干渉のない配筋BIMモデルを爆速で自動作成! LightningBIMが狙う鉄筋DX(Arent)
2022年7月19日

Arentが開発した自動配筋ソフト「LightningBIM 自動配筋」は、これまで手作業で作成していた柱や梁の鉄筋のBIMモデルを、稲妻のような“爆速”で自動作成する画期的なソフトだ。配筋リストや仕様に従って、主筋やせん断補強筋を自動発生し、鉄筋同士の干渉回避や端部の定着処理も自動化する。その生産性は10倍にも上る。今後、配筋から鉄筋の自動加工、現場での検査までを見据えたこのソフトは、鉄筋DXを担っていきそうだ。

 配筋BIMモデル作成の生産性を10倍に

「これまでの手作業に比べて、LightningBIMは施工可能な配筋BIMモデルを作成する工数を従来に比べて90%も削減できます。つまり生産性は10倍にアップすることになります」と語るのは、このソフトの開発に携わったArent(本社:東京都中央区)の鈴木晃氏だ。

LightningBIMとは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフト「Revit」上で動く配筋モデル作成用のソフト。

鉄筋径や本数を定めた「断面リスト」に従って、柱や梁のBIMモデル各部に鉄筋のBIMモデルを自動的に配置するほか、プロジェクトの仕様に従って鉄筋端部には曲げフックを自動発生させる。

さらに鉄筋同士や各部材との干渉チェックをRevit内で行い、干渉部分を自動的に修正してくれるのだ。

Revit用アドオンソフト「LightningBIM」で自動作成された配筋BIMモデル

Revit用アドオンソフト「LightningBIM」で自動作成された配筋BIMモデル

干渉なく自動作成された配筋BIMモデル。鉄筋端部の曲げフックも自動作成する

干渉なく自動作成された配筋BIMモデル。鉄筋端部の曲げフックも自動作成する

BIMが普及した現在でも、配筋のBIMモデル化については、鉄筋を1本1本で配置したり、干渉しないようにずらしたりと、手作業によるところが多く生産性を阻害する要因になっていた。

そのため、鉄筋が密集する柱と梁の交差部分の配筋だけを取り出してBIMで干渉チェックしたり、配筋だけを従来の2DCADで作図したりすることも多かった。

その結果、配筋部分がBIMのワークフローから切り離されてしまい、せっかくBIMを使っていても、配筋部分だけはその生産性向上効果を生かせていなかったのだ。

「LightningBIMは、これまで手作業に頼っていた配筋BIMモデル作成を自動化することで、建物全体の配筋BIMモデルを作成し、数量集計や加工図作成を自動化できるようになります。多くの工数がかかっていた、納まり検討も従来よりも簡単に行うことができ、まさに“鉄筋DX”を実現するソフトなのです」と鈴木氏は語る。

 断面リストに従って配筋BIMモデルを自動発生

LightningBIMは、主に3つのステップで施工可能な配筋BIMモデルを自動作成する。

まず、柱や梁のBIMモデルとなる「ファミリ」の属性情報に、断面リストのデータを取り込む。そして各ファミリ内に所定の径や本数、コンクリートのかぶり厚などに従って、鉄筋ファミリを自動配置する。

鉄筋リストの情報を柱や梁のファミリの属性情報に取り込だところ

鉄筋リストの情報を柱や梁のファミリの属性情報に取り込だところ

柱や梁の各ファミリに自動生成された配筋のBIMモデル

柱や梁の各ファミリに自動生成された配筋のBIMモデル

次に、柱と梁が交わる「パネルゾーン」で、上下・水平方向に連続する部材の鉄筋を自動接続する。鉄筋端部は、プロジェクトの仕様で決められた曲率半径や曲げ長さに従って、フックを自動発生させる。

しっかりと建築配筋ルールに基づき、例えば、L2定着やカットオフ長さ15dも自動で反映される。秋頃には定着金物にも対応予定だ。

柱と梁が交差する「パネルゾーン」で鉄筋を自動接続。柱や梁の端部には定着用のフックを自動生成する

柱と梁が交差する「パネルゾーン」で鉄筋を自動接続。柱や梁の端部には定着用のフックを自動生成する

最後にRevit上で干渉チェックを行い、干渉している部分の鉄筋を移動させて自動修正する、という流れだ。鉄筋を手作業で移動させたいときには、「スマートコントローラー」という機能が用意されており、3Dモデル上で簡単に修正できる。

最小かぶりに関わる鉄筋を動かそうとすると忠告が出たりと、ユーザー目線をしっかりと意識している。

干渉している鉄筋は位置をずらして干渉を自動的に解決する

干渉している鉄筋は位置をずらして干渉を自動的に解決する

配筋を手動で簡単に修正できる「スマートコントローラー」の画面

配筋を手動で簡単に修正できる「スマートコントローラー」の画面

当初は主筋だけが自動配筋の対象だったが、2022年7月のバージョンアップで「フープ筋」「スターラップ」などと呼ばれるせん断補強筋も自動配筋できるように機能が増強された。

これで柱や梁は、大半の配筋BIMモデルを自動的に作成し、数量集計などもBIMで自動化できるようになった。

さらに、架構詳細図や配筋納まり図もRevit内で簡単に書けるようになった。

 鉄筋工事をBIMのワークフローに組み込む

日本の建設業界でBIMはかなり普及したとはいえ、鉄筋工事についてはBIM化が遅れていた。

従来の2次元CADによる配筋の検討では、鉄筋が複雑に入り組む仕口部などでは干渉確認が難しかった。そして平面図、立面図、断面図での整合性確保や修正時の直しもれなどの問題もあった。

Revitでも3次元による配筋の検討が行われてきたが、1本1本を手作業で入力するため膨大な作業時間が必要だった。梁や柱のファミリと、鉄筋のファミリが独立しているため、相互の位置関係を調整するのが難しく、部材端部の鉄筋の接続や納まり調整、梁や柱の途中で鉄筋本数が変化する場合の入力なども大変だ。

そして干渉チェックは、NavisworksやSolibri Model Checkerなど他のソフトで行い、その結果をRevitに戻って修正するという、ひと手間、ふた手間が必要だった。

こうした事情から、 鉄筋関係の業務 だけはBIMのワークフローから取り残されて、膨大な鉄筋の数量集計や発注、原価管理などの煩雑な業務を人力で行わざるを得なかった面もある。

それがLightningBIMの登場によって、配筋図の作成から施工管理まで、鉄筋の1本1本をBIMモデルとして扱い、BIMのパワーを生かせるようになったのだ。まさに鉄筋DX化を実現するソフトと言っても過言ではない。

 Revitだけで配筋をBIMモデル化した場合は、鉄筋工事の配筋図作成や施工が、BIMのワークフローから切り離され、手作業で行う必要がある

現状のRevitの設計ワークフローでは、BIMモデルがあっても鉄筋関係の業務に関しては、BIMのワークフローから切り離され、手作業で行う必要がある

LightningBIMを使った場合は、解析用モデルから簡単に配筋モデルが作成でき、そのまま施工、さらには鉄筋工事まで、BIMのワークフローでカバーされ、生産性向上が実現できる

LightningBIMを使った場合は、解析用モデルから簡単に配筋モデル作成、構造図作成ができ、そのまま施工、さらには鉄筋工事まで、一気通貫でモデル活用が可能だ。配筋モデルをフェーズによって詳細度をあげていき、最終的にはそのモデルをベースに加工・施工につなげていくことを考えている

 “鉄筋大好き人間”がソフト開発に参画

鉄筋BIMモデルの作成を自動化したいという建設業界の長年の夢が実現したのは、ソフト開発メンバーに、鉄筋工事に詳しい技術者が加わっていたことが大きい。

Arentの渋谷大樹氏がその人だ。渋谷氏は新卒で入社した建設会社で、職人が行う配筋作業のパズルのような魅力に取りつかれた。黙々と作業を行う職人たちの頭の中には、複雑な鉄筋を組む順序や納め方などが描かれていることを知ったからだ。

そして「ハッカー」という鉄筋結束用の工具を持ち、現場で自ら配筋作業に参加することもあった。

建設会社時代の配筋作業を熱っぽく語る”鉄筋大好き人間”の渋谷大樹氏。LightningBIMの開発に参画した

建設会社時代の配筋作業を熱っぽく語る”鉄筋大好き人間”の渋谷大樹氏。LightningBIMの開発に参画した

渋谷氏はその後、建設会社などのBIM業務を支援する企業に転職し、そこでBIMの自動化ソフトなどの開発に携わることになった。

「 建設業界にはBIMという便利なツールがありながら、鉄筋業務でBIM活用できていない点をどうにかしたいと思っていました。私も現場では夜な夜な、目がチカチカするほどの納まり図面を2Dで書いていました。BIMデータがあれば、同じような現場で先輩の誰かが納めたデータを活用することで、もっと早く帰れるのになとずっと思っていました。また、細かいルールが多いので、そこも自動化させるべきだとずっと考えてました」と渋谷氏は語る。

LightningBIMの開発に、”鉄筋大好き人間”でBIMにも詳しい渋谷氏が参画したことで、建設業界のお困りごとを解決する機能の数々が盛り込まれた。

「Revitユーザ会が開発した柱や梁ファミリには、鉄筋に関する属性情報がいろいろと定められていますが、ほとんど活用されていませんでした。そこでLightningBIMは、これらの属性情報をフル活用して、自動化機能を実現しました」(渋谷氏)。

その一方で、なんでもかんでも自動化にするわけではなく、あと編集のやりやすさにも配慮するつもりだ。

「鉄筋屋さんによって、鉄筋加工用の設備や使用する鉄筋の定尺長がそれぞれ違います。それぞれの職人さんには、今まで積み上げてきた経験や知恵があり、それぞれが無理、ムダ、ムラなく鉄筋の加工や配筋作業を行える方法を知っています。

継ぎ手位置に関しても、自動挿入できるよう開発中ですが、あとで位置を変えることも考えて、編集機能も強化しております。業者さんの色が出る部分は、ある程度は鉄筋屋さんに任せることにしています」と、鉄筋工事の実際を知る渋谷氏は説明する。

 鉄筋の自動加工も視野に入れた開発計画

柱や梁の主筋やせん断補強筋を自動的にBIMモデル化する「LightningBIM」は、それだけでも画期的な機能と言えるが、これからも長期的な開発ロードマップが作られている。

2023年度には自動配筋の対象をスラブや床にも広げ、機械的接ぎ手のモデリング機能を追加する。検査機能も充実させ、あきや定着のチェックも行えるようになる予定だ。

さらに2024年度には、コンピューター制御の鉄筋自動加工機で使われている「BVBS形式」のデータ出力機能も実装する予定だ。

鉄筋の自動加工機との連携までを視野に入れたLightningBIMの開発ロードマップ

鉄筋の自動加工機との連携までを視野に入れたLightningBIMの開発ロードマップ

これらの機能により、LightningBIMは建物全体の配筋BIMモデルの作成から、自動加工機との連携、そして現場での配筋チェックの効率化までを担うようになる。鉄筋工事のワークフローを大幅に自動化し、生産性向上を実現する「鉄筋DX」を切り開いていくソフトとして進化していきそうだ。

LightningBIMの気になるお値段だが、年間使用料が84万円(税別)とリーズナブルだ。この料金には電話サポートサービスも含まれている。

2022年7月のアップデートに伴い、8月31日まで無料トライアルも現在受付中だ。

受付はLightningBIM 自動配筋公式HP(https://lightningbim.com/)より受け付けている。

BIMによる生産性向上効果を、建築・土木に欠かせない鉄筋工事まで広げたいと考えている建設会社や建築設計事務所は、導入を検討してみてはいかがだろうか。

LightningBIMの開発を担うArentの鈴木晃氏(左)と渋谷大樹氏(右)

LightningBIMの開発を担うArentの鈴木晃氏(左)と渋谷大樹氏(右)

【問い合わせ】

株式会社 Arent
〒104-0032 東京都中央区八丁堀2-10-7 日本瓦斯八丁堀ビル8F
TEL 03-6228-3393
LightningBIM 自動配筋公式HP:https://lightningbim.com/
Arent公式HP:https://arent.co.jp/

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