システムメトリックスは、同社のDWG互換CAD「IJCAD」用のアドオンソフトとして「IJMAP for SketchUp」を発売した。簡単な3Dソフトとして定評のある「Trimble SketchUp」(以下、SketchUp)上で、道路設計などで使われるクロソイド曲線などを3Dモデル化し、3次元でパース作成やプレゼンテーションなどを行える。2次元CADユーザーも、こんな“ゆるいCIM”で3Dデビューしてみてはいかがだろうか。
SketchUpでクロソイド曲線などを3D化
システムメトリックス(本社:名古屋市中区)が2022年2月に発売した「IJMAP for SketchUp」は、土木業界でよく使われているDWG互換CADソフト「IJCAD」の2D図面データを、3Dモデリングソフト「SketchUp」用に変換するアドオンソフトだ。
「土木分野の道路設計などでよく使われるクロソイド曲線や等高線などを正確な座標のまま3D化し、SketchUp上で3Dパース作成やプレゼンテーションができます」と、システムメトリックス東京営業所の箱崎尊柾氏は語る。
本格的なCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)と違い、3Dモデリングソフト「SketchUp」は、基本的な図形を変形させたり、押し出したりして、直感的かつカンタンに3Dモデルを作ることができる。そのため、建築分野ではBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトと共によく使われている。
一方、土木分野の道路や橋梁は、一見、単純な形をしているようだが、道路線形や縦断勾配などによって複雑な曲線構造を含むことが多い。道路の直線部分と曲線部分を緩やかにつなぐクロソイド曲線などは、その代表例だ。
「SketchUp単体だと、こうした複雑な曲線や座標を正確に入力するのは難しいです。そこでまず、IJCADで土木設計などで使う複雑な線形を作っておき、それを立体化してSketchUpに読み込ませるアドオンソフトを開発しました」(箱崎氏)。
バラバラの等高線をつなぎ、高さを与える
IJCAD for SketchUpは、2次元CAD上の操作だけで地形や道路など3D化できるので、3Dソフトに不慣れなユーザーも取っ付きやすい。まずは、等高線で描かれた地形図を3D化するが、2DCAD上で各等高線に標高のデータを付けていくだけの簡単な操作だ。
用意するもと図面は、オンラインでも購入できる数値地図など。ただ、数値地図をCADソフトに読み込むと、等高線はバラバラの細かい線分に分解されているので、このままでは使いづらい。
そこで線分全体を選んだ状態で、「連続線結合」というコマンドを使うと、等高線の各線がそれぞれ一つにつながった「ポリライン」に変換される。
続いて、各等高線に標高のデータを入力していく。と言っても、1本ずつ入力していくのではなく、1本に標高データと等高線のピッチを入力した後は、等高線をまとめて選ぶだけで各等高線に自動的に標高データが入力される仕組みだ。慣れるとスピーディーに作業できる。
ここまでの作業は、IJCAD上で確認できる。画面を回転させてみると、3D空間上に浮かんだ等高線が見られるのだ。
クロソイド曲線もカンタン入力
続いて、クロソイド線形を使用して道路の平面線形を入力する。これもIJCAD上で道路の曲がり角となる「IP点」をクリックや座標で入力していくという、一般的な2次元CAD作業と同じだ。
ここからが、「IJMAP for SketchUp」の最も重要なところだ。入力した道路線形に対応した平面設計用のダイアログボックスが現れ、各IP点の座標や緩和区間の長さ、クロソイド曲線の型・係数などを正確な数値として入力できる。
このほか、設計速度や排水勾配、道路幅員、側溝・歩道・路肩の幅なども左右別に入力できる。
続いて、道路の標高データを入力する。今度は縦断線形用のダイアログボックスを開いて、勾配が変わる点の高さなどを2次元画面上で入力していく。
SketchUpに読み込み3Dプレゼン
IJCADの2次元画面上で作成したデータをDWG形式で保存し、今度はSketchUpに読み込む。
DWGで読み込んだ時点では、等高線や道路は線データだが、これらに「面」を張って着色すると本格的な3Dモデルの完成だ。
3D化された地形や構造物を、様々な視点から見たり、3Dパースの作成やウオークスルーによるプレゼンテーションなどを、SketchUp上で簡単に行ったりできる。
2次元CADで始める“ゆるいCIM”
国土交通省のi-Construction施策がかなり進んだ今でも、中小の建設会社やコンサルタントでは、本格的なCIMソフトの導入に二の足を踏む企業は少なくない。また、CIMソフトを導入してみたものの十分使いこなせず、使い慣れた2次元CADソフトによる業務が中心な会社もある。
「IJMAP for SketchUpは、これから3次元を始めるユーザーや、CIM導入していても簡易な3次元を必要とするユーザーが、手軽に“ゆるいCIM”を実践していただけるものです。また、地方自治体などの発注者にも使っていただいています」と箱崎氏は言う。
例えば、東京都稲城市役所では、駅前ロータリーを整備するプロジェクトで、IJMAP for SketchUpを活用することで、起伏のある現場状況を地域住民に対して3Dでわかりやすく説明するのに活用した。
気になるお値段だが、1年間当たりのサブスクリプション料金でみると、IJMAP for SketchUpプラグインが3万円(税抜き。以下同じ)、IJCAD STD版の保守費用が1万8750円、SketchUpが5万3000円。合計すると10万1750円だ。
また、IJCAD STDを持っていないユーザーは、パッケージ版の費用として7万5000円が必要となる。
IJMAP for SketchUpプラグインはさらに新しい機能の開発が進んでいる。例えば、現況地形の3次元モデルベース化や、3次元モデルの現況地形を縦断設計に取り込む機能、横断設計と土量計算機能、現況地形や法面、道路線を3次元表示する機能が、近くバージョンアップで追加される予定だ。
これまで2次元CADしか使ってこなかった土木分野の設計者や技術者も、IJMAP for SketchUpで“ゆるいCIM”にデビューしてみてはいかがだろうか。
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