BIMモデルをHoloLensで手軽に活用する方法とは?
Revitデータを「mixpace」クラウドに投げるだけ(SB C&S)
2019年4月19日

建設業界では今、建物のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルを、現場の風景に重ねて見られる「Microsoft HoloLens(マイクロソフト ホロレンズ)」というMR(複合現実)デバイスの活用に注目が集まっている。SB C&S(旧:ソフトバンク コマース&サービス)とホロラボはRevitなどのBIMソフトで作成したデータをアップロードするだけで、HoloLens用に変換できるクラウドサービス「mixpace(ミクスペース)」を開発し、2019年2月にサービスを開始した。

パソコン上のBIMモデルとHoloLensを前に語るホロラボCEOの中村薫氏(左)とSB C&Sの遠藤文昭氏

パソコン上のBIMモデルとHoloLensを前に語るホロラボCEOの中村薫氏(左)とSB C&Sの遠藤文昭氏

   数分~数十分でBIMモデルをHoloLens用に変換

「mixpaceを使うと1フロア1000m2の100MB程度のBIMモデルなら、クラウドにアップして数十分でHoloLens用に変換できます。もっと小さなBIMモデルなら数分程度で完了します」と語るのは、SB C&SのAR・VR・MRソリューション担当の遠藤文昭氏だ。

建設業界では、BIMモデルを現場と重ねて実寸大・立体視で見られるMRデバイス「HoloLens」が、建物のデザイン検討や施工管理、墨出し、販売プロモーションなどに使われ始め、その効果に注目が集まっている。

建設業界で注目を集めているMRデバイス「Microsoft HoloLens」を着けて現場に立ったイメージ

建設業界で注目を集めているMRデバイス「Microsoft HoloLens」を着けて現場に立ったイメージ

HoloLensを通して見た映像。現場の風景に計画中のBIMモデルを重ねて、実寸大で立体できる

HoloLensを通して見た映像。現場の風景に計画中のBIMモデルを重ねて、実寸大で立体できる

しかし、建物のBIMデータをHoloLensで見られる型式に変換するのは、意外と手間がかかっていた。

「これまでの方法はモデルの軽量化やデータ変換などに多くの手作業が必要でした。専用ツールを開発する必要があるので、その開発期間を含めると1~3カ月かかることもありました。しかも、BIMモデルで重要な属性情報は完全に抜け落ちてしまいます」とホロラボCEOの中村薫氏は解説する。

   データ変換はワンクリックだけ。しかも属性情報付き

今回、サービスが開始されたmixpaceは、これらの面倒な作業や問題を一気に解決してくれる。

「Revitなどのソフトで作成したBIMモデルをクラウドにアップするだけで、モデルの軽量化やHoloLens型式への変換を行ってくれます」と中村氏は、ノートパソコンに向かって実演を始めた。

まずはノートパソコン上で、RevitでBIMモデルを作成し、RVT型式やDWF型式などでデータを保存する。次にウェブブラウザーで「mixpace」のクラウドサーバーにアクセスし、ドラッグアンドドロップでそのデータをアップロードする。人間が行うのはそれだけだ。

後はクラウドサーバーがデータの軽量化処理、HoloLens用のCGデータ構築と自動的に作業を進めてくれる。

BIMソフト「Revit」で作成した建物のBIMモデル

BIMソフト「Revit」で作成した建物のBIMモデル

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次にウェブブラウザーで、「mixpace」のサーバーにアクセスし、BIMモデルデータをアップロードする

次にウェブブラウザーで、「mixpace」のサーバーにアクセスし、BIMモデルデータをアップロードする

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するとデータを自動的に軽量化する処理が自動的に始まり、経過を刻々と表示する

するとデータを自動的に軽量化する処理が自動的に始まり、経過を刻々と表示する

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続いてHoloLens用のCGデータを自動的に構築する

続いてHoloLens用のCGデータを自動的に構築する

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完成したHoloLens用のデータ

完成したHoloLens用のデータ

「BIMモデルを自動的にHoloLensにしてくれますが、もとの属性情報は付いたままです」と中村氏は胸を張る。

属性情報とは、建物各部の部材名や材質、工程、メーカーなどの情報をBIMモデル内部に格納したデータベースのようなものだ。HoloLensを通して3D形状と、これらの属性情報を同時に参照できると、他の資料などを持ち歩いて照合する必要がなくなる。そのため施工管理などの業務が大幅にスピードアップし、照合ミスなどのヒューマンエラーもなくなるのだ。

   デザイン検討から施工管理まで用途は無限

建設業界におけるHoloLensの用途は無限にあるといっても過言ではないだろう。建物の計画・設計から施工、維持管理、そして地域住民への説明会や販売プロモーションなど、幅広い使い方ができそうだ。

例えば、設計段階では建物のデザインや大きさを建設予定地に立ってHoloLensを着けることにより原寸大・立体視で検証ができ、周囲の街並みとの調和や建物のスケール感を、完成後の世界に行って体感するような検討や、販売プロモーションが行える。

設計中のBIMモデルだけを見てもスケール感や周囲の景観との調和感がわかりにくい

設計中のBIMモデルだけを見てもスケール感や周囲の景観との調和感がわかりにくい

HoloLensを通してBIMモデルを見ると、階段の高さや風景との調和したデザインかがよくわかる

HoloLensを通してBIMモデルを見ると、階段の高さや風景との調和したデザインかがよくわかる

一方、室内では建物を縮小していろいろな角度から見ながら、間取りや壁裏の設備などを「カットモデル」のように説明することができる。

施工段階では、重機を現場に搬入したり、クレーンで鉄骨などの資材をつり上げたりする施工シミュレーションを現場に重ねて見られる。作業中に図面に描かれていない電柱や電線などの障害物と接触しないかなど、現場の隅々までを実物大で見ながら確認できるので手戻りが生じにくくなる。

地図の上でクレーンの施工シミュレーションを行ったイメージ

地図の上でクレーンの施工シミュレーションを行ったイメージ

既存建物の手前に増築する鉄骨部材を見たイメージ

既存建物の手前に増築する鉄骨部材を見たイメージ

また、梁や柱などに配管などが貫通する「スリーブ」と呼ばれる孔が設計図通りの位置に開いているかの確認や、壁や設備などの位置を床にマーキングする「墨出し」と呼ばれる作業もHoloLensならメジャーテープで現場を一つ一つ図ることなく、「BIMモデルと現場が重なっているか」を眺めながらスピーディーに行える。

その日の工事進ちょく予定のBIMモデルを使うと、予定より遅れている部分や進んでいる部分もわかり、工程管理にも使えるのだ。このとき、部材設置予定日などを属性情報から参照すると、工程表と照合しなくても遅れの日数などがその場でわかる。

建物が完成した後の維持管理でも、HoloLensは大いに活躍する。竣工BIMモデルが残っていれば、壁や天井裏の配管や電線などの位置や、躯体と仕上げ材の間隔、躯体内を通る鉄筋の位置をHoloLensによって“透視”できるので、建物を使いながら改修工事の設計や施工計画を行うことができる。

HoloLensを通して現場を眺めると、様々な発見がある

HoloLensを通して現場を眺めると、様々な発見がある

このようにHoloLensを着けて現場に立つと、様々な発見がある。これが工事現場の生産性を向上される大きな要因になるのだ。

【提供】
SB C&S株式会社
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