウをソフトに込めて外販
制作部がBIM/CIMモデル作成で必要なニーズを拾い出し、受託開発部がそれにこたえるアプリを開発する。このアプリは制作部での業務に使用するほか、「Revit Assist Tools」というコマンド集としても製品化し、外販している。まさにモデル作成とアプリ開発が両輪となってGSAの業務を支えているのだ。
「発注者のオフィスにあるパソコンのスペックが低いため、せっかくBIMやCIMのモデルを作っても中身を見られない場合があります。そこで『BIM/CIM
Arkシリーズ』というコミュニケーションツールも開発しました」と内氏は語る。
このツールは、BIMやCIMのモデルデータを軽量化し、ビューワーソフトと一体化して実行ファイル形式(.exe)にまとめるものだ。部材ごとに表示/非表示を切り替えて中身の閲覧、寸法のチェック、3Dモデルを任意の断面で切断といった本格的な操作が、BIMやCIMのソフトが入っていない低スペックのパソコンでもできる。
また、3Dプリンターで模型を作るときは、3Dモデルの面に穴が開いていたり、面が裏返ったりしているとしばしばエラーになる。そこで3Dモデルを処理する「BUILDio」というソフトも独自に開発。3Dプリンターによる出力をスムーズに行えるようにしている。
役員面談まで行うBIM/CIM導入コンサルティング
BIMやCIMは、もはや従来の2次元CADに代わる設計ツールではない。業務や工事の受注をも左右する経営戦略ツールなのだ。
GSAは様々な企業にBIMやCIMの導入/運用支援コンサルティングサービスを行っている。ソフトの基本的な使用方法をトレーニングしたり、企業に一定期間、スタッフが常駐してBIM/CIMによる設計のワークフローが機能するまでのオンサイトサポートを行ったりと、各企業のニーズに合った方法で導入や運用を支援している。
コンサルティング事業部長の遠藤氏は「ときには設計実務を行わない役員面談も行います。というのは設計上の問題を前倒しで解決する『フロントローディング』などを実現する場合、従来の部署間の壁を取り払って、新しい組織を作る必要がある場合もあるからです。こうしたBIM/CIMにからむ組織改造は、現場業務者とともに経営層の理解が必要になります」と言う。
また、2016年度から国土交通省がCIMや情報化施工などを統合して推進する「i-Construction」に、支援先の企業が適切に対応できるようにするため、国交省の狙いや受注者側への期待などを解説したり、勉強会を開催したりする場合もあるという。
ゼンリンの3D都市モデルデータも積極活用
GSAでは作れないBIMやCIMのモデルはないと言っても過言ではない。しかし、より効率的にモデル作成を行うため、既存のデータ資産の有効活用にも務めている。その1つが地図会社最大手のゼンリンが作成した「3D都市モデルデータ」のBIM/CIM分野での活用だ。
3D都市モデルデータはもともと、カーナビゲーションシステム用に開発されたものだ。道路などの地盤高やビルの外形や高さ、表面のテクスチャーもリアルに再現されている。ゼンリンはこのモデルをゲームや映画などのエンターテインメント業界向けに提供する一方、BIM/CIM向けにも提供を始めた。
そこで建設分野向けの販売代理店として選んだのが、建築・土木分野での3Dデータ活用力やノウハウを持つGSAだ。
3Dモデルとはいえ、地図のデータなのでBIMやCIMの業務で使ったり、成果品として納品したりする際に、権利関係が気になる。しかし、3D都市モデルデータの場合、そういった心配は無用だ。
「3D都市モデルデータ上の建物を外して、BIMモデルや点群データなどに置き換えるなどの編集ができる権利が付いている。設計中の建物や土木構造物以外の周囲の街並みを、3D都市モデルデータを使って作ることで、コストは10分の1から20分の1くらいまで下げることができる」(内氏)という。
業務の依頼はホームページでも受け付け
GSAはもともと設計会社や建設会社から現場の施工図を作成する事業を手がけていた。その際に3Dのパースや施工手順のイラストを描くこともあった。それがきっかけとなり、2003年ごろRevitを導入し、2005年にはRevit用の日影シミュレーションソフトなどの開発を始めた。そのため、BIM/CIMには既に十数年の経験とノウハウが蓄積されている。
ここ1~2年、GSAにはビルオーナーや高速道路会社、鉄道会社からも仕事の依頼が舞い込むようになっている。オフィスビルや駅ビル、土木構造物などの維持管理やテナント管理などを3Dモデル上で行うためだ。
GSAへの業務依頼や相談はまず、電話で営業担当者を呼んだり、ウェブサイト上の問い合わせコーナーに書き込んだりすることから気軽に始められる。GSAの営業担当者が必要に応じて打ち合わせを行い、業務の提案と見積もりを出す。その条件に納得できれば、すぐに業務がスタート。GSAが持つBIM/CIMの技術やノウハウ、経験を活用することができる。
「当社の顧客はリピート客が多いです。他社で手詰まり、あらためて当社を選んでくれるお客さんもいます。BIM/CIMでお困りの企業は気軽に相談してください」と遠藤氏は締めくくった。
【問い合わせ】
GSA株式会社
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-4 四谷駅前ビル3F TEL:03-5363-0650, FAX:03-5363-0651 ホームページ http://www.gsa-network.com/ |