ソフトバンク コマース&サービスとホロラボは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルのデータを、簡単にMR(複合現実)コンテンツ化できるクラウドサービス「AR CAD Cloud for BIM」を開発した。このサービスを使うと、BIMソフトで作成した建物や土木構造物などの3Dモデルを、「Microsoft HoloLens」で使えるデータに手軽に変換できる。実際の風景に3Dモデルを重ねて見るMRのほか、VRによるウオークスルーや“バーチャル建築模型”など、BIMの活用は大きく広がりそうだ。
圧倒的な臨場感をもたらすHoloLensによるBIM活用
BIMの活用が設計から施工、維持管理へと進む中、注目を集めているのが「Microsoft HoloLens」(以下、HoloLens)だ。
VR(バーチャルリアリティー)用ゴーグルのような形をしているが、中身はWindows10で動作するパソコンだ。HoloLensにはCPUやフラッシュストレージのほか、IMUなどのセンサー、カメラなどスマートフォンのようにさまざまな機器を搭載されている。
これを着用して周囲を眺めると、目の前の小型液晶ディスプレーに建物や土木構造物などのBIMモデルが映し出され、周囲の地形や街並み、構造物などリアルな風景に重ねて見ることができる。
周囲を見回したり、歩いたりすると、BIMモデルも風景に合わせて動くので、まるで完成後の建物や構造物が、目の前に立っているかのような錯覚を覚える。しかも、実物大で立体的に奥行きも感じられるので、モニター上でBIMモデルを見たり、ウオークスルーしたりするのに比べると、圧倒的な臨場感だ。
実際の風景にBIMモデルを重ねて見られるMRは、建築・土木分野で今、非常に注目されている。
例えば、更地の建設予定地に、どのような大きさの建物が建つのか、周囲の景観とどのようにマッチするのかを検討するデザイン段階での活用は最近、マンションデベロッパーや工務店などで増えており、顧客へのプレゼンテーションはもちろん、顧客満足度向上のツールとしても期待されている。
また、施工段階では設計通りの位置に部材が組み立てられているかを確認したり、コンクリート打設前に配管やダクトがコンクリート部材を貫通する部分に「スリーブ」と呼ばれる貫通孔が設けられているかを確認したりするのに役立つ。
建物の完成後は、壁や天井裏にある配管や構造材を部屋の中から“透視”しながら維持管理や改修工事の設計を行うことにも役立つ。
BIMモデルからMRコンテンツへ一発変換
このように、BIMモデルをHoloLens上で見られると、BIMの活用範囲やメリットが格段に上がり、設計や施工、維持管理の生産性向上に役立つ。
一方、課題は「Revit」などのBIMソフトで作成したBIMモデルを、HoloLensで使われている「SVF形式」のデータに変換する作業が難しく、ノウハウや手間がかかることだ。
BIMソフトにはそれぞれオリジナルデータ形式があり、BIMモデルのデータ交換標準として「IFC形式」も使われている。また、3Dを表現する方法も「ソリッドモデル」や「サーフェスモデル」のほか「ポリゴン」がある。ソフト環境やファイル形式が多いので、これらをHoloLensが読み込める形式に変換する必要がある。
そして施工段階で作られる意匠、構造、設備の要素が含まれるBIMモデルは、データ量が大きいので、HoloLens用にデータを変換するためには、ポリゴン数を減らすなどデータを軽量化する必要がある。
そこでソフトバンク コマース&サービスは、RevitのオリジナルファイルやBIMモデルの共通データ交換標準である「IFC」形式のファイルを、簡単にHoloLens向けに変換できるクラウドサービス「AR CAD Cloud for BIM」を開発した。
オートデスクのBIMソフト「Revit」やIFC形式のデータをクラウドにアップロードすると、クラウド上で稼働するMicrosoft AzureとUnityによってHoloLens用にデータ形式や容量が自動的に最適化され、HoloLensなどのMRデバイスにダウンロードして使える仕組みになっている。
その結果、BIMユーザーは誰でも、設計や施工段階で作成したBIMモデルを、手軽にHoloLens上で利用できるのだ。
最新版の“バーチャル模型”でデザイン検討
建築設計などの分野では、デザイン検討に模型は欠かせない。しかし、3Dプリンターを使って本格的な建築模型を作ると、造形に数十時間もかかってしまう。また、設計変更が行われると、模型を作り直す必要もある。
一方、AR CAD Cloud for BIMなら、最新版のBIMモデルをわずか4~5分でデータ変換を行い、HoloLensを使って“バーチャル模型”のように、複数の人がさまざまな角度から見ながらデザインなどを検討できる。模型の縮尺も手にとって見られるようなサイズで俯瞰(ふかん)したり、実物大サイズで内側から見回したりと自由自在だ。
リアルな模型を使うのに比べて、BIMによる設計→模型による検討→BIMモデルへのフィードバックというワークフローが、圧倒的な短時間で繰り返し行えるのが、AR CAD Cloud for BIMとHoloLensを使うメリットだ。
また、HoloLensを使うと一般のVR(バーチャルリアリティー。仮想現実)によるウオークスルーも、スムーズに行える。
一般のVRゴーグルは、3Dモデルを実物大で立体視できるが、自分の周囲にどんな障害物があるのかがわからない。そのため3Dモデルを見ながら一歩踏み出すのも、補助員に手を引いてもらってようやくという場合もある。VRゴーグルを体験した人ならわかるだろう。
その点、HoloLensはVRの映像を見ながら、周囲の机や壁、床の障害物などもうっすらと見えるので、ストレスなく3Dモデルの中を歩き回れる。
MR開発環境「Unity」との親和性
MRやAR/VRコンテンツを作成するのに、世界中で最も使われているのが「Unity(ユニティー)」というゲーム開発用のプラットフォームだ。3Dや2Dの描画やサウンド再生機能などが充実し、WindowsやMac、iOS、AndroidなどさまざまなOSに対応している。
現在、世界でHoloLens用に開発された3Dコンテンツも9割以上がUnityで開発されたと見られている。
このUnityは、BIMの世界でも本格的に使われ始めている。例えば、米国オートデスク社は2017年10月、Unityの開発元であるユニティ・テクノロジーズ社との協業を発表し、Autodesk 3ds MaxやAutodesk MayaなどでされたFBXファイルをUnityへインポートしたり、Unityからエクスポートしたりできる機能が強化された。
そして、ソフトバンク コマース&サービスは、日本で唯一のUnity認定リセラーとしてUnityをサポートしているほか、RevitやAutoCADなどオートデスク製品を販売してきたパートナーでもある。
ソフトバンク コマース&サービスのAR CAD Cloud for BIMは、BIMとHoloLens、そしてUnityと深く連携しながら、これからの建築界におけるMR活用を広げていくクラウドサービスとして、近く、提供が開始される予定だ。
【「AR CAD Cloud for BIM」ベータ版のデモ展示のお知らせ】
2018年3月30日、東京で開催のイベント「産業VR/AR発展の鍵は?」で、「AR CAD Cloud for BIM」ベータ版のデモ展示が行われます。詳細、参加申し込みは、こちらのウェブサイトまで。
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