配筋BIMモデルの作成を自動化し、10倍の生産性を実現するArentの「Lightning BIM 自動配筋」に、鉄筋のアキや定着長不足をチェックする機能が追加された。エラー箇所はオートデスクのBIMソフト「Revit」上で自動修正を行い、直感的に手動修正が行える「スマートコントローラー」も搭載された。名実ともに”造れるBIM”が爆速で作れるようになり、鉄筋DXはますます加速しそうだ。
Revit上で干渉からアキ、定着長までチェック
「Lightning BIMのバージョンアップによって、Revit上で鉄筋の干渉から鉄筋同士のアキ、定着長までを自動的にチェックし、その場で修正できるようになりました。現場で施工可能な配筋BIMモデルが圧倒的なスピードで作れるようになりました」と興奮気味で語るのは、”鉄筋大好き人間”こと、Arent(本社:東京都中央区)の渋谷大樹氏だ。
Lightning BIMとは、断面リストに従って 従来の10倍という“爆速”で配筋BIMモデルを自動作成できる話題のソフトだ。
しかし、実際のプロジェクトではスリーブなどを通すため、自動配筋だけでなく、手動で鉄筋の位置や曲げの位置などを変更せざるを得ない場合も出てくる。そんなとき、配筋BIMモデルを仕上げる最終チェックとして、今回、追加された機能が大いに役立つのだ。
ちなみに鉄筋の「アキ」とは、鉄筋表面間の距離のこと。生コンクリート打設時に、粗骨材(砂利)が鉄筋の間をスムーズに通過できるようにするため、建築では粗骨材の最大粒径の1.25倍(土木は4/3倍)と定められている。
折り曲げや余長も考慮した定着長チェック
一方、「定着長」とは鉄筋の端部がコンクリートに埋め込まれている長さのこと。鉄筋の太さごとに決められている。鉄筋の端部が折り曲げられ、フックになっている場合には、折り曲げ部分から端部までの「余長」と呼ばれる部分の長さも規定されている。
「定着長の計算には、異形棒鋼の呼び径を使う一方、アキは呼び径でなく最大径を使うといった具合に、基準となる寸法が代わり、余長は鉄筋の曲げ角度や場所によっても変わってきます。Lightning BIMのバージョンアップにより、こうした細かいチェックも“爆速”で行えるようになりました」(渋谷氏)。
Lightning BIMには、アキや定着長、余長に関する基準もデータベースとして搭載されている。BIMモデルから鉄筋径を自動的に判別し、基準に合ったチェックを行ってくれるので入力ミスなどのヒューマンエラーも起こりにくい。
エラー部分はRevit上で即、修正
アキや定着長のチェックをRevit上で行った後は、そのまま修正作業に入れる。BIMソフトでモデリング→専用ソフトで干渉チェック→BIMソフトで修正、といったファイルの書き出し、読み込みを繰り返す必要がないので、とても作業は楽だ。
アキの修正には今回、「スマートコントローラー」という強力なツールが搭載された。修正する鉄筋の位置や表示角度によって、鉄筋を動かせる範囲が分かりやすく表示され、1mm単位で修正できるのだ。
「もちろん、現場での施工では1mm単位での作業は難しいので、5mm単位や10mm単位といった『働き寸法』での修正も可能です」とArent の高橋律視氏は説明する。
定着長がエラーになった場合は、自動修正機能も新たに設けられた。
「細かい鉄筋1本1本について、定着長や余長の不足を計算し、BIMモデルを修正するのは膨大な手間ひまがかかりますが、この機能によって修正作業にかかる時間は大幅に短縮されます」と 鎌田寛昭 氏は言う。
今回のバージョンアップではこのほか、機械式定着工法も選べるようになり、鉄筋が密集する梁と柱の交差部の課題解決が楽になった。
50社近くからの要望をフィードバック
これまでの手作業では、Revitで配筋モデルを作成できるようになるまでには、相当な時間の経験と習熟が必要だった。
それがLightning BIMの登場によって、若手社員でも短時間に配筋BIMモデルを作成できるようになった。アキや定着長の不足を理解したり、解決したりするスキルも、スピード教育が可能になった。
今回のバージョンアップに当たって、Arentは、ゼネコンや鉄筋工事の専門工事会社など50社近くの施工管理技士や構造技術者などにβ版の評価を依頼し、改善要望などをフィードバックしながら開発を行った。
その結果が、Revitの初心者でも使いやすいUI(ユーザーインターフェース)を備えたスマートコントローラーなどの開発につながったのだ。
その開発過程は、「Revitの限界への挑戦」と言っても過言ではなかった。鉄筋のチェックや修正には、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)という機能を使って、Revit内部のデータをLightning BIMとやりとりする必要があるが、Lightning BIMにおいては、われわれの想像の範囲を超えてAPIが組み合わされており、余すことなく利活用している。論理的思考と数学力にたけたエンジニア集団だからこそ、なせる技である。
「海外のRevit開発者が集まるSNSを検索したり、質問したりして情報を集めました。しかしわからない情報も多かったです。そんなときは、自分たちでデータを用意して実験を行い、機能を確かめるということまで行いました」と高橋氏は説明する。
スマートコントローラーなどのUI画面なども、Arent内部で開発した。
「アキや干渉の問題が出ないか確認しながら鉄筋の位置を調整できるようにするため独自のUIを実装する必要がありました」と鎌田氏は振り返る。
Lightning BIMの開発ではこれまで、配筋施工の専門工事会社が自由な鉄筋の定尺長を選べるようにとの配慮から、重ね継ぎ手の位置についてはあえて自動化を行ってこなかった。
しかし、ユーザーからの要望も来ているため、今後は重ね継ぎ手部分の自動配筋やチェック機能の開発や、鉄筋の圧接継ぎ手にも対応していく。Lightning BIMがもたらした”鉄筋DX”は、これからもますます進化していきそうだ。2022年11月のアップデートに伴い、2023年1月31日まで無料トライアルも現在受付中だ。
【問い合わせ】
株式会社 Arent |